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頭に隕石がぶつかったら、スペースオペラが始まった。  作者: 大間九郎
二章 さあ、お約束のハーレム展開だ
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深見深と妹

宇宙でござる―

「わ~ぁ! 深兄見て見て! 星がきれい!」

「い、やもう見飽きた」

「なんでースゴイ綺麗なのにー」

 珠代は窓から見える星の世界に感動して多弁になっているがそれは嘘だ。心はスゴイ震えていて、それを奮い立たすために無邪気に喋り捲っているだけだ。

 今は珠代に「お前レプリカントっていう人造人間らしいぞー」とか「お前四年ごとに殺されてて、今ある記憶も作られたモンらしいぞー」とか言えない。言ったらとんでもなく精神崩壊しそうなので言えない。

 宇宙船は星の海原をすいすい進んで行っている。見たこともない宇宙の光景は想像どおりって感じで、初めは感動するが二十分も知れば飽きて、一時間もすれば眠くなってくる。

「シン君速いでしょ~」

「いや分かんね、宇宙船で宇宙出たのこれが初めてだから分かんね」

「そんな~もっと感動してよ~このファルコン号は銀河系最速だよ~」

「おいチューバッカうるさいから黙ってろ」

「なんで副船長!? 僕の船なのに!?」

 イスに寄りかかり横目で珠代を見る。血がつながっていなくても、お前が人造人間でも、俺には関係ない。でもお前は俺のことをどう思うんだろうか? 血がつながってない、自分より不幸じゃない俺に今までみたいに接してくれるのだろうか? 俺はお前が悲しむのが怖いふりをして、本当は俺が悲しむのが怖いんんだ。今までみたいに俺に優しくしてくれないお前になっちゃうんじゃないかって、それが怖いんだ。

 俺は怖くてお前に本当のことが言えないでいるんだ。

 ごめんな珠代。

「シン君、君は怖がっているんだね~」

「あ? ああ、怖がっているんだろうな」

「でも言葉にしないってのもウソだよ~」

「ああ、わかってる」

「真実がすべて素晴らしいわけじゃないけどね~」

「でも、真実は真実だろ?」

「でも、真実は正義ではないよ~」

「俺も正義ではないよ」

「でも誠実であろうとしているよ~」

「誠実は正義ではない、真実が正義ではないように、だろ?」

「そうだね、でも、正義もそんなに良いものじゃないしね~」

「良いものじゃないけど、正義でもないけど、俺は珠代に一番いい方法を取ってやりたいんだ。それが何なのか分からないから怖いんだと思う」

「真実を告げることが誠実とは限らないし、いくら相手のためを思って行動しても実るとは限らない。そんなもんだよ~だから怖がらなくていいよシン君、僕が分かってるから~シン君の真心も、シン君のエゴも、それを全部わかってるし、肯定してるから~シン君が思った通りにするのがいいよ~きっと出る答えはどんな選択をしても大して変わらいものだよ~」

「あ~さんきゅ」

「いえいえどういたしまして~」

「そいじゃ誠実を見せるとしますか」

「お~がんばって~」

 俺は立ち上がり珠代に近づく。

「来ないで!」

 珠代が走って壁際で蹲る。

「話があるんだわ」

「来ないで! 聞きたくない!」

「まー聞きたくないのは分かってるけど、聞いといたほうがいいと思うんだわ」

「もう聞いた! 捕まって! 閉じ込められて! お姉ちゃんに全部聞いた!」

「そうか、それじゃ俺と話をしようよ珠代、これからのこととか、俺たちのこととかさ」

「聞きたくないし話すことなんかない!」

「話すことはあるわな」

「深兄も私のことバカにするんでしょ! 何も知らないで! 何度も殺されて! 人間じゃなくて! そんな私を馬鹿にするんでしょ! 兄妹じゃないって言うんでしょ! 道具だって言うんでしょ! 聞きたくない! 聞きたくない! 聞きたくない!」

「珠代……」

「近づかないで!」

 珠代が俺に向かって両手を突き出す、その手のひらが俺の胸を突く、俺が三メートル吹き飛びか宇宙船の内壁に衝突する。

「痛でーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」

「大丈夫深兄!?」

「珠代ちゃん!? シン君がワイヤーアクションみたいに飛んでったよ!?」

「ひゅー、ひゅー、い、息ができない」

「深兄大丈夫!? ごめんね!ごめんね!ごめんね!」

「……酸素……酸素……」

「あ~こりゃ肺がつぶれてるね~」

「深兄死んじゃう!?」

「……吐血……吐血……」

「あ~まかせて~」

 血を吐きぐったりしてる俺に『ジャルパカ』が近づき、あお向けに寝かされる。鼻をつままれる。マウストゥマウスで思いっきり息を吹き込まれる。

 ブク~って胸が膨らみ、『ジャルパカ』が口を離すと余分な空気が口から抜け俺の胸は正常な大きさになる。

「はい治りましたとさ~」

「わしゃ風船か!」

「肺は風船みたいなものだよ~」

「荒治療すぎるわ!」

「トムジェリみたいだったでしょ~」

「トムジェリみたいなことリアルでやるなや!」

「……キスした」

「へ?」

「深兄キスした」

「キスじゃないわ! 治療行為で放棄的な措置だわ!」

「キスだよ~それもわざと、空気入れるのは鼻からだってよかったわけだからね~」

「じゃあ鼻からやれや!」

「だから言ってるじゃん発情期なんだって僕は~」

「キモいわ!」

「自然の摂理だよ~」

「深兄キスした! 不純! 不潔! 不道徳! なんで珠代がこんなにもキズついてる時に平然とキスとかできるの!? なんで!? 深兄サイテー! 兄としても人としてもサイテー! もう知らないんだからね!」

 お前が俺の肺をつぶしたんだろうが!

「ホントシン君サイテ~」

 お前がやったんだろうが!

「深兄! 私決心しました!」

「お、おう?」

「私もう深兄の妹ではありません!」

「お? おう」

「なので深兄とは呼びません!」

「お? な? おう」

「呼び方を変えます!」

 そう宣言すると珠代は、横たわる俺の頭側に膝立ちになり、胸の前で祈るように手を組む。

「お、おにぃちゅわん」

「なんで! もう兄妹じゃなくなったんじゃないの!?」

「ほら、兄妹じゃなくなったから男の人が大好きだっていう妹キャラになってみました」

「実妹キャラから義妹キャラへマイナーチェンジ!?」

「そこは大きな違いだよおにいちゅわん。実妹は世界中に結構いるけどおにぃちゅわん好きな義妹はレアキャラだよ」

「いやいやそんなレア度いらないから!」

「おにぃちゅわん、珠代のこと大切にしてね」

 珠代、膝立ち、上目使い。

「おにぃちゅわん、珠代おにいちゅわんと結婚できるんだよ?」

「いやいやしないし!」

「おにぃちゅわん、もう都知事にも手が出せない間柄なんだよ?」

「いやいや宇宙は都条例関係ないから! それにロリコンは引っかかっちゃうんだよ!」

「ロリコンじゃないよ!」

「十五歳なのにロリコンじゃない!?」

「私ブラコンだよ!」

「今はあまり関係ない!?」

「そしてこの船はファルコン~」

「まったく関係ない!?」

「そしておにぃちゅわんはシリコン!」

「シリコンと今の話の関係性が読めない!?」

「シン君は終わコン~」

「罵られてる意味が分からない!?」

「おにぃちゅわんだーすき!」

「お、おう」

「シン君だーいすき!」

 ゴッ

「痛でででーーー!!!!!!!」

「お前はキモい」

「シンく~~~ん!」

「ふっ(チラ、にや」

「シシシシン君!? その女けっこう腹黒だよ!」


             ☆☆☆☆


「それよりお前何そのかっこ?」

「いや宇宙に出たからそろそろこれかって思ってさ~」

「それビキニ? 鎧? 守ってんの? 露出したいの?」

「いやースペースオペラって感じでしょ~? カームみたいでしょ~」

「お前マジで『アウトランダース』のファンに殺されっぞ!」



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