えぴそーど3
俺の父親である嘉川 刀吾と、母親の結衣がずっといちゃいちゃしているため、俺はピアノがある部屋へ向かった。
「この嘉川 蹴、決してあんなダメ親父みたいにはならないぞ」
強い決意の独り言を、まるで呪文を唱えるように、何度も何度も繰り返し呟いた。そうして歩いていると、
ドンッ!!
「ひゃう!!」
あれ?何かにぶつかった。廊下はまだまだ先まで続いているが、一体どういうことだ。
恐る恐る、俺は目線を下げた。すると、淡い藍色のなめらかな頭髪が姿を現した。
「お、ごめんな。ぶつかっちゃったよ」
「いえ!蹴さんは何も悪くないんです!」
「まさか。気を使わなくてもいいんだよ」
「はう………。すいません」
「謝らなくてもいいよ」
「ええっ!?す、すいません!」
本当にいい子だ。我が家に舞い降りた、たった一人の天使。
俺の妹、嘉川 彩歌。家では、サヤカとかサヤちゃんと呼ばれている。
「ところでサヤカ、どこに行くんだ?」
「お父さんとお母さんにお話があって………」
「困ったことがあったら、俺に言ってくれ」
「あ、ありがとうございます!」
なぜこんなに他人行儀なのかというと、幼い頃に事件があったからなのだ。詳しいことは、おいおい話すとしよう。
そんなこんなでピアノの練習部屋に行ったわけだが、あの時、彩歌から、話の内容を聞いていれば、こんな悲劇は怒らなかったのかもしれない。