リイネス・クレシュ
夜。
俺は最初に着ていた服に着替え、唯一の持ち物だったスマホを手にリイネスの家を出た。
リイネスには出る時間は言ってない。
書き置きも残した。
この村で最後に向かう先は───────
カレルさんの墓だ。
場所は村長に教えてもらった。
「………………………」
目を閉じ、墓に向かって手を合わせて数分。
俺は村の出口へと向かった。
出口に差し掛かると1つの人影があった。
だいたい予想はついていたが………
「なんでいる、リイネス」
声をかけると顔が見えるくらいまで近づいてきてくれた。
「なんで……レンが出ていかなくちゃいけないのよ……」
「まだ言ってるのか、俺が怪しいからだろ。出身地不明だし」
「それでも!」
リイネスの大声が夜の闇に消えていく。
「………………私もこの村を出るわ」
「何言ってんだ、俺が出ていけば万事解決じゃないか」
「嫌なの!そういうのは……嫌なのよ……」
「リイネス……」
「だから私も連れていって!お願いよ!」
俺はそれに応えてはいけないと思った。
俺と一緒だとリイネスにも災禍が降りかかるから。
「レン殿……孫を連れていってもらえませんでしょうか」
「村長……!?」
「貴方様なら孫を守ってくれると信じております故」
「おじいちゃん……村長の許しも出たわ!これで一緒に行けるわよ!」
まったく、リイネスもリイネスだが、村長も村長だ。
「信頼を裏切らぬよう、村長殿の孫リイネス殿を必ず守ってみせます」
「よろしく頼みます、レン殿」
俺の真似ただけの挨拶もしっかりと受け止めてくれた。
「では、村長。お元気で」
「おじいちゃん、ありがとう!」
「2人とも、ご健康には気をつけてくだされ!」
そう言い合って俺はリイネスを連れ、リスネに別れを告げた。