34
建物は地下1階と上は5階建てで別館もあり、別館はテーマを設けて本を展示するイベントスペースなのだそうだ。
最上階の5階は禁書を所蔵しているので一般人は立ち入り禁止で、地下では古い本や劣化した本の修復と昔の言語の翻訳などを行なっているらしい。ここは一部、見学できるが予約制との事。
2階までの部分が貸し出し可能な本で、3階から上の階の本は館内だけで読む事が許可されているそうだ。
各階に読書スペースがあるが飲食ができる場所は1階と1階にある絵本コーナーだけになる。
もし本を汚したり破損した場合は直ぐに係に申し出なければならない。そうすればお咎めは無いそうだが、黙って逃げれば二度とこの図書館を利用できなくなるという厳しい罰がある。
もちろん借りた本を無くした場合も同様だ。
そして2階から上での私語は最低限で小声でのみとの事だ。
私達は神話と次に訪れる南と火山の国など、外国の本のコーナーを希望していたので、そちらに案内してもらう。
どのコーナーも膨大な本があって選ぶのも大変そうだ。
マックス殿下は外国コーナーの外来生物の図鑑が気になったみたいで食い入るようにご覧になっていた。
「もし気になる本があれば借りてはあげられないけど、書店で購入する事はできるよ。ただ3、4階の本は入手困難な本も多いから難しいけどね」
「わは動物図鑑が欲すぃだ。色んな国の珍しぇ動物が載ってるの」
「では帰りに大きな書店にも寄って帰りましょう」
外国の本がある南の蔵書コーナーには、南の探検家の本も揃っていた。
「あ、これ南の国でしか出版されていない本でしょう?」
“北国の生活譚”もちゃんとあった。
「南との国交を再会させた時に、まず南の国の本を充実させたんだよ。君の姉君や宰相補佐官の姪っ子達が、かなり頑張ってくれた」
「南の王太子殿下は“北国の生活譚”を読んで北の国に憧れたんだって」
「おい達がジャングルさ見てぇのと同ずだなぁ」
「そうかそうか。互いに無い物ねだりなんだな」
それから私達は児童文学書コーナーに行っていた王女殿下と合流して、王都最大の書店に行った。
この書店も図書館並みに大きかった。
「ここは古書以外の希望する全ての本が買えるという店だよ。決まっている本があればコンシェルジュに相談すると、直ぐにある場所を教えてくれるし取り寄せもしてくれる。それに急ぐなら代替えの本も提案してくれるんだ」
「すごい大きいな。読書スペースもあるんだな?本を購入して直ぐに読むのか?」
「試し読みもできるようになっているんだ。思った本と違ったら大変だろ。本は庶民には決して安い物ではないしな」
「それは有り難いな。図書館もだが、本屋に勤めるにも膨大な本の知識が要るな」
「これまでの神の司書は図書館勤務の者や書店の店員が選ばれることもあったよ。私も学生の頃、ここでコンシェルジュの補佐のアルバイトをした事がある。依頼の本を探しに行ったり取りに行ったり配達したりと、ほとんど使いっ走りなんだけど勉強になったし楽しかったよ。ここのコンシェルジュは皆、補佐も経験している」
「貴族でもそんな仕事を?」
「本の前では貴族も平民も関係ないんだよ」
「南の盆踊りと同じだ!」
「伯父様、お勧めの本も紹介してくれますか?」
「ああ、もちろんだよ。あとこの掲示板は必見だ。これから出る新刊の案内とジャンル別の人気ランキングの他に店員のイチオシ本の紹介も載せてあるんだ」
そう言われて小説ランキングを見ると、人気ランキングのわりと上位に姉の小説もあったが、それは無視して西の皆にお土産になりそうな小説を探す。
「リリベル妃、今は“逆断罪もの”が流行っているんだよ」
リリベルと手を繋いでいる王女殿下がそう仰った。
「逆断罪ものですか?」
「そう。これまでは西と同じで“学園もの”という身分の低い女性が学園でのし上がるサクセスストーリーが流行っていたのだけど、今はねぇ私の乳母や侍女達も言っていたのだけど、身の程知らずの成り上がり令嬢を高位貴族の令嬢が正論で逆にやり返す内容が、爽快で愉快なんですって」
…もしかして身の程知らずの身分の低い令嬢って、私のこと…?
何だか背筋が寒くなってくる。
「君は違うよ。身の程知らずでは無いし、断罪されるような事もしていない」
ザック殿下が反対の手を握って言ってくれる。
「身の程知らずの令嬢に入れ込んだ王子や高位貴族の令息も一緒に断罪されてるの」
「!」
リリベルの手を握るザック殿下の手にもなぜか力が入る。
「フフフッ。でも二人は関係ないね。だってリリベル妃は恋人を助け出す白馬の王子様だもんね?」
はいっ?何の話だそれ?
それが分かるのも帰国してしばらく経ってからの事だ。




