嘘と1人での出発と
リーシャと約束を交わした翌日の朝。
いつも通り、朝食をとる。
ただ、いつもと違うのは─────
「えへへ、お兄ちゃん、あーん」
「いや、いいから。自分で食うから」
「もう、お兄ちゃんったら照れちゃって!」
「いや、照れてないから」
隣に満面の笑みで「あーん」してくる妹が座っていること。
当然相手は妹なので断る。
そして、俺のもう片方の隣はフラン。
今日は普通にイスに座ってる。
「フラン、美味いか?」
「ん……おいしい……」
「だってよ、ミク」
「い、いやー、フランちゃんに言われるとどうしても照れるね」
兄妹揃ってフランの可愛さに完全にやられてしまった。
「「「むうー……」」」
そして俺たちと少し離れて座るリイネス、ルカ、リーシャ。
3人ともこの状況が気に入らないのか、頬がふくらんでる。
とても可愛い。
「いつも3人が俺の周りにいるけど、こうやって少し遠くから見ても3人は可愛いな」
「「「!!!」」」
笑顔でほめると、3人の顔が一気に赤くなる。
そしてもじもじしだした。
「……ずるいわ。不意打ちなんて……」
「レン様に可愛いって言ってもらえるとすごくドキドキします……」
「レンさんたら……もう……」
俺的にはこの瞬間が一番可愛く見える。
この3人全員が俺のなんてどんだけラッキーだよ。
そんなことを思っていると、
『おーい、誰かいないかー?』
という声が玄関から聞こえてきた。
「ん?誰だろ、お兄ちゃん、私が出ようか?」
「いや、俺が出るよ」
「わかったー、それじゃ任せるね」
ミクと話してから、玄関に向かう。
扉を開けると、そこには俺の1.5倍くらいの巨体。
「─────って、クロウさんじゃないですか」
「おお、レンか。久しぶりだな」
「どうしたんですか?」
「王からお前に緊急の依頼だ」
その言葉に俺は扉を閉めた。
ルカはもちろん、他のやつにも聞かせちゃいけない気がした。
「で、内容は?」
「うむ、最近国の西側で異変があったらしくてな。調査に向かってもらいたいのだそうだ」
「西側か……行ったことないな」
「向こうはほとんど魔物の巣窟と化している。俺たち防衛軍が境界の監視をしているが……」
「…………わかりました。今から王都に行きます。詳しくはそこで」
「すまないな」
「いえ……あいつらにあまり心配かけたくないので、もしなにか聞かれても適当に誤魔化してくださいよ?」
「任せておけ、俺はギルドで待ってるぞ」
クロウさんと別れ、家に入る。
入るとルカが玄関まで来ていた。
「今の、クロウですか?」
「ああ、手伝いをしてほしいんだってさ。俺はしばらく王都にいるから帰って来れなさそうだ。ミクに全部任せるから、困ったときはミクに言ってくれ。あとリイネスたちにもこのこと伝えてくれ」
「あの、それでしたら私たちも一緒に……」
「ダメだ」
西側は魔物の巣窟だとクロウさんは言った。
危険な場所には連れていけない。
「俺はミクにいろいろ頼まないといけないから、俺の部屋に呼んでくれ」
「は、はい」
ルカに任せ、俺は自分の部屋へ向かった。
八咫烏を装備して、アイテムと能力も確認する。
しばらくすると、ミクが俺の部屋に来た。
「どうしたの、お兄ちゃん!?まさか朝から私と───」
なんかよくわからんことを言っていたが、俺の姿を見て真面目な顔になった。
「どっか行くの?」
「ああ、俺は国の西側に行く。お前にはこの家のすべてを任せることになるから呼んだ」
「……しばらく帰ってこれないんだね。リイネスさんたちには?」
「王都に行くって言って出るけどホントのことは言わない。危険だからあいつらは置いていく。お前も黙っていてくれ」
「……わかった。気をつけてね」
「おう、あいつらのこと、頼んだぞ」
そう言って、ミクに小さな玉を4つ渡す。
「これは?」
「能力で作ったもの。俺が生きていれば青、死にかけなら赤だ。ミクに1つ、あとはリイネス、ルカ、リーシャに1つずつだ」
「わかった」
「そんじゃ、今度こそ行くわ」
「うん、お兄ちゃんが帰るまでは私に任せてね」
ミクと俺が玄関に戻ると、リイネスとルカとリーシャがいた。
ルカには説明したから、いいだろう。
「王都に行くんですってね」
「ああ、クロウさんの手伝いでな」
「レンさん、気をつけてくださいね」
「おう、お前らも体に気をつけろよ」
最後に3人とキスをして、玄関を出る。
そして、振り返らずにギルドへ向かった。
(すまんな、3人とも)