王女との対面と食事
俺は順調に勝ち続けた。
そして、
『勝者!レン・リターナ!どの試合もほぼ一方的、2回戦では一撃KOすら決めてみせたレン選手がAブロック優勝者となりました!』
大きな歓声があがる。
『次の試合は1時間の休憩をはさみ、Aブロック優勝者レン選手とBブロック優勝者のノーム卿の決勝戦です!』
やはり勝ってきた。
むこうのメンツが弱かったとは考えづらいので実力だろう。
決勝戦は本気でやるかな……なんて思いながら控え室へと足を運んだ。
控え室に戻ると、控え室が妙に騒がしかった。
『あの……レン選手はいらっしゃいませんか?』
鈴が鳴るような耳に心地よい声。
よくわからないので、近くにいたクロウさんに聞いてみた。
「あの、どうしたんですか?」
「おお、坊主か。ちょうどいいところに。ルカ様!レンはこちらに!」
『クロウ!ホントですか!?』
ルカ様!?じゃあ、俺を呼んでるのは……
考えていると、目の前に綺麗な煌びやかなドレスを纏った金髪のロングヘアの女の子がやってきた。
「えっと…………」
戸惑いがあまりにも強くて言葉が出ない。
「あの、レン様」
「は、はい!」
呼ばれたことのない呼び方で呼ばれ、テンパってしまった。
「えっと、その……」
「…………王女様?どうし……いかがしましたか?」
なんか目の前で赤い顔でもじもじしてる。
やはり初対面で恥ずかしいのだろうか。
「あの、もしよかったら、ですね……」
「は、はい」
「…………一緒にお食事でもいかがですか?」
王女様に食事に誘われるというこの状況に対処できるほど俺は知識も経験もない。
隣で意外そうな顔をしているクロウさんが気になる。
「お、お忙しいでしょうか……」
黙っているのを否定ととったのか、泣きそうな顔をしている。
俺はクロウさんとこそこそと話し始める。
(ちょっと、どうすればいいんですか)
(頼む、付き合ってやってくれないか)
(別にいいですけど、ちょっと待ってほしいです。連れに連絡しないと)
(わかった、連絡の間は俺が繋ごう)
「王女様、少々お待ちいただきたいのですが」
「は、はい」
「大丈夫ですルカ様。レンはルカ様と食事をすると言っておりますので」
クロウさんが繋いでる間に俺はリイネスに急いで連絡する。
『はい、もしもし。レン?』
「すまん、リイネス、俺ちょっと用事ができたから、休憩中はそっち行けそうにないわ」
『ふーん?まぁ、わかったわ。それじゃあね』
「今度埋め合わせはするから」
『期待しておくわ』
その一言ののちリイネスは通信を切った。
「れ、レン様?」
泣きそうな声でこちらを呼ぶ王女様。
「はい、一緒にお食事に行きましょうか、王女様」
「!!」
とたんに嬉しそうな顔になる王女様。
「で、では、お父様のもとへ急ぎましょう!」
「なんて!?」
お父様のもとへ!?それって王様じゃないの!?
クロウさんのほうを見ると、
(あとで俺も行くから)
と口パクで言っていた。
こうして、俺は王女様に連れられて王様に挨拶することになったのであった。