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紫の中の人  作者: 春猫
3/12

紫の人

ずっと薄暗いトコにいると普通の灯りでも目に痛いのと同レベルです精○孔

元の痛覚レベルがかなり低いと思って下さい


 「紫の中の人が来たぞ!」

 「うわぁ、あれが紫の悪魔か!」

 「ばっ、聞こえてたらヤバいぞ!」

 「目を合わすな。精○孔食らうぞ?」


 何やらプレイヤーキャラたちがざわめく中、血を見ると暴走する、巨漢の何故か「様」を付けてしまうキャラクターの様な微笑を浮かべながら歩く紫尽くめの魔導師。


 「いつ俺が鬼畜な真似をしたっていうんだ? 自業自得じゃねーの?」

 内心、周囲の様子に不満を漏らしつつも、貼り付けた笑顔のまま歩く。


 フィードバック系の技術者である彼は、管理者権限として自己及び他者のフィードバック係数を何時でもいじる事が出来る。

 悪質なプレイヤーへの緊急対処として彼が良く用いる手段が、この世界では一般的な腕力による鎮圧や、導入されている魔術によるものではなく、このフィードバック係数改変による痛覚レベルの増大である。


 「痛み」を現実に比べてかなり抑えているこの世界において、一気に数十倍に跳ね上げるという措置。

 非力な非直接攻撃系プレイヤーの軽いビンタでも前後不覚に陥り、着ている鎧や服が肌に擦れるだけで悶絶する(と言われている)。

 

 実際にその措置を受けた者の数は少ないものの、乱暴な態度を取っていた悪質プレイヤーが子供の様に泣き叫ぶ状態を見た他のプレイヤーなどから話が広まり、ある意味恐怖の象徴として知れ渡っているのだ。


 「ま、おおむね平和かね。平和がなにより。」


 知り合いのプレイヤーパーティに付き添ってフィードバック系の検証をし終え(お礼としてレアアイテムを譲渡している)、彼らと別れて同僚との食事の前の時間をこうしてぶらついて潰している。

 

 本来、彼ら管理者サイドのキャラクターは非魔法系キャラであっても転移魔法が自在に使え、目的地がどんなに離れていようが歩く必要は全く無い。

 

 ・・・が、まあ歩いてみないと分からない事も多いし、彼自身、こうしてこの世界を歩く事が好きであった。

 思わず匿名掲示板で愚痴ってしまうほど大変ではあったが、それでも、いや、それ故に、彼はこの世界が好きなのだ。


 内部の人間として、割とプレイヤーと接する機会も多い上に、特徴的な外見から一目で彼だと分かり、会釈していく人間や挨拶の声をかけてくる人間も居る。

 相手によっては多少の会話を行いながらも、さらに足を進める。

 そんな中、「お、ムラサキさんじゃん、お久しぶり!」と声をかけてきた相手を見て、彼の貼り付いた笑みが少し引きつる。

 和服を着た平均的な身長の男とそれを囲むロリっ子たちという、ある種の趣味を持つ人間には羨望の眼差しで見られる集団である。

 別にリアルの知り合いという訳ではない。

 「ムラサキ」と呼んだのも「紫の中の人」の略称であって、彼の本名がそうだと知っての行為でもない。

 

 では、何故引きつったのか、それはこの集団の性質を彼が「よーく」知っているからなのだ・・・。




 このポルポル、他のゲームとは完全に異なるパラメータがひとつある。

 それは「珍力」と呼ばれる数字だ。

 

 設定上キャラクターはこの世界の特異点として、非常識な事象を巻き起こし易い事になっているが、その発生頻度を司るのがこの珍力である。

 幸運・不運を司るラックは別に設定されていて、そちらはある程度カルマに連動して動くの対して、この珍力は一見無意味に見えるため、このパラメータに数値をさく人間は少なかった。


 しかしながら、ある程度攻略が進んでくると、この数値が実は各種イベントやモンスターの登場種別などのイレギュラー発生率に関わり、レアクラスへの転職イベント発生条件となるケースも珍しくない事が明らかになってきたのである。

 古参の中には新規アカウントを獲得して、キャラクターを一から作り直す者まで現れた。

 

 そんな珍力の高いキャラクターが集まって出来た小規模ギルドが、このルーテルである。

 ギルドの旗は丸で囲った「珍」の字「まるちん」それゆえの「ルーテル」つまりは駄洒落である。


 ギルドマスターはリアルではネオニートとも資産家の孫のごく潰しとも言われるゲーム廃人のブン・チン。

 珍力特化が分かり易い名前の駄洒落好きな男だ。

 キャラの性質から言ってギルドメンバーはネタキャラが多い。

 ロリ4:男の娘3:性別外見不詳2:一応普通の外見1というメンバー構成から見てもそれは分かる。

 ブン・チンの場合、外見は一見普通だが、落語家風の和服を着て、扇子型の魔術発動機を愛用している等、やはり曲者である。

 駄洒落を呪文発動に転換し、寒いギャグでモンスターを凍らせる(レアスキルである、実は・・・)。


 冗談の様な戦いぶりに運営サイドからも注目を集めている。

 「布団が吹っ飛んだ」で凍らせられたエリアボスの姿に、そのモンスターデザインを担当したスタッフが涙を流し、横では同僚が爆笑していた、などという事もあった。


 既存の他のオンラインゲーム等のゲーム経験の長い者が多く、そのふざけたプレイぶりに反して他者への人当たりやマナーは良いため呆れられはしても忌避される事は無い。


 「やっぱ、みんなが笑えないゲームは廃れてくからねぇ。」

 「そうそう、周りがしかめっ面してる中で宴会ハンティングやっても楽しくないし。」

 「今度はどんなネタ装備を試してみるかなぁ。」

 「だから『ダンス技能』みんなで取って、白鳥の湖でもやろうよ!」

 「見たくねぇ、ブン・チンのチュチュ姿www。」

 「男の娘組もバレエの衣装は厳しいよねぇ、股間ぴっちりだし・・・。」

 「ロリ組で魔法少女コスプレは?」

 「中の人想像すると萎えるwwww。」

 「中の人といえば、この間、赤い中の人見たけど。」

 「あの人も俺らの同類でしょwwww、なんで兜もヘルメットも被ってないのに角だけ付けてるんだよw。」

 「『赤いのに角が付いてないのは許せないだろ!』とか力説してたよ?」

 「3倍の速さで赤く輝いてる間動ける呪文とか、あの人の遭遇イベントで貰えたけど、MP消費多過ぎて使えねぇwww。」

 

 これがギルドトップ同士の会話である。


 ナンバー1が先ほどのブン・チン。

 ナンバー2がロリランドセル装備のニパ・ドス。

 ナンバー3が眼帯付けた男の娘のテン・ドン。

 ナンバー4はその名前のせいで欠番となっている、噂ではナンバー1と同じ苗字で「フリ」という名前だったらしい。

 ナンバー5がテンとは逆の目に眼帯を付けた双子のロリっ子カツ・ドン。


 他に中堅が10人ほどと、メインキャラを別に持つ人間のサブキャラが20人ほど加盟している。


 「で、どこ行くんです?」

 「緑の奴のお奨めの屋台があるらしくてな。そこに行くまでの時間潰しだよ。」

 「はー、あの人のお奨めっすか? そりゃ期待できそうっすねぇ。」

 「屋台っていうと焼き鳥ですかぁ? ケバブも美味しいですよねぇ、ジュルリ。」

 「奢らんぞ?」

 「ぶう、ムラサキはけちんぼさんなのです。」

 「何が悲しゅうて中身ニートの男の娘に飯を奢らにゃならんのだ。」

 「はい、はーい! 中身可愛い女の子でーす! 奢って!」

 「で、結局、何の屋台なんです?」

 「あー、何でもラーメンらしい。」


 「「「「ラーメン!!!!」」」」


 「・・・まさか、モンスターの骨でスープを!?」

 「その、まさかだと・・・。」

 「うわぁ、馬鹿だ、馬鹿がいた。」

 「いいねぇ、実に男らしい馬鹿だ。」

 「うちのギルドの名誉会員にしてもいいかもね。」


 ラーメンという事への好意だけでなく、加工素材として高く売れる骨をスープの為に使ってしまう行為に彼らは嬉しげに言葉を重ねる。


 「「「「漢だ(ね)(な)!」」」」



 「という訳で私らも食べに行く事にしましたんで。」

 「厄介な奴らに見つかっちまったなぁ・・・。」


 外見年齢相応にはしゃいで見せるロリたちに囲まれ、うんざりしつつ更に歩みを進める彼に内部連絡用のコールが入ったのはその時であった。


ナンバー4は実際には受験でセミリタイアした高校生でフリ・テンと言います

本文のネタはあくまで「噂」です

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