逃亡殺人 2
ターナーの車のハンドルを持つ手は震えていた。
この手で人を殺してしまったのだ。
だが、あそこで逃がして通報されるわけにはいかなかった
しかたがなかったのだ。そう自分に言い聞かせた。
とにかく逃げるしかないのだ。
警察に何故ばれたのか、考える余裕などなかった。
捕まれば、確実に刑務所で一生過ごすことになる。
それだけはごめんだ。
指名手配された以上多くの人が俺の写真を見ている。最後までみなかったが、懸賞金がついてるおそれもある。
あるいは金を持ってると知って、奪いに来るかもしれない。そうした不安がターナーの頭の中をグルグル回っていた。
もう逃げ場所や警察を騙すプランはない。
あの町で過ごそうと考えていたからだ。
そんな事を考えていながら人気ない道路を走っていると向こうから3台のバイクがやってきた。
すると30メートル手前ぐらいで、行く手を塞ぐようにバイクを横に停めた。
そしてバイクから降り、ターナーのもとへゆっくり歩いてくる。白人の三人組だ。
ターナーは警察か?と思ったが、3人の男はどうみてもそんな格好ではなかった。全員かなりいい体格でいかにも悪そうないかつい服を着ている。
ターナーは3人に見えないようにリュックを後ろの席に隠した。そして車の窓から顔だし、「おいおい そこの坊っちゃん。そこを早くどいてくれ。通れ
ねえじゃねえか」と言った。
3人の内のサングラスをしたリーダー格の男がターナーの元まで来て、「おい おっさん 俺ら金ねえからよお、金くれよ」低い声で言った。
「おいおい 兄ちゃん達、脅す人間違えたんじゃねえか? この車を見ろよ。
これが金を持ってる奴の車に見えるか?」
とおどけた調子でターナーが言った。
すると他の一人がリーダーに言う。「おっさんの言う通りだぜ どうみても俺らより貧乏人だ。ほっとこうぜ」
「やっとわかってくれたか兄ちゃん達。わかったらどいてくれ。ほらこれが全財産だ。とっとけよ」とポケットからしわくちゃな札を取りだし渡す。
リーダーは受け取り
「まあおっさんも頑張れよ。生きていりゃツキは回ってくるからさ」とターナーを哀れな目で見ながら、励ました。
(チツ!何でこんなクソ野郎に俺が励ましされなきゃいけないんだよ)
ターナーは心の中で思う。
「おい、お前ら行くぞ!」とリーダーが他の二人を呼ぶ。
(早く行けよ、クズどもめ)
「おい、ちょっと待ってくれ。俺、このおっさんどっかで見たことあるぞ」
今まで黙っていた一人が口を開いた。二人が戻ってくる。
(これはまずい)ターナーは焦る。
「どういうことだ?」とリーダー
「いやこいつどっかで見た。なんかテレビで観たぞ。」
「芸能人ってことか?」
「あ!!思い出した!!違う。こいつ銀行強盗で指名手配されている奴だ!!」
「おい本当かそれ!?」とリーダーが大きめに言う。
「おいおい、兄ちゃん達本気かそれ?なわけねえだろ。いい加減にしねえとこのおじさんでも怒るぜ」とターナーは焦りながら早口で言う。
「お前は黙ってろ!」とリーダー
「でも似てるだけってことはあるかも知れねえ。今、携帯で調べるわ」
と一人がポケットから携帯を取りだし、調べだす。
「確かテレビで言ってった情報だと、犯人は400万ドル持ってるらしいぞ」と携帯で調べながら言う。
ターナーはすぐに「なわけねえだろ。お前ら、暑さで頭が狂ったか?400万ドルも持ってたらこんなボロい車乗ってるわけねえだろ!!」と怒り口調で言う。
「それは調べりゃわかることだ。俺らにもツキが回ってきたかもなワハハハハ…車から降りろ!おっさん!!」リーダーが怒鳴り、車のドアを開けようとする。
するとターナーはポケットから素早く、銃を取りだし、リーダーの男に銃口を向けた。
「いい加減にしろ坊っちゃん。ああ、俺はその銀行強盗だ。でもなあ。こんな所でお前らみたいなクズに捕まるわけにはいかないんだよ」落ち着いた口調でターナーは言う。
リーダーは「たたたた助けてくれ!!!すまなかった。殺さないでくれ。サツには言わねえ。かかかか、神に誓うよ!
おいお前ら!!お前らも謝れ!!」両手をあげながら言う。
他の二人もリーダーの言葉から危険を察知したようだ。
二人も手をあげる。
ターナーはゆっくり車から降り、三人に銃口を向ける。
三人は命乞いをする「やややめてくれ!!お願いだ。俺達はサツは嫌いだ。
だ、だから俺はサツに情報をうるマネなんてしねえ。
本当だ。なあ頼む信じてくれ。」
「今さら何言ってんだクソ野郎!!!!!。どうやらお前らの運はここで尽きたようだなアアアア!!!!死んで詫びろやあああああ!!ヴぁあああああ!!!!!」
バンッ、バンッ、バンッと三発の銃声とともに三人は崩れ落ちた。
道路は血で染まっていく……
まだ一人は息があるようだ。「こ…このクズ野郎が…人じゃねえ」かすれた声で言う。
「うっせえんだよ!!クズはお前だ!!今、トドメをさしてやる。待ってろ!」
ターナーは車からナイフを取りだし、思いっきり振り上げ、左胸に突き刺した…
静かに死体とバイクを道の外に放り出し、車を走らせた。
ターナーはケビンの時とは違い、心に乱れは無いようだ。
(もう一人殺したんだ。何人殺そうが同じことだ…)
だんだん、すれ違う車が増えてくる。
木を隠すなら森のなか、人を隠すなら、人混みの中…
人はある程度居た方が、身を隠すのに都合がいいことがある場合もある。
そんなことを考えながら、走り続けていると、田舎の住宅街にたどり着いた。
かなり大きな家で庭も大きいのばかりだ…
ターナーはもう行くあてがない。
あと数時間すれば日が暮れる。
(あれを利用するか…)
するとターナーは角の一軒の家の前に車を停め、車から降り家に向かって歩いていく。庭はかなり大きく、子供用のプールが置いてある。
家のドアをノックをした。
少しして、人が出てきた。「どちら様ですか?」白人の金髪ロングで30代ぐらいのスレンダーな女性だ。
「急にすいません~旦那さんいらっしゃいますか?」とターナーが腰低く言う。
「主人は今、仕事に行って居りませんが。主人に何か用ですか?」と女性
「いやそうですか~私、旦那さん古くからの友人でジョンと申しまして。
いやねお宅の旦那さんと今日久しぶりに会う約束してまして。それで来たんですけど。私、ちょっと心配性な所がありまして、遅れないように早く出たら、早く着きすぎて困っててハハハハハ もしかしたらもう帰ってるかなと思ったんですが、やっぱり仕事でしたか。」と調子よくおべっかをベラベラと喋り始める。
「そういうことでしたか。ごめんなさいね。私知らなくて、主人そんなこと殆ど話さないから。主人が帰るまであがっててください。」と女性が言った。
「どうも。ありがとうございます。助かります。」とまんまと家にあがり込んだ。
ターナーはホッとした。
この家の庭に子供用のプールがあったから、家族で住んでる事がわかったから、旦那の友人になりすましたが、もし離婚しててシングルマザーだったり旦那が居たら、どうしようと不安になってたからだった。
無用心な女性は殺人鬼を家に入れてしまったのであった…