鍛冶屋と無銘の黒刀
夕方頃にキルカに着いてリイネスのお怒りから解放された俺はギルド長からの依頼をこなすため、「ガルシア」という人のもとに向かっていた。
「ずいぶん入り組んだところにいるんだな……」
町の人の話を聞いて、場所を聞いたら路地裏のさらに奥。
というか、場所ちゃんと説明してくれ、ギルド長。
かなり奥まったところまで来ると、そこには鍛冶屋があった。
「…………ここかな」
周りには他に家屋と呼べるものはないため、入ってみることに。
入ると、奥から金属に鎚を打ち付ける音が響いていた。
「すみませーん!」
できるだけ大声で叫んだつもりだが鎚の音は止まない。
仕方がないので奥に失礼することにした。
奥へ進むと、銀髪の男性が鎚を打ち付けている。
「あのー!すみませーん!ガルシアさんですか!?」
「あぁ!?ちょっと待て!」
やっと聞こえた様子で、反応はしてくれたので言われた通り待つことにした。
10分後、作業が終わったのかその男性が視線を向けてきた。
「…………確かに俺はガルシアだが、誰だテメェ、何の用だ」
「えっと、ギルド長……ユーリ・マークフェルトさんからの依頼で」
「あぁ、アイツのおつかいか。ご苦労なこった。すぐ持ってくるから待ってろ」
ガルシアさんは奥へ行ったと思うとすぐに戻ってきた。
やたらデカイ剣を持って。
「ほらよ」
「あ、ありがとうございます……」
「さっきはキツく当たって悪かったな。作業中だったんでな」
「い、いえ、こちらこそすみません」
「ユーリから聞いてると思うが、一応礼儀として自己紹介くらいはしとく。ガルシア・バルトス。見ての通り鍛冶屋だ」
さっきと口調は変わらないが、話しやすくはなった気がする。
自己紹介されたのでこちらもしよう。
「俺はレンといいます」
「あー、お前か。ランクDまで一気に上がったヤツってのは。凄いもんだな」
「い、いえ……」
「そうだな…………ほら、コイツをやるよ」
ガルシアさんは周りを見回して、1振りの剣を手に取って渡してきた。
「異例の昇格祝いだ。くれてやる」
「えっ、でも……」
「黙って貰っとけ」
渡されたのは刀身も柄も真っ黒の刀。
「いいんですか?」
「いいっつってんだろ。ただしソイツには名がない。お前がそのうち付けてやれ」
「は、はい、ありがとうございます!」
「そんじゃ、用事は済んだな?じゃあな。もしその刀になんかあったら俺のとこに来な」
「はい、お邪魔しました」
俺は貰った黒刀を腰に差し、頭を下げてガルシアさんのもとを後にした。
その後間もなく、リイネスから連絡が来て、宿屋に移動。
ギルド長に貰ったものの報告をし、その日はゆっくりと休んだ。
明日からの目的地は王都。
そこでノーム卿との決着をつける。