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奴隷とオークション

翌日の昼頃、俺とリイネスが部屋でくつろいでいたところ、急に宿屋が騒がしくなった。

何事かと見に行ったら、宿の玄関に王女様。


「レン様、ごきげんよう」

「ご、ごきげんよう?」

「……あら?リイネス様?」

「ごきげんよう、王女様。昨日レンから話は聞きました。これからよろしくお願いします」

「い、いえ!これから一緒なのですし、ルカとお呼びください」

「あら、そう?じゃあ、ルカ。よろしくね。私のこともリイネスって呼んでね」

「は、はい、リイネスさん」


なんだ!?リイネスが一瞬で仲良くなったぞ!?

リイネスの適応力の高さに驚く。


「レン様は……これから末永くよろしくお願いしますね……」


この王女様はこの状況で頬を染めて何を言ってるんだろう。


「…………ああ、よ、よろしく?」

「レン様も私のことはルカとお呼びくださいね?」

「わ、わかりました……る、ルカ様?」

「ルカと!お呼びくださいね?」

「わ、わかった、ルカ……」


気圧されてしまった。

しかも呼べと言ったのにいざ呼ばれると照れるとは。

こっちまで顔が熱くなりそうだ。


「……………わかってはいたけど、ずいぶんとルカと仲がいいのね、レン」

「………………………」


ルカと話している俺の後ろから殺気。

振り返ったら俺は死ぬ………!


「ああっ!俺、ちょっと用事があるから!それじゃ、リイネス!ルカのこと頼んだ!」

「あっ!待ちなさい、レン!」

「い、いってらっしゃいませ……?」


ルカにリイネスを押し付ける形になったが、なんとか逃走成功。


「はぁ…………ん、ここは?」


逃げるために王都の中でもだいぶ入り組んだところに来てしまったようだ。


「参ったな、俺道とかよくわからないんだが……ん?」


辺りを見回していると向こうから小さい女の子が走ってきていた。

しかし、格好が不自然すぎる。

服はボロボロだし、手首には手錠でもついていたかのような痣。

考えてぼーっとしていると、女の子は俺にぶつかった。

俺より30cmは低いだろうか。


「あ、あ……」


ぶつかった対象の俺を見て、明らかに怯える女の子。

怯えられても気分が悪いので、相手の目線の高さと同じになるようにしゃがむ。


「…………どうした?」

「………………」


まだ怯えているのか、口を開かない女の子。

俺は話すまで待ち続けた。

10分ほどだろうか、ようやく女の子は口を開いてくれた。


「わたし……どれいで……それがいやで……」

「……脱走したのか」


怯えは残っているものの、ちゃんと会話はしてくれるようだ。

俺は名を名乗って、思い切って女の子のことを聞いてみた。

話していて少しずつ慣れてくれたのか、聞いたことは話してくれた。

女の子の名前はフランで、14歳。

彼女には同じく奴隷になってしまった姉がいること。

親に捨てられて、奴隷なってしまったことまで。


「お、にいさん……レンさんは……」

「おい、フラン!」


フランが俺に話しかけたところで、コルトで見たような商人がやってきた。

フランを担ぎあげたと思ったらこちらを睨みつけてきた。


「あんたは?」

「いや、通りすがりだ。道に迷ってな」

「おお、そうか。ならついでだ、うちの店に寄ってかないか?」

「あんたの店?」


おっさんは明らかに商人。

そしてフランを連れ帰ろうとしていて、フランは奴隷だと言った。

つまり。


「あんた、奴隷商人か」

「いかにも」


ファンタジーなどで見たりはするが本当にあるとは。

肝が冷える。

と同時に妙な苛立ちを覚えた。


「……わかった、行こう。話が終わったら案内はしてくれよ?」

「へへ、どうも。ではこちらへ」


下卑た笑みの商人について、さらに奥まで入っていく俺。

担ぎあげられたフランの目の怯えの色が強まっていくのが見ていて辛かった。

しばらくすると会場らしきものが見え、そこから歓声が聞こえる。


「うちの店はオークション式でね。金があったら参加してってくれや」

「……………わかった、そこそこ蓄えはあるしな。参加しよう」

「まいどあり。いい奴隷が見つかるといいな」


俺は会場に入っていった。

中では下品な笑い声とステージの奴隷に対するオークションで盛り上がっていた。


気分が悪くなりそうだが、ここで退くわけにいかない。

フランの話を聞いて思ったが、さっきのフランの目を見て決めた。

俺はここでフランとその姉をなんとしても買取る。

そのためにチートでもなんでも使ってやる。

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