昇格とミーナとのデート
「────はい、レンさんとリイネスさんのAランク更新、ならびに、ルカ・アルカディア王女、リーシャ・リターナさんのAランクへの登録完了しました」
俺たちはギルドに来ていた。
ランク更新とルカとリーシャの登録。
「ルカ王女とリーシャさんはこちらをどうぞ」
「「ありがとうございます」」
「ミーナさんありがとうございます、手続き大変だったんですよね?」
「まあ、大変は大変でしたけど、このあと予定がありますので」
予定があるのか。
それはとっとと終わらせないとあとに響くもんな。
「なに他人事みたいな顔してるんですか?レンさんとのデートですよ♪」
「なっ!?」
「「ど、どういうことですかレンさん(レン様)!」」
「お、落ち着け、ルカ、リーシャ!」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたわね……はぁ…」
ミーナさんの一言でリイネスは呆れ、ルカとリーシャが怒る。
爆弾を落としたミーナさんはイキイキとしていた。
「レンさんやっと帰ってきたんですから、約束通りデートしてもらいますよ?」
「わ、わかりました!行きます!行きますから!」
「言質取りましたよ?じゃ、仕事終わるの待っててくださいね♪」
「わかりました……」
ミーナさんは満面の笑みで受付の奥へと行ってしまった。
残されたのは俺とリイネス、怒ったルカとリーシャ。
「レン様!説明してもらいますよ!」
「そうです!詳しく説明してください!」
「わかったわかった。どうせいったん家に戻るし、戻りながら話すよ」
というわけで、家への帰路で2人に説明した。
説明が終わると2人は複雑な顔をしていた。
理解はできるけど、納得はできないって感じ。
「そういうわけだから、許してくれないか?」
「まあ、約束だったのなら……」
「しかたない、ですよね……」
やはり納得はできないって顔。
とりあえずフォローはしておこう。
「ルカは今度どっか連れていくし、リーシャとは今日フランとの約束もあるからな。それで勘弁してくれ」
「「まあ、それなら……」」
フォロー成功!
というわけで午後はミーナさんとデート。夜はフランとの約束。
案外忙しくなりそうである。
☆
ミーナさんとの待ち合わせの時刻。
言われた通り俺はギルドの前で待っている。
「お待たせしました、レンさん」
「いや、全然待ってないです」
出てきたミーナさんを見て一瞬固まってしまった。
化粧がさっきの仕事用(?)と違ってまた綺麗だった。
「……?どうかしました?」
「いえ、綺麗だなと」
「……もう、レンさんお世辞上手ですね!」
ミーナさんは俺の感想に素直に照れた。
そういうところもなんか可愛い。
「じゃあ、どこ行きます?」
「そうですね……私が考えたコースでいいですか?」
「構いませんよ」
かっこよくデートコースを決められればよかったけど、生憎だがそんな知識は持ってない。
というわけでミーナさんが決めてきたというコースを回った。
普通に買い物だったり、クレープ(みたいなの)を食べたり。
いかにも普通で現実世界にもありそうな感じだった。
でも、俺は心地が良かった。
どこかであんなとこでも懐かしむ気持ちがあるのかもな。
そんなことをぼんやり考えていると、急にミーナさんが腕を組んできた。
「もう、なに考えてるんですか?」
「あ、いえ、たいしたことじゃないですよ」
「今は私とのデートに集中してくれなきゃ、イヤですよ?」
むくれたミーナさんは年上なのに、とても可愛く見えた。
それに自然と笑みがこぼれる。
「……はい、すいません」
「謝ってるのに笑ってますし……」
「すみませんって、反省してます」
「ならいいです♪」
そうやってまた心地良い時間を過ごす。
時間は過ぎ、もう暗くなってきていた。
俺とミーナさんはギルド前まで戻ってきた。
「それでは、ここで。またデートしてくださいね」
「まあ、俺が相手でよければ」
「レンさんじゃなきゃイヤですよ」
「面白い冗談……」
俺は最後まで言い切ることができなかった。
気がつくと俺のすぐ目の前にミーナさんの顔がある。
そして唇に柔らかい感触。
それで「キスされた」と気づいた。
「……ミーナさん?」
「冗談なんかじゃ……ありませんよ」
赤い顔をしてミーナさんはギルドに入っていった。
俺は呆然としてしばらくその場を動けなかった。