道中のレクチャーと新しい町
村を出てから数時間経った。
既に夜が明けて、辺りは完全に明るくなっていた。
「~♪」
「上機嫌だな、リイネス」
「ええ、そうよ?それがどうかしたかしら?」
「いいや、別に。ただそうやって楽しそうにしてるのはなんか……可愛いなって思ってな」
「……………………」
あ。リイネスが固まった。
どんどん顔が紅潮していく。
「ちょ、ちょっと、何言ってるのよ急に……」
「やめて!そんなに照れられるとこっちが恥ずかしい!」
素直に思ったことは言えたが、この反応への対処法を俺は知らない。
「と、ところで、リイネス」
「な、なにかしら?」
「この近くに町とかってないのか?」
「え、ええ。そろそろ大きい町に着くと思うわ。こっちの方向だと……」
どこからか地図を出すリイネス。
「えーと、クードになるわね」
「ちょっと待て。どこから地図出した」
よく分からんところから出した気がする。
「当たり前だけど、貴方なにも知らないのね。個人用のアイテムボックスよ」
「アイテムボックス?」
なんだそれは。ゲームの無限収納カバンと同じ機能が俺にもあると?
「出ろと念じれば出るわよ?そこで所持金の確認とかもできるし」
「そうか…………やってみる」
言われた通り出ろと念じると目の前に出てきた。
出てきたのだが…………
「えーと……」
「どうかしたの?」
「なんか…………回復アイテムっぽいのとかでだいぶ埋まってるし……手持ちの金がカンストしてるんだが……」
「え!?」
驚かれてしまったが俺も驚いている。
「それはあまり口外しないほうがいいわね」
「まぁ、そうだろうな」
「分かってくれてるならいいわ。あとは、武器も同じ要領で出せるわよ。こんな風にね」
初めて会った時に見た弓と矢を手元に出してみせた。
「なるほどな…………って俺武器持ってなかったな」
「え?あの時持ってた黒い小剣は?」
「あれは……あの後壊れたんだよね」
「へぇ、そうなの……」
申し訳ないが嘘である。
あの短剣は俺の目の前で消え失せた。
見た目が俺の記憶にある短剣と一致していたし、あのチート能力で一時的に造りだしたものだろう。
「アレについても考えておかなきゃな……」
あの能力はおそらく強みになる。名前があるとすれば俺の記憶的に「投影」だろうか。
「アレって?」
「ああ、いや。なんでもない。そろそろ着きそうか?えーと……カード?」
「クードね。そろそろというか、もう目の前よ。ほら」
言われた通り前を見ると、大きな町が見えてきていた。
「あそこで装備とかいろいろ整えることにしましょうか」
「そうだな」
「お金あるんだし、レンが買ってね?私勢いで出てきたからあんまりお金ないのよ」
「へいへい、わかってるよ」
そうやって軽口を叩きながら俺とリイネスは町へと足を踏み入れた。