帰宅のキスと魔法の練習
「た、ただいま」
俺が帰ると、リーシャが迎えてくれた。
「レンさんおかえりなさい」
「ただいま、リーシャ。リイネスたちは?」
「ルカさんとリイネスさんは出かけてますよ?ミクさんはずっとフランの相手してくれてたみたいで」
あの超絶ブラコン妹もフランの可愛さにやられたか。
そう思って苦笑していると急にリーシャがモジモジしだした。
「リーシャ?」
「あ、あの……レンさん」
「ん?」
「お、おかえりのキス、させてください……!」
「…………」
「だ、ダメですか……?」
真っ赤になって上目遣いで見てくるリーシャを見て思わず黙ってしまった。やばい、可愛すぎる。
「あーもう、リーシャは可愛いなあ!」
「きゃっ!?れ、レンさ……んっ」
抱きしめてキスする。
リーシャは最初は驚いていたが、すぐに体を預けてくれた。
「…………改めてただいま、リーシャ」
「はぁ…………おかえりなさい、レンさん」
唇を離して笑顔で返す。
リーシャは真っ赤になって目をそらした。
やっぱり可愛いなあ。
「あー、疲れた。ただいまー」
「ただいま帰りましたー。あ、レン様おかえりなさい」
「ただいま、リイネスとルカもおかえ……んんん!?」
「ふう……ただいまのキスです」
「次は私ね」
帰ってきたリイネスとルカにおかえりと言おうとしたら2人にキスされた。
「…………………」
「私がさっきレンさんにされて驚いた理由、わかってくれました?」
「うん……」
リイネスとルカの顔を見て俺の顔が熱くなる。
4人でそんな感じでいると、奥からミクとフランが走ってきた。
「あー、お兄ちゃんたちおかえり!」
「みんな……おかえり……」
2人に出迎えられ、リビングに連れていかれた。
そしてみんなで夕食をとる。
ちなみに席は朝みたいになって、ミクが軽くむくれた。
「ねー、私これからずっとこうなのー?」
「わかったわかった。明日から俺がミクの隣に座るから」
「おお!言ったねお兄ちゃん!絶対だよ!?」
「はいはい」
「それじゃ、私フランとお風呂行ってくるね!行こ、フラン」
「うん……」
そう言ってフランを連れて行ったミク。
完全に溺愛モードじゃねえか。
「レンがミクの隣に座るってことは……」
「そういうことですよね」
「じゃあ、公平にじゃんけんで決めましょう?」
リイネスたちはなにか3人で話し合っているようだが、声が小さくて聞こえてこない。
あ、そうだ。リーシャに言っとかないと。
「リーシャ」
「は、はいっ」
驚いたように肩をびくつかせるリーシャに苦笑してしまった。
「今日はフランとの約束通りリーシャも一緒だから、用事が済んだら俺の部屋に来てくれ」
「は、はい。わかりました」
「俺はちょっと出かけてくる、リイネス、ミクのこと頼むわ」
「了解よ、いってらっしゃい」
そう言って屋敷の外に出て、クードの町の外に出る。
町の外に出れば当然魔物がいる。
ここに来た理由は……
「さって、始めますかね。魔法の練習」
そう。魔法の練習。
この前は適当に使えただけ。
もうAランクだし、あいつらを護るためにも戦闘でも使えるようにしないと。
ギルド長に教えてもらった狩場に行く。
そこはクードから馬に全力疾走させて1時間ほどの場所で、ワイバーンの巣になっているらしい。
ついでに捕獲できればいいが。
「しかし、多いな……」
巣に近づくにつれてどんどん飛んでいる数が増えている。
離脱のときは注意しないと。
「よし、ここでいいか」
亜竜種の卵が少しだが視認できる距離。
周りには尋常じゃない数のワイバーン。
完全に攻撃態勢に入っている。
「よし、始めるか!」
詠唱し、魔法を放つ。
今できるのはルカの見様見真似だった「フレイムスピア」だけ。
しかもルカみたいに拡散できない。
早く拡散できるようにしないと。
そう思いつつ、魔法をワイバーンに打ち続けた。
☆
それから2時間ほど。
「はあ……はあ……」
周りにはワイバーンの死体。
捕獲を何度か狙ったが、収束してあるものだと威力がありすぎて、燃え尽きてしまう。
より拡散の重要性が増した。
「今日は帰ろう……フランとの約束もあるんだ」
上手いこと退路は開けたし、すぐに退散することにした。
早く帰らないとフランをまた泣かせかねない。
それだけは避けねば。
そんなことを思いながらクードへ馬を走らせるのだった。