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子爵令嬢から王子妃になりました!でも王族を抜ける予定です!多分?  作者: 朱井笑美


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 北の国の王都は建物も景色も西と変わりない気がする。しかし冬は王都でも雪が少し積もるらしい。

 しばらく道を行くと西の大神殿と同じくらいの規模の大きな神殿が見えてきた。


 西と違って建物が青く見える。

 西の神殿は白い大理石で建てられているけど北の神殿は…クリスタルだ!晴れているから青く見えるんだ!凄い!


「とても美しい建物ですね」

 ザック殿下も感動したようだ。思わず漏れ出た感想のように仰った。

「そうだろう。まあ地元では氷の神殿とか言われているけどね。確かに冬に見ると寒々しいよ」

 今は春で良かった。


 神殿に到着して中に入ると騎士の格好をした一人の白銀の髪の女性に出迎えられた。

「紹介するよ。私の姉で母を守る唯一の女性騎士だ。君達の国で言うところの聖騎士みたいなものかな」

「ようこそ、いらっしゃい。母に会いに来てくれたのね。歓迎するわ」

 と言って出迎えて下さった女性騎士様は陛下よりも若く見える。

 リリベルもザック殿下と一緒にスカートを摘み腰を落としてご挨拶する。


「神殿は時の進み方が少し違うんだ。だから私の父もまだ健在だよ。恐らく今なら裏庭だな。どちらに先に会いたいかな?」

 リリベルは思わぬ提案に目を見張る。

 当然、先にご挨拶すべきなのは女神様の方だろう。

 だけど“陛下の父君”という事は爺様の叔父だ。まさかまだご健在だなんて!


 リリベルの様子に気付いた陛下の姉君が仰った。

「その様子だと先に父に会いたいようね?いいわ。案内してあげる」

 神殿の奥の方に進んで行って、幾つか扉を開けて最奥の扉を開けると芝生が生い茂った庭に出た。

 そこにある花壇で麦わら帽子にタンクトップの男性が青薔薇の剪定をしていた。


「爺様ぁ?!」思わずリリベルは叫んでしまった。

 振り向いた男性は爺様よりもお年を召した感じだった。少し腰も曲がっている。

「おや?お客さんかい?珍すなぁ」

「父上、西の国からお見えになったお客様だ。母上に会いに来たんだよ」

「西の?そこの金髪の令嬢さ兄の縁者かい?…ん?(まなぐ)がエメラルドグリーンだ」


 麦わら帽子の陛下の父君がどんどんリリベルに近付いて来て…ドアップだ!と思った瞬間、帽子のつばがリリベルの額に突き刺さる。

「父上!近付き過ぎだ。相手は令嬢だぞ」

「ほんに、ほんに老眼だはんで仕方ね。だが母っちゃに叱らぃるな。母っちゃは嫉妬深いはんで」

 陛下の父君はバラの剪定が終わったのかハサミを道具箱に置いて中に入って行ってしまった。なんか雰囲気も動作も全部、うちの爺様にそっくりなんだけど…。


 それにドアップになった時、彼の瞳もエメラルドグリーンだったのが分かった。

「なあ君の爺様がいるのかと思っちゃったよ」

「ハハハ似てるだろう?」

 でも装いまで似なくてもって思う。

 何でなんだろう?


「それは私にも分からないな。」

 そうなんだ…北の七不思議って事で。

「えっ?」って陛下は仰ったが、どうせ陛下以外は聞いていない。

 気を取り直して、再び中に戻って女神様のいらっしゃるお部屋に向かう。


 大きな扉の前で陛下の姉君が「母上、西のお客様をお連れしましたよ」と扉をノックすると「入って」と声がして扉が開くと中央の椅子に床に付くほど長い白銀の髪をした女性が座っており、左右に立っている神官様と思われる方々と、侍女らしき方々がリリちゃん人形を振って出迎えてくれた。


 まさか!ここでまで!

 リリベルは感動と言うより驚きで声が出なかったが「身に余る歓迎をありがとうございます。妻は感動で声が出ないようです」とザック殿下が一歩前に出て礼をする。


 リリベルも慌ててザック殿下に倣って礼をとると「まあ!喜んでくれたのね?!良かったわ」と女神様が仰った。隣で陛下も陛下の姉君も絶対思ってないだろうに「いや〜大成功ですねぇ」と拍手している。

 一体何の茶番だ…。

 だがそれに付き合うのが王族なんだろう。


 やっぱり我慢大会だなと思っていると「近くに」と女神様がリリベルに手招きする。

 リリベルが女神様の方に向かって進むと、女神様の椅子の後ろにコタツがあって、先程、お会いした陛下の父君がミカンを剥いていた。

 思わず動きを止めて見てしまうが、何とか正気に戻って再び女神様の元に進む。

 何て苦しいの?!


 でも先に父君に会っておいて良かった。じゃないと驚きで叫んでいたかもしれない。

「ほぅ、耐えたか」

 陛下の奴!知ってたな…何の罠だ?


 女神様の前まで来ると「ああ南の国でも会ったわね。あの時はありがとう」と仰った。でもリリベルが返答するより早く「抱きしめてもいい?」て聞かれたので黙って頷く。

 女神様が立ち上がってリリベルを抱き締める。だがリリベルは後ろのコタツの爺さんが気になって仕方がない。


 いきなり爺さんがミカンを詰まらせた!

「ゴホゴホッ」

「爺様!」リリベルはとっさに女神様を振り払って陛下の父君に駆け寄って背中を叩く。爺さんの口からミカンが飛び出てきた。丸のまま飲み込んだのか!


「ちょっと!あだ、まだ丸のまま食って!前もやったべな!」

 女神様が怒っている、とっさに女神様を振り払ってしまったのだけど大丈夫だっただろうか?


「父上、ミカンを剥いたらちゃんと小さく割らないと」

 陛下も近寄って来て仰る。

「あ〜父上…またぁ?」陛下の姉君も呆れてらっしゃる。


「わっこんな所に陛下の父君が居たんだ…」

 そう、そっちからは近付かないと見えないよね?大変な苦行だったんだよ殿下〜後でたくさん愚痴りたい!

 それよりも女神様!女神様は大丈夫なの?


「主人が驚かせてしまってゴメンなさいね。せっかくの感動の再会だったのに」

「私こそ、申し訳ありませんでした。女神様を…「いいのよ。あなたのお祖父様に似てるんでしょう?最近、青薔薇を世話してくれているわね」

「青薔薇はこれまで子爵領には植えられていなかったんだよ。きっと王子達が足取りを知られたくなかったんだな」

 

 でも子爵領にいるのがバレバレだったんじゃないの?

「そうだな。暗黙の了解ってやつだな」

 “頭隠して尻隠さず”じゃなくて?

「ハハハッそうかもな」


「お前たち!何て事、話し合ってんのよ」

「ああ!ヤバい母上には聞かれるんだった」

「ったく!お前に心を読まれても平気だなんて。ほらっ移動してお茶にしましょう!あれ!そうあれよ西から送られて来たでしょう?アップルワインケーキ!あれが美味しかったわ」


 女神様がそう仰って皆で応接室に移動した。

 陛下の父君はコタツでうたた寝を始めてしまったので、そのまま侍女が付けられたようで、そこでお別れした。

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