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サオリは王都に入ってから、かなりスピードを落としたが、後ろを待たずドンドン走って行く。
リリベルは出来れば殿下を待ちたいのだが、サオリは聞いてくれる気配は全くなく足取り軽く進んで行く。
とうとう王城に到着してしまったが、サオリは顔パスなのか門の衛兵に止められる事もなく王城内にズンズン入って行ってしまった。わーマジか?!
「おやサオリ!やっぱす一人で先さ帰って来てまったが?せっかぐ皆でリリちゃん人形振って出迎えるべど思ってあったのに」
向かった先では国王陛下が直々に待って下さっていたが‥‥
おい!リリちゃん人形って何だ?!
何だか聞き捨てならないワードを聞いたぞ!リリベルはサオリから降りて、とりあえず挨拶をする。
「国王陛下、北の国にお招きありがとうございます。私だけ先に着いてしまったのですが、リリちゃん人形って一体何ですか?」
と、聞くと同時に城の外から歓声が聞こえて来た。
何が起こったの?と門の方を見ているとザック殿下を取り巻いた北の騎士団が城に到着するところだった。
「なあ!国境の街と同じで、皆がすごく人形を振って出迎えてくれたんだけど」
とザック殿下が到着するなり仰った。
「あちゃー。主役の登場のタイミング逃すたが〜赤ぇ王子の人形も作っておぐべぎだったなぁ」
「だはんでな、しゃべったじゃありませんがぁ、あんた」
「んだよ。最初がらサオリは無理だはんで」
「んだんだ」
国王陛下の側に三人の物凄い美女が侍っているが、彼女達から出て来る言葉が本人達とミスマッチしていて違和感がスゴイ。
ザック殿下も目を丸くしていたが国王陛下の存在に気付き、素早くセノビックから降りて挨拶をする。
「この度は私達に素晴らしい婚約祝いをありがとうございました。また貴重なスネイプニルまで寄越して頂いて感謝しております」
「ああ。いいんだよ。母から君も乗れるようになったって聞いてね。都合が良いと思って送っちゃった。お陰ですごく早く来れただろう?まあ入ってよ」
と中に案内される。
「あの!サオリ達は?」
「ああ乗り捨てでいいよ。勝手に寝ぐらに帰るから」
「ええぇっ?」
リリベルは一応、サオリとセノビックにお礼を言って回復魔法をかけてからカバンに入れておいたバナナをあげておく。
2頭はご機嫌に去って行ったが、その様子を見ていた女性達が
「まあ!だはんで、あったらに懐いでらのねぇ」
「甘やかすてらのね」
「んだんだ」と言いながら陛下に続いて中に入る。
北でのスネイプニルの扱いって実は雑なのだろうか?と考えていると「そんな事は無いよ。でもアイツらはあまり懐いてこないでしょ?」と仰る。心読んだな?
だが「え?」とザック殿下と進みながら顔を見合わせる。
「セノビックは、かなり人懐っこい馬ですけど」
ザック殿下がそう言うと「セノビック?マスオのごど?」
「あの灰色の馬さ、そったハイカラな名前付げだの?」
「驚いだ!」
いや付けたのは兄だけど…。やっぱり扱い雑だと思う。
応接室に通されて、お茶とお菓子が出される。
「直ぐに部屋の準備が整いますので、しばらくお待ち下さい」
と執事らしき方に言われる。
「とりあえずお茶でも飲んで待っててよ。あ、彼女らは私の妻達だよ。子供達は後で紹介するね」
と陛下が仰るのでお茶を頂きながら尋ねる。
「陛下、リリちゃん人形とは何ですか?」
「もしかして街の皆が振っていたビーバーちゃんの事ですか?」
「そうそう皆が振っていたのがリリちゃん人形だよ。ビーバーちゃんに似てるけど、ちゃんとリニューアルしたよ。ビーバーちゃんよりも、ちょっと…うん。いや何でも無い」
おいっ!
「陛下、はっきりしゃべらねぇ方がいじゃ」
「おなごに体型の事は禁句だわ」
「んだんだ」
言ってるし!絶対、太らせただろ!
ザック殿下が横で苦しみだした。もう少しで笑いの沸点超えそうだ。
「ああ!だが瞳はエメラルドにしたんだよ。ビーバーちゃんは量産したペリドットだったけど、リリちゃんは貴重なエメラルドにしたんだよ!」
それが街中の人が持てるほど、沢山あるのね。
「いや〜ビーバーちゃんの人気が今でも高いんだよ。だけど同じ物じゃあ、つまらないだろ?」
だからって私にしなくても!!
「いや!違うよっ」
何がだよ?リリベルがジト目で陛下を見つめると
「母がね。そう母がリリちゃん欲しいって」
「ブホッ」
とうとうザック殿下の沸点が決壊した。横でお腹を抱えている。
「まあ!赤ぇ王子笑ってらわ。めんけぇわ」
「ホンニめんこい」
「んだんだ」
そこで執事が「お部屋が整いましたので案内します」と言ったので、一旦、部屋に下がって休憩する事になった。
夕飯までごゆっくり〜と言われたけど、部屋に入ってビックリした。
リリちゃん人形が飾ってあったのはまだしも、赤い石で部屋中、ハートのデコレーションがされていた。
準備ってコレだったの?
こんなのユックリできるかいっ!?




