異世界最初の村
俺はリイネスに状況を説明した。
「つまり……レンは異世界からの転移者ってことかしら。」
「まあ、そういうことになるが……リイネスは疑ったりしないのか?」
「にわかには信じがたいけど……助けてくれた恩人に嘘つくほど恩知らずではないでしょ?」
「そりゃ、まあ……」
俺だって恩人、しかもこんな可愛い子に嘘はつきたくない。
「しかし、どうしましょうか。その様子だと宿泊先もお金もないんでしょ?」
「見ての通りだ」
リイネスはなにか考え込んでいた。
俺ならこんな男放置したい。
「仕方ないわね……しばらく私の家にいるといいわ」
「!?」
リイネスの家に一緒に住む!?
「いやいや、いくらなんでもそれは」
「何よ、不満なの?」
「そういうわけじゃないけど、さすがにダメだろ」
「なら野宿しかないけど」
「………………ありがたく住まわせていただきます」
「素直でよろしい♪」
まったく、この子には危機管理能力がないのか。
まあ、嬉しいけどさ。
「さあ、ついたわ。ここがリスネよ」
そこは小さな村だった。
しかし活気があり、住民同士が仲のいいことがわかる。
「レン、行くわよ」
「お、おう」
俺はリイネスのあとをついて歩いた。
しばらく行くと市場らしき場所についた。
「お、リイネスじゃねえか。今日は狩りじゃなくて彼氏探しだったんかい?」
「こんにちは、おじさん。そうじゃないわよ。」
「あらあら、リイネス。男連れなんて珍しいね。今日は赤飯かしらね。」
「こんにちは、おばさん。そんなめでたいものじゃないわよ。」
リイネスはあっという間に村人に囲まれた。
(リイネスのやつ、すげえ慕われてんのな)
すごいと思うと同時に羨ましく思った。
俺が向こうにいたときはそんなこと一度もなかったのだから。
「レン、早く!」
「あ、ああ、悪い。」
市場を離れ、1番大きな住居にやってきた。
「ここって村長の家じゃないのか?」
「そうよ?私村長の娘だもの。言ってなかったかしら?」
「言ってねえよ!」
たしかに一人暮らしとも言ってないけどさ!
「おじいちゃん、ちょっといいかしら」
「おお、リイネス。どうしたんじゃ?」
「私この人と一緒に住むことにしたから」
「な、なんと……そちらの……」
「あ、俺は蓮って言います」
「レン殿と一緒に住むということかの?」
「そうよ。だからあの話はナシにしておいてね。行きましょ、レン」
「あ、ああ。し、失礼します」
なんか重苦しい雰囲気だったのでとっとと出ることにした。
村長は難しい顔をしていた…………ような気がする。
村長の家を出て数分歩いたところに小さいながら立派な家が一軒だけあった。
「ここが私の家よ」
「んじゃ、しばらく厄介になります」
「空き部屋があるからそこを自由に使ってね」
本当にありがたい。
「それじゃ、私も部屋に戻るから。なにかあったら呼んでね」
「おう、わかった」
そう言って俺たちはそれぞれ部屋に入っていった。