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この世界の救世主  作者: くろにゃん
難民救出作戦編
4/21

第2話:初出撃の日

「全員そろったな。では、ブリーフィングを開始する」

大和達1年生がミハエル学院に入学してしばらく、初の作戦参加となり教室にて真理亜によるブリーフィング、つまり作戦説明を受けていた。

「今回の作戦は中国南部、広州市に取り残された難民の救助だ。呉から輸送艦にて香港周辺にある簡易基地へ移動、そこからは各戦車で現地まで移動してもらう。道中敵戦車と会敵する可能性が高いので十分注意すること。偵察機の報告によると確認された敵戦車は三号J型、四号D型、二号L型ルクスだ。比較的撃破しやすい車両だが、油断はしないように。以上」

「「「了解!」」」


南シナ海海上、3隻の輸送艦は荒波の中を確実に進んでいた。多くの戦車兵が眠る、死の大陸へと。

「随伴艦はいないんやな」

「三号と四号、ルクスの射程範囲外を航行するから、必要ないんだろ」

「それに護衛をつけたら隠密行動の意味がないじゃない」

どれだけ敵が強大でも、戦車という陸上兵器であることに変わりはない。アジア、ヨーロッパ、アフリカを失った今でも何とかやっていけるのも、射程範囲外である海上での輸送が生きているからだ。

「っと、そろそろじゃないか?」

「そうやな。そろそろ準備を…」

その時だった。

凄まじい爆音とけたたましいサイレン。

「な、何や⁉」

「外だ!」

大和達ヘルキャット乗員を含め、その場にいた者たちは我先にと急いで甲板へと駆け上がった。いきなり外に出たからか、視界がぼやける。やっと慣れてきたかと思うと、目に飛び込んできたものは最悪の光景だった。

「ばかな!ここは射程範囲外の洋上だぞ!」

燃え上がる1隻の輸送艦。その甲板には、逃げ惑う兵士や学園生の姿が。

「あそこ!」

恵理が指差した場所は中国大陸。草むらの中から鉄の砲身が冷たくギラリと光るのが見えた。

「もう一発来るっ!」

直後、その砲身の先が発光したかと思うと、大和達が乗っている輸送艦目掛けて砲弾が直撃―――

―――否!突如輸送艦を横波が襲い、何とか直撃を免れる。

〝全艦、転進!〟

スピーカーから艦長の声が聞こえた。

炎上し、沈みかけている輸送艦を残して、2隻の輸送艦は撤退を余儀なくされた。


「海岸線にティーガーがいるやと⁉」

台湾の軍港施設内で休憩していた炎羅は、大和の発言に驚きを隠せなかった。

「おそらくな。だが、あの砲撃音は明らかに8.8cm砲だ」

「…っていうことは、まさかあの部隊が…」

「沙織の言う通りいる可能性は高い。が、問題はどうやってここ台湾から香港に行くかってことだ」

海岸線からの砲撃を受け撤退した輸送艦2隻は、一時台湾の軍港へと寄港していた。

他ルートでの香港上陸作戦の会議を上官たちが行っており、大和達学園生や下級兵士達はその間待機となっている。その人たちの中には恐怖に怯える者や、悲しみに涙する者、自暴自棄の者など、いずれも戦意に満ちている者はいない。

「作戦を伝える。ミハエル学園第1学年生は私についてこい」

ガチャリとドアが鳴り、会議室から出てきた真理亜はそう言った。そして足早に廊下を歩いていく。大和が腰を上げようとした時、真理亜が数歩歩いたところでこちらを振り向いていた。

「なぜついてこない?反抗期か?」

「…きょ、教官。……ど…どうしても今…たった今、この後すぐに出撃しなければならないのでしょうか?」

ある生徒が言った。か細い声で紡がれたその言葉は確かに、真理亜の耳へと届いた。

「…何が言いたい?よもや出撃したくないとでも思っているわけじゃないだろうな」

「…っ!いっ、いえ、そのような理由ではありません!……ただ、戦力の3分の1を失った状態で出撃するのは得策でないとおもったので…」

真理亜は小さくため息をついて言った。

「思い付きの言い訳か頭に抱いていた疑問かは言及しない。…が、お前の勘違いは今すぐ正さなければならない」

そして真理亜はその場にいる全生徒に向けて言った。

「皆も同じだ。もし今、我々が撤退したら何が残る?我々が遅れるほど、難民が死ぬ確率が上がる。撤退し、再び戻ってきたとして、果たして何人残っているだろうな。我々の作戦を忘れないことだ。今作戦において我々の死は重要じゃない」

何事もなかったかのように真理亜は再び廊下を歩いていく。

「行こう。これ以上はまずい」

大和が周りにだけ聞こえるよう小さくつぶやき、五人は真理亜についていく。二人につられて一人、また一人と廊下を歩く。

一行は廊下を通り過ぎ、港へと進んでいく。ついてくる生徒たちから不安げな声がちらほら。しかし真理亜はまったく気にしない。

やがて、一つの桟橋の前で立ち止まる。見たところ、船が停泊している様子はない。

「そろそろか」

真理亜が時計を見ながらそうつぶやくと、海中から巨大な影、いや、一隻の潜水艦が浮上してきた。

絶句する生徒たちを前に、真理亜は言い放った。

「お前たちはこれに乗ってもらう!」

ほんとは4月中に投稿したかったのですが、間に合いませんでした…。

ですが、今月(5月)中に次回の投稿はできると思います!(多分)


さっそく作戦が始まりました。が、まだ戦車戦は先になりそうです。すみません。

話は変わって真理亜に意見を言った生徒ですが、実は大和が部隊長の第六戦車部隊所属、M4シャーマンの装填手です。以上、割とどうでもいい裏話でしたw


最後に、このシリーズを通して言えることですが、戦車等兵器(WW2~2015年にかけてのもの)が登場します。が、こちらの世界の史実と違う点があるかもしれません。その場合は、この物語の世界はこういうことなんだと思ってください。お願いします!

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