トラウマと約束
急いで家に帰ると、電気がほとんど消えていた。
リビングからは光が漏れている。
「ただいまー」
できる限り声と音を抑えて、家に入る。
するとこちらへ走ってくる音。
フランとリーシャだった。
「フラン、リーシャ、ただい────」
「レンさんっ」
「おにいさん……!」
フランとリーシャが抱きついてきた。
「おっと、どうした?」
「ま、またなんです……」
よく見ると2人の体が震えている。
そして「また」という言葉。つまり、
「奴隷の頃の記憶か」
「…………はい」
「おにいさん……」
トラウマはまだ消えないか……
しかも広い屋敷にみんなが寝たことで2人になったような感覚。
……少し遅くなりすぎたかもしれない。
2人を抱きしめる。
「落ち着け、もう大丈夫」
「すみません……すみません……」
「ん………………」
フランは黙って、リーシャはずっと謝りながら泣いていた。
2人は10分かけて落ち着いた。
今は2人をリビングに連れてきて、俺はシャワーを浴びてから、ソファに3人で座っている。
フランはいつも通り俺の膝の上に座り、リーシャは俺の隣に座って、俺の肩に頭をのせている。
「お見苦しいところをお見せしました……」
「おにいさん、ごめんなさい……」
「気にするな、もう少し休め。リーシャは特に、だ」
「はい…………」
リーシャは俺に寄りかかったまま、目を閉じた。
「レンさんの匂い……安心します……」
「それは石鹸の匂いだろ……」
「まあ、それもありますけど……あなたの近くにいられるだけで安心できるんです。トラウマなんか忘れてしまうくらいに」
「そっか……じゃあ、ずっと傍にいなきゃな」
「そうですよ……お願いしますね?」
「任せとけ」
そう言ってリーシャの頭を撫でる。
すると反対の手を引っ張られた。
「フラン?」
「わたしも、なでて……?」
「おう」
注文通り、フランの頭も撫でる。
フランは気持ち良さそうにしていたが、しばらくすると眠ってしまった。
「フラン、寝ちゃいましたね」
「そうだな、どうする?」
「じゃあ、ベッドに行きましょう?フランはレンさん、お願いしますね」
「ああ」
フランを抱き上げてベッドへ移動。静かにフランをベッドに降ろした。
俺とリーシャはフランを挟むようにしてベッドに寝転がる。
「そういえば、おかえりのキスしてませんでしたね」
「したければしてもいいぞ?リーシャからだけど」
「え、ええっ…………しかたないですね……」
リーシャは顔を赤くしながらも自分からキスしてきた。
唇を離しても、追いかけるようにしてキスしてくる。
5分か10分か、ずっとキスしていた。
「もう、おかえりのキスっていうか……」
「私がしたいからしてましたね……」
「甘えたがりのリーシャも可愛い」
「もう、おだてないでください」
顔を真っ赤にして目を逸らすリーシャの頭を撫でる。
気持ち良さそうな顔はさすがフランの姉といったところか。
「レンさん、これからどんなに可愛い子や綺麗な子がハーレムに増えても、私の傍にいてくださいね……?」
「わかってるよ、約束する」
「約束ですからね……?おやすみなさい…レンさん」
「ああ、おやすみ、リーシャ」
最後に1度キスをして、俺たちは眠りに落ちていった。