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「このケーキを作ったのは君の母君か」
「はい。米酒のケーキが美味しかったのでアップルワインでも作れないかと母が試したんです。恐らくカルヴァドスのケーキは、もっと日持ちがするかと」
「なるほど君の母君は菓子作りに長けているなぁ?他にも何か作るのか?」
「パンくらいでしょうか?デニッシュ系が多かったかと。でも作り出したのは最近なんです。恐らく私達子供が独り立ちして自由な時間が増えたから」
「そうか。母がすっかりアップルワインケーキを気に入ったよ。それに引き出物のアップルワイン、ラベルがこれだろう?」
そう引き出物の子爵家のアップルワインのラベルはマティアス氏が記念に描いてくれた特別製だ。
「アップルワインは長く置けないがカルヴァドスは違う。しかもこのカルヴァドスは君と王子の産まれた年の物だ。全く君の伯父上はセンスが良いな。カルヴァドスは高位貴族の中でもお得意様にしか配ってないぞ」
「恐らく北の陛下が火山の国の件で私を色々助けて下さったので、そのお礼だと思います。それにあの量の魔石を頂いてますので、まだまだお返ししても足りていません」
「ああ魔石ね。ノースポールの方では潮干狩り並みに掘れば魔石が出るから、そんなに有り難がらなくてもいいのに」
「でもポーラベアだけじゃなくて、ポーラペンギンが恐ろしいって聞きました」
「確かにペンギンね〜」
「だが彼らも対処法を知っていれば、そんなに危険な事はないよ」
「対処法って?」
「ペンギンは氷の穴から突然襲ってくるから穴を全部塞ぐだけだ」
「でも魔石を掘る穴から出てくるって」
「掘る人とペンギンを捕まえる人とチームを組むんだよ」
「ああペンギンは一羽とは限らないわ。アイツらは大体群れだし。だから3〜4人でチームを組むといいわね。そうすれば大丈夫よ。あとは大事なのは穴の大きさ…「あの!もう大丈夫です。多分、今回、魔石を掘りには行かないと思うので」
「そうか〜それもそうだな。まあまた欲しくなったらいつでも言ってよ」
いいのか?!あんな貴重な物を、そんなお手軽な感じで受けちゃって。ザック殿下も目を丸くしている。
「そんなに気になるなら、やはり自分達で掘りに来るといいよ」
そんな事にならないように祈ってます。
「その結婚指輪、弟が作ったのかしら?あの子の気配がするわ」
「はい。そうです」
「まあピンクで可愛いわ。あの子はそう言えばピンクが好きだったわね」
「私のはエメラルドグリーンなのに、君の方はピンクだったのはそれが理由か?」
「それもあるだろうけど、きっと君の周りは赤が集まるだろうと考えたんじゃないかな?」
「確かにそうかもしれません。君にはずっと赤か青い物が贈られていたな」
「どれも高貴な方々からの高価な贈り物ばかりで私は西以外に足を向けて眠れません」
「ハハハそうか。そう言えば西の大陸の王族の直系は銀髪に紫の瞳だ。君達の知り合いで誰かを思い出さないか?」
その言葉に、私より先に顔を上げたのはザック殿下だ。
「王太子妃の実家の公爵家はあちらに縁があるのだろうな。あの国もうち同様王族の人数が多い。まあうちとは理由は違うが、向こうはかなり恋愛が自由な傾向にあって、しかも口八丁、手八丁でくるらしいから、君らがもし訪れるなら気を付けるといいよ」
それで西の国の外交官はエリオット様や姉の夫だったんだ!
納得。だったら西には行くまい!そう決めたリリベルだった。
帰る時も女神様にギュッと抱き締められた。
きっと妹神の面影を重ねているのかな。また、あれらの三つを南の王都の外に持って行けば会えるのだろうか?
「多分、直ぐは無理だろうな。今回でかなりの労力を使ったんだよ。三柱ともね。神と言えど限界はある。しかも他所の神の土地だ。けっこう無理したんだよ」
そうか。残念だ。
それにしてもウサギのヌイグルミがピンクを好きだったのは神様の影響だったのね。
だったらきっとネーミングセンスも無かっただろう。
私達にくださった指輪もペンも神様の遊び心満載だった。
やっぱり伯父に辺境伯のお子さんの名付けを頼んだのは正解だったな。
お城に戻った後は、リズベット王女に連れられてカメさんを見に行った。カメさんは王城の中央にある大きな庭園の池で野菜を食べていた。確か2匹とも80歳くらいだと聞いていたけど1メートルはかなりデカい。
「今は暖かいけど、秋頃ここに温室ができるの」
「カメを世話しているのはリズなんだよ。南に頼んだのは私なんだが」
「ん?南の王女殿下がポーラベアを頼んだのでは?」
「まあ彼女の結婚祝いを理由に相互交換したみたいなもんだよ。さすがに生きたポーラベアは無理だし北極圏にいる動物は魔物の影響が残っていて危険な生物が多いんだ」
きっと魔石掘りはペンギンだけが要注意なんじゃないんだな。
西大陸同様、絶対行かない!とリリベルは思った。




