チート使いと策略
剣が自分に振り下ろされるのを俺は他人事のように思っていた。
これで俺は死ぬんだなとかそんなレベル。
なぜか振り下ろされる剣がゆっくりに見える。
俺は目を閉じた。
─────目を閉じたはずなのに何か見える。
ああ、これが走馬灯なのかな。
俺のいた世界のもあった。思い出させやがって。
目の前に急に文字が出てきた。
「能力を……使え……?」
訳が分からなかったが自分の状況を思い出すとなんだかんだ言ってる暇などない。
武器だ。敵を倒す武器が欲しい。
近くにあった武器は弾かれた。ならばどうする。
なら─────────
「造ればいいんだ」
左手に急速に熱が集まり、形を成していく。
迫って来ていた剣を左手を振って弾く。
左手には黒い小剣が握られていた。
「こ、こいつ……どこから武器を!?」
俺は怯んだ敵に向かって何も考えずに突っ込んでいた。
☆
俺が覚えていたのはそこまで。
気がつくと周りは死体でいっぱいだった。
手には黒い小剣といつの間に出したのかもう一つ同じ小剣が握られていた。
「レン!」
「っ!?」
騒ぎが収まったのに気付いたのかリイネスや村長たちがこちらに向かってきていた。
「レン、大丈夫!?」
「…………ああ……」
「レン殿…………カレル殿は……」
「…………すまない」
目をそらして謝ることしかできなかった。
「これは随分と酷い有様だな」
その声に遠のきかけていた意識が引き戻された。
「ノーム卿……」
「これはご機嫌いかがかな、リイネス殿。と言ってもこの状況ではな」
「あんた、何しに来た……」
「下民が私に話しかけるな。なに、ここで山賊が暴れたということでな、見にきたのだ」
きっとあのボディーガード2人だろう。
しかし来る必要まであったのか?
「同時に最近この辺りは山賊が暴れ回っていたと聞いた。安全のために兵を置きたい。村長殿、同意してくれるかな?」
「はぁ、それは願ってもないことですので……」
「しかし、私の兵も多くはないのでな、不穏分子は事前に排除したいのだ。なあ、レンよ」
「!!」
やられた……そういうことか。
ノーム卿のニヤついた顔でわかった。
どんな手を使ってでも俺を排除したかったわけか。
「この村の安全のため出ていってもらえるかな、レンよ」
「なんでレンが出ていかないといけないの!?」
「やめろ、リイネス……」
俺はノーム卿の前に出た。
「この村のためだからな。了承はしよう。ただ今日1日の猶予をくれ。荷物纏めたりとかあるからな」
「ふん、私は寛大だからな。1日の猶予くらいならくれてやる。ではまたレン殿が村を去った後にでも」
そう言ってノーム卿は帰っていった。
「レン殿……」
「すいません村長、俺が来たせいで」
「こちらこそすまない。恩人を追い出さなければいけないとは…」
「レン!出ていかないで!」
「ごめんな、リイネス。ありがとう。……明朝までにここを出ます」
俺はその場を後にし、荷物を纏めるため部屋に戻った。