えぴそーど2
「あれ?そういえば」
「どうしたの、シューちゃん?」
「ふと、思ったんだけどさ」
黎明高校といえば、新設校のはず。レオ姉は三年生なんだが、校舎が完成したのは昨年末。じゃあ、今までどこで勉強してたのだろうか。この疑問を、俺は母さんにぶつけてみた。
「あらあら、シューちゃん知らないの?柚木高校と桜花高校が統合したのよ、あそこ」
「ふーん」
待てよ。私立高校が統合なんて、初めて聞いたぞ。こんなことってあるものなのか。
「ところで、父さんは?またどこかで飲んでるのか?」
「あら〜、人聞きの悪いこと言わないでよ。シューちゃんのために、汗水垂らして働いているのよ」
「ふーん、嘘くせえ」
「失礼ね〜。そろそろ帰ってくると思うんだけど………、ほら、帰ってきたわ」
玄関が勢いよく開く音。入ってきたのは、長い茶髪を後ろに結んだ、髭ヅラのダメ親父。
「おぉー、シュー。もう帰ってたのか。早いなぁ、このこのぉ〜」
嗚呼、また増えた。我が家の厄介ごと。恐らくはレオ姉より面倒くさいと思う。少なくとも、俺は。
「はいはい、お帰り父さん。まず、俺の首を羽交い締めにしている、そのたくましい右腕をどけてくれ」
「おっ、お前もこのたくましさが分かるようになったか!そいつは良かった!」
「おーよかったよかった。じゃあ、俺はピアノ弾いてくる。いい加減右腕を離せ」
「ちぇ、シューは無愛想だな、つれねえな」
家に帰ったと思ったら真っ先に息子の首を絞める父親に、愛想を尽くさない高校生などいないだろう。
「トーゴさん、今日の晩ご飯は、唐揚げですよー」
「唐揚げだと!?俺様、嘉川 刀吾の大好物を晩飯にするとは、流石はマイハニー!」
父さん、それ、恥ずかしくないのかよ。