ルカ・アルカディア
目が覚めると俺はベッドの上で白い天井を見つめていた。
傍になにかの重みがあり、見てみると、
「………すぅ……レン……」
リイネスが寝ていた。
看病してくれていたのか。
「……ありがとうな、リイネス」
優しく頭を撫でてやる。
するとリイネスは目を覚ました。
「……ん………れ、レン!」
「よう、おはよう、リイネス」
俺が挨拶するとリイネスは泣き始めた。
「ええ!?俺なんか泣かせるようなことした!?」
「したわよばかぁ……あんな大怪我して……心配したんだから……」
「で、でもこの前みたいに治ったんだろ?」
「治ったけど……それでも心配するの!」
リイネスと話をしていると、医務室のドアが開かれた。
「よう、レン。傷はもう大丈夫そうだな」
「クロウさん、どうも。あのあとどうなりました?」
「おう、ノーム卿は今までの悪事を暴かれて即刻投獄だ。王が城でお前を呼んでるぞ。ついてきてくれ」
「王様が?わかりました。じゃあ、リイネス。待っててくれ」
そうして、上着を羽織り、王様のもとに向かう。
「レン・リターナ。王がお呼びと聞いて参りました。このような格好であることお許しください」
「よいよい、気を楽にせい」
王様は優しく迎えてくれた。
王女様は……見当たらない。
「ところで、ご用件は?」
「うむ、今回はご苦労であった。褒美を与えられず申し訳ない」
「い、いえ、俺のワガママ通していただいただけで十分です」
「そう言ってもらえるとこちらも助かる。して、本題は次じゃ」
「え?」
今のが本題じゃないの?
「ルカ、出てきなさい」
「はい」
呼ばれて王女様が出てくる。
………………なぜか目を合わせてくれない。
「ルカよ、自分で言うのじゃろう?」
「は、はい」
しかも王女様が言うのか。
「れ、レン様」
「は、はい」
「私……私、ルカ・アルカディアは……」
「はい……」
フルネームそんななんだ、とかいう言葉は飲み込んだ。
言える雰囲気じゃない。
「私は、あなた様のお傍にいたいです……」
王女様……ルカ様は顔を真っ赤にしてそんなことを言った。
えーと?
「どういうことです?」
訳が分からず王様に質問する。
「どうもこうも、ルカがそなたに惚れてしまった、という話じゃ」
「はい!?」
なんで!?
リイネスが泣いたことといい、目が覚めてから良くわからないことが多すぎる!
「えっと………………なぜ?」
「ワシからはなにも言えんのだ。ワシもなにも聞いていなくてな。ルカ、自分で話しなさい」
「は、はい。1回戦で初めて目にしたときから、貴方の凛々しいお顔や動きが頭から離れず、一緒にお食事したときは今までで1番嬉しかったんです。そして、決勝戦での勝利した貴方を見て確信したのです!私は貴方に恋していると!」
ルカ様は「むふー」といった感じの顔で話していた。
そして俺は……
「…………………………」
顔を手でおおってしゃがみこんでいた。
自分で聞いといてあれだけど、自分に恋する経緯とか真っ直ぐに言われると恥ずかしくて死んでしまいそうだ。
「というわけじゃ、レンよ、どうする?」
「え、えっと……」
正直なところ突然言われても困る。
なんせ相手は一国の王女様なのだから。
「きっと、突然言われても……考えているのじゃろ?」
「は、はい」
「なのでこれでどうじゃ?ルカは15歳。1度世界中を回らせるつもりだったのじゃ。そしてそなたは旅人。ならば、ルカを連れていくというのは」
「は、はい」
はっ!?よくわからんうちに返事をしてしまった!
つまりあれか!ルカ様連れて旅をしろと!?
「ルカ、彼から許可が出た。出発の準備をしなさい」
「は、はい!」
ルカ様は奥に消えていく。
「あの、大丈夫なんですか?」
「ん?ルカのことか?大丈夫じゃ、あれでも魔法が使える。邪魔にはならないはずじゃ」
「…………わかりました。ゴーシュ・アルカディア様からご息女、ルカ・アルカディア様をお預かりいたします。命にかえても護ります」
「うむ、頼んだぞ」
「では、自分も宿に戻ります。まだ王都にはいるつもりなので」
「うむ、ゆっくりと休むがいい」
俺は城をあとにして、宿でリイネスと話した。
一応ルカ様の件は伏せて。
「へえ、なるほどね。ずいぶんと王様から信用を得たのね」
「とりあえず命にかえても護る約束はしてきた」
「…………はあ、貴方という人は……」
リイネスは呆れたようにため息をついた。なぜだ!?
「王女様が血相かえて貴方のお見舞いに来た理由がわかったわ。なるほどね、またなのね」
なにが「また」なのか全然わからん。
しかし、いろいろあって疲れた。
ルカ様の件は明日にさせてもらおう。
そう思いながら眠りについた。