第14話:救世主
海岸沿いを進む2両の戦車。1両はアメリカ製で、もう1両はドイツ製のものだ。
「しかし、何だってあんな話をあの時にしたんやろうな、お前のお姉さんはよぉ」
「さあな。あいつの考えてることなんかわかるもんか」
「文句言わないの。生きてるだけましよ」
『さ、着いたわよ』
無線越しに社の声。そして2両の戦車は停車する。
「ここは?」
砲塔から顔を出した大和に答える社。
「あなたたちの目的地、カレーよ。」
大和の目線の先には、破壊されつくした街並みと、もぬけの殻と化した港だった。
「おい、輸送船団はいるんじゃないのかよ!」
「正確にはここにいた。もう出発したわ」
無線機をとる社。
「こちら社。状況は?」
『上陸は成功。ただ、半分が海軍の攻撃で轟沈。彼女を使わないなら水際で止められると思うぞ』
「そう。彼女は遠慮なく使って頂戴。ただし、水際で止められたふりをすること、いい?」
『またいつものね。了解』
そう言い残して通信が切れる。
「今のは?」
「敵情をぺらぺらと話すと思う?」
「さっきまでこの戦争のことについて散々話してたその口が言えたことかよ」
「それとこれとは別よ。私も完全にこちら側に移ったわけではないし、この戦争はただの過程に過ぎないし、あなたたちには知っていていないと困ることだし」
「ずいぶんと都合がいいな」
「対等に物事を言っているようだけど、自分たちの立場はわかってるの?殺すわよ」
冷酷な視線が大和に向けられる。その言葉は本気のようだ。
「殺したら困るんじゃなかったのか?」
「確かに困るわ。だけど立て直しは効く。その程度よ」
「…発言には気をつけよう」
「それはどうも」
砲塔内に戻る大和。
「私はあの話はどうも引っかかるんだけど、本当にそうなの?」
小声で尋ねる沙織。
「俺に聞かれても、どうしようもないが、おそらくあいつは真実しか言ってない。部隊撤退の話も、だ。」
『上空A-10が2機。ヴィルベルヴィント撃て!』
無線機からの声に反応し、空を見上げる大和と沙織。上空には既に撃ち落され墜落するA-10の姿が。
「まだもう1機残ってるぞ!」
大和がそう言うが早いか、残りのA-10も撃ち落された。
「今の言葉はこちら側に入ったということでいいのよね?」
「いや、ただの防衛本能だよ。味方に爆弾を落とされちゃかなわん」
「そのためには味方をも殺す、と」
「俺たちに死なれたら困るんだろ?」
「ええ、そうね」
社は笑いながら言った。
「あら、遅かったじゃない」
カレーで敵側に監視されながらの休息をしていた大和達は、社のその声に反応し、彼女らの方を見た。
「いやー、思った以上に時間かかっちゃってさぁ、ごめんね」
「あ、あんたは!」
「あー、久しぶりー。『子猫』ちゃんたち」
「あなたは日本軍の戦車兵なのになんで!」
「彼女は橋渡し役。つまりはスパイよ」
「ま、今回だけだけどねぇ」
「今回の作戦の最も不確定要素の強い場所が取れてよかったわ」
「その言い方はひどいなぁ。私がついてたのにさぁ」
拡声器越しの声。その声に主はクロムウェルからだ。
「計画的立ち回りはトップだと思うよ」
「あなたと比較できるものがそもそも少ないけどね」
社が皮肉って言う。
「まあねー」
「ちょっと待ってくれ、情報が多く入りすぎてついていけない」
「ついてこなくていいわよ。こちらの話だし」
「そんなことより準備はばっちりだよ。いつでもオーケー」
その声を聴いた社は簡易机を持ってきて何やら紙を広げ始めた。
「さ、ヘルキャットの乗員諸君。説明しようじゃない、私たち救世主陣営についてを」
すみません、気づいたらこんなに経ってました。
なんとか投稿できたものの、読者を置いていってるような内容だと思います(すみません…)
次回から解説回みたいなのです。なるべく早めに投稿できるよう頑張ります。




