四 次の日の昼な話 その三
三つ目です、それにしてもイベント豊富な一日ですね?
昼休み。
あぁ、知らなかったよ。戦争はどこにでもあるんだね。「悲しい事だ」と、詩人は言った。
まるで蟻塚に群がるゴールドハンターみたいに、
スーパーのタイムサービスに群がる主婦のように、飢えた生徒は何かに群がっていた。
これでは食堂が使えないじゃないか。朝から何も食べてないので、体が不調を訴え始めている。
断固として栄養を摂らないと……。
「遅かったか……」
諦めがかったその声に振り向くと、眼鏡なスポーツマン風の男がいた、確かうちのクラスの内田とかっていったけ?
「いよぉ、転校生! ……どうだ? 戦場だろ?」
スポーツマン内田は、同意を求めてきた。……ああ、確かに、殺気が渦巻いているよ、誰しもが戦場の狂気に侵され暴走している。
「だな。だが、恐ろしいまでの純粋な争いだね」
それは、見るものを熱狂させるスポーツのような戦争だった。
「坂松ベーカリー、学校の近くの超人気店だ。焼きたてのパンをめぐって争いが起きるのは道理に適ったことだぜ」
なぜか説得力があるな、それとも空腹で感化されているだけかな?
「だがっ! まだだ! 一番人気の【ハニーレモンあずきパフェマンモス肉トマト白魚ジャガイモボリューム満点丼ロール】はまだ売られていないはずだ!」
……それはパンなのか? パフェなのか? はたまた丼なのか? なんにせよ、一番人気は無いんじゃ?
「それは、出されても食べたくないなぁ」
「なにを言う! 世界の有名人とて簡単に手に入れられるシロモノじゃないんだぞ! 見ろ……、それを目当てに静かに闘志を燃やしている者がいる!」
あの一団か……。気付いてはいたけど、目には見えない不可視のオーラを感じる。
ちらほらと、うちのクラスの生徒も確認できる。森先生や清菜。
食い意地張ってるし……。
「アレは危険だ! 一度でも食べた者、その姿を見たものを虜にし、さらに昼休み最後に売りに出される、つまり辿り着けなかった者は地獄の苦しみを味わうことになるのだ……」
パンで戦争ね……、まったく馬鹿な話だね。けど僕にとっちゃ生きるか死ぬかの瀬戸際なので、あれに飛び込まなくちゃならないのか。
色々訓練を受けているとは言え、
「さすがに二日続けて抜くのはなぁ……」
誰に言うでもなくつぶやいた。
「まだ、食ってないんだろ? 競争しないか?」
いい事を聞いた、利用させてもらおうじゃないか。
「ん? 君は例のいかがわしいパンを食うんじゃなかったのかな? それとも諦めたかい?」
「今日は空気が悪いんだ、こんな日には諦めるのが頭のいい奴ってなもんだ」
「なるほどね、でも競争には乗ってあげるよ、賭けるのかい?」
「ははっ、校内は賭け事禁止だとよ」
分かってたさ、これで僕は楽してあの波を超えられる。
「分かったよ、――よーい――ドン、……でスタートだから」
もちろん内田はドンの所でダッシュ、僕はその後をついていくだけ、戦場は知恵なしでは生き残れないのさ。
次の話で今回の更新は終わりです、次はいつになることやら……、一週間くらい空くかもしれません。