噂の人
ようやく、ここまで来ました^^;
次回か次々回で完結です
ポルポルにもいわゆる「都市伝説」じみた話は存在する。
一定以上の人間が関わった集団において当然起こる話題だが、レアクラスやらレアアイテムなどのゲーム的に注目を集める事柄から、町などで遭遇するNPCの隠された秘密まで玉石混交で、社外的には秘密事項だが中にはそれがきっかけで発見されたバグもある。
そんなポルポルの都市伝説の中で有名なものに「メリーさん」と呼ばれる女性の噂がある。
元ネタは怪談だが、ここでは別に怖い話でもなんでもない。
食事をたかる女性の話。
ただ、気がつくと後ろに立っている事からの類似と、本人が一切口を利かず、ステータスもバグった様に読めない事から名前が不明な為、「メリーさん」と呼ばれる事になったのだ。
特徴は「残念美人」。
美形の多いポルポルでも強い印象を与える外見と、物欲しそうにストーレートに食べ物を見つめる目つき、食べ物を貰って食べた時の思わず「いい事したなぁ」としみじみ感じさせるまでの嬉しそうな表情。
それだけでは、貧乏キャラが外見を生かして食事を奢ってもらっているだけの話になってしまうが、このメリーさん、食べ物を奢ってもらっている時しか現れないのだ。
街中を歩いてる姿も、それどころか店の中に入る姿すら目撃されず、気がつくと居て、いつの間にか消えている。
イベントNPCだという噂から、果ては「電子精霊」だとか、電脳空間に入り込んだ幽霊だとか、様々な憶測が飛び交っている。
さて、このメリーさんだが、今回の事態以後、目撃例が途絶えていた為「あれはNPCバグだったんだろう」となりかけていたのだが、最近、また目撃される様になった。
ただし、これまでと大きく異なる点も見受けられる為、果たしてポルポル内で目撃されていたメリーさんと同一人物なのか、その点に疑問を持たれたりもしているのだ。
これまでと異なる点は大きなもので3つ。
1つ目は、街をフラフラと歩いている姿が目撃されている事。
2つ目は、話をする様になっている事。
3つ目は、お金を持っていて自分で買い物をする事。
そして、もう一点、非常に興味深い点が、このメリーさんらしき人物の声が、あの自称・女神様と良く似ているという点なのだ。
なし崩し的にこの世界での生活を受け入れ、その言葉を受け入れて帰れないものとして適応しつつある元・プレイヤーたちだが、なぜ、こうなったのか、また、この世界がどの程度元の世界やポルポルの世界と関係しているのか等、女神に聞けるのであれば聞きたい事は山ほどある。
女神本人、もしくは関係者である可能性が出てきたメリーさんは、こういった訳で元のポルポル時代より、更に注目を集めるようになっているのだ。
今のところ、忙しい人間の傍や、元・NPCの街の人が多い場所等に現れる事が多く、色々話しかけたり、問い詰めたり出来た人間は居ない。
セクハラ対策として、女神サイドによって導入されたらしいスキル「ビンタ」(元々のポルポルには存在せず、気付くと女性が使えるようになっていた)のせいもある。
これは、女性キャラ、及び町の女性が使用出来るスキルで、ダメージゼロ、大きな音のビンタをする事が出来るスキルだが、食らった男性の頬には3日間消えない手形が付く。
セクハラ野郎の証拠を貼り付けたまま生活するというのはどの男性も避けたい事なので、男性キャラは特に良く知らない女性に対して声をかける事を躊躇するようになっているのだ。
なら女性が声をかければ、となるが話しかけても大抵帰ってくる言葉は「おいしいねぇ、これ」である。
ほとんどの場合、彼女は何かを口にしているのだ。
一見、何も食べていない様に見える時でも、飴などの口の中に納まるものを食べている。
まあ、おいしい食べ物の話で盛り上がってしまい意気投合した女性等もいるらしいが・・・。
初期のゴタゴタにある程度ケリが付き、多少は時間が取れるようになったムラサキは、そんなメリーさんの話を聞かされながら、約束通りラーメンを奢らされるため、双子と連れ立ってラーメン屋へと向かっていた。
元の世界に戻れないとなってこれまで以上に人気が高くなったラーメン屋は、街の人の支持もあって屋台ではなく店を構える様になっている。
本人もいまだに率先して素材を狩りに行くが、他のプレイヤーの中にも自分が食いたいが為に協力する人間が出て、また、街の人の中から弟子入りする者も現れる等、屋台の時より店を開いている確率が上がっているのだ。
そのため、より口にする人間が増え、その口コミで更にといった感じで、以前のプレイヤー中心の客層から、幅広い町の人まで客が広がっている。
ムラサキたちが辿り着いた時には既にかなりの列が出来ていた。
最近、新しくトマト(っぽいこちらの野菜)ベースのスープのラーメンも開発され、こちらは主に街の人の人気が高いそうだ。
三人とも、まだそちらは食べた事が無いので、その話をしながら列に並んでいると「ほわぁ、それもおいしそうですねぇ」と後ろから気の抜ける声がしてきた。
ポルポルでも珍しいほど整った顔に、口の端に本当によだれをツーっと垂らした美女。
「なんて、残念なんだ」三人が同時にそう思った相手は、「あ、いつもご苦労様です」とムラサキに何故か礼を言ってきた。
まあ、街の人やプレイヤーなどで、自分が知らない相手から声をかけられたり、礼を言われたりするのに慣れているムラサキだが、その時、何かが頭に引っかかった。
口の中に毛が一本入ってしまった様な感じで、引っかかりが何かを考えていたムラサキはようやく脳みその片隅から答えを引っ張り出した。
「女神様?」
「はい、すっかりお世話になっちゃってます。」
半信半疑での問いかけに返ってきた答えに、ムラサキは再起動が必要なレベルで硬直したのだった。
ようやく女神様本人出せました^^
この近辺、先にネタが浮かんである程度は書いていたものの
ここまで話を進めるのに時間がかかりました
本編完結後、モンスター図鑑を付ける予定です