決着と王女の答え
『さぁ、盛り上がってまいりました!開始直後からノーム卿の怒涛の攻め!レン選手の攻撃も見事躱し、逆に深手を負わせた!レン選手ピンチです!』
アナウンスの声がやたら遠くに聞こえる。
出血量はまだ大丈夫だろう。
さて、どうする……。
考える暇もなくノーム卿は打撃を繰り出してきた。
「はぁぁぁ!」
「ぐあっ!」
衝撃に堪えきれず俺は吹き飛んだ。
「はぁ……はぁ……」
「フハハハハ、これで……終わりだ!」
ノーム卿は一気に間合いを詰めてくる。
終わった。そう思った。
そのとき、
「レン!立ちなさい!貴方はそんなもんじゃないでしょ!いいから立ちなさい!」
リイネスの声が頭に響く。
「………………っ!」
終われない。カレルさんとの約束を思い出せ。
リイネスを護るんだ。そのためには……
「負けられないんだ!」
「ぐうっ!?」
突っ込んでくるノーム卿の側頭部に蹴りをお見舞いする。
よろめいたところにボディブロー。
腕は痛むが関係ない。
さらに後ろ回し蹴りでノーム卿を吹き飛ばす。
「うおおおおおおお!!」
両手に再度双剣を投影する。
「これで終わりだ!」
「馬鹿な……この私が、こんな下民ごときに…貴様ごときにぃぃぃぃ!」
「喰らえぇぇぇぇぇ!」
双剣でノーム卿をなぎ払って場外に落とす。
この瞬間俺の勝利が決まった。
痛みに耐えながら高らかに拳を突き上げる。
間もなく大会中最大の歓声があがる。
『試合終了!優勝は……レン・リターナ!』
アナウンスによる勝利宣言によってさらに大きくなる歓声。
俺は……
「はぁ…………………」
出血が酷くなって意識を失い、リングに倒れていった。
☆
「…………………っ!」
私はレン様の勝利に涙を流して喜んでいた。
あれだけ大きな傷を負っても逆転した彼の勝利に。
だから、彼が倒れて運ばれたとき、お父様の静止も聞かずに、医務室へ駆けていった。
「レン様は!?」
医務室に入るとエルフの女性が1人。
彼女の近くのベッドにレン様は横たわっている。
「大丈夫、傷はそこそこ深かったけどなんともないそうよ。ところであなたは?」
「は、はい、ルカ・アルカディアと申します」
「王女様!?まったくレンってば……」
呆れたような顔で彼を見ている女性。
その顔に胸を打たれるような衝撃が走った。
そして今ので理解した。
彼を想うと胸が苦しい。
彼をよく知るこの女性が羨ましい。
私は……彼が好きなのだ。
彼の試合を見て気になったのは一目惚れだったからかもしれない。
「あ、あの……えっと」
「リイネスです、王女様」
「り、リイネス様、私、戻りますね。彼のことよろしくお願いします」
「ええ、言われなくても」
そう笑顔で返してくる彼女には勝てないかもしれない。
それでも、私は彼の傍にいたい。
自分の持つ王位継承権を捨ててでも。