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晩餐のメインディッシュはやはりオオトカゲだった。
今回はカツレツにしてあって、お好みで色んなソースをかけて食べれるようになっていた。
トカゲ実食の経験豊富なザック殿下はピクルスが効いたタルタルソースが気に入ったようで、いつものように気にせず食べている。
マックス殿下をチラッと見ると、ザック殿下の様子を見て自分もタルタルソースをかけて口に入れたが一味足りないようで、さらにレモンを絞っていた。
うんなかなかグルメな人だ。さすがは王子殿下。
でも言っておかないとだろう。
「マックス殿下、そちらのカツレツはお気に召しましたか?」
リリベルの一言で、東の王族達はカトラリーを一旦、置いてナプキンを手に持った。
ザック殿下の目が「やるのか?」と聞いてくるので頷くと、ザック殿下もナプキンを広げる。
リコピンの時は広範囲に被害が出た。
さてマックス殿下はどうかな?
「ああ。淡白な味だが歯応えがあって濃厚なソースや酸味と合うな」
以前のザック殿下と同じような事を言っている。
「そうですか。そのお肉はあの図鑑で見たオオトカゲですよ」
皆が一斉にナプキンを広げる。
「おぉっ!あのピンク色の?!わはペンギンかと思ったが。これは肉質がノースポールペンギンと似ているぞ!」
「ペンギンッ!?」
王女殿下が悲鳴に近い声を上げた。
「ノースポールペンギン!ポーラペンギンだな?とても恐ろしい肉食ペンギンだろう?」
第二王子殿下が仰る。
さすが本好きの博識な東の王子殿下だ。
「オオトカゲはペンギンに似てるのか…」
だが途中から声が震えている。
「んだ。ヤツらも白身でコリコリしてるだびょん」
「イヤーッ!!」王女殿下が叫んだ。
「僕も…済みません食欲が…」
第二王子殿下もカトラリーを置いた。
国王陛下ご夫妻も青い顔をしている。
まさか…ペンギンがトカゲに勝ったのか?!
「もすや…ペンギンさ食べる話は東では禁句であったが?」
「いいえ。マックス王子殿下、どうかお気になさらず」
「文化の違いは理解しております。我々のトカゲを食べる文化に嫌悪する人もおりますから。ですが東の海に生息するイースターペンギンはポーラペンギンと違って、とても人懐っこく可愛いペンギンなのです」
「可愛いペンギン?!」
マックス殿下は「信じられない!」という様子で仰る。
「左様でございます。体長30センチほどで、陸ではヨチヨチと歩き小魚やエビを主食とする大人しいペンギンなのです」
「体長30センチ…色は白と黒が?」
「はい。ですがオスにはオウムのような黄色の飾り羽根が頭にありまして、姿も可愛いのです」
「おおっそんなめんけぇペンギンがっ!父っちゃにしゃべったら欲すがるな」
「たっ食べちゃうの?」
王女殿下が「あんたは鬼か?」という形相でマックス殿下を見る。
「いっいや違ぇだ!父は国の動物園さ色んな動物集めるの好きだはんで」
「動物園?」
「んだ。うちさ年中、寒いだはんで父っちゃが動物園作っで色んな動物さ国民に見せでるだ」
「私達も驚いたのですが、北にはそういう生きた動物や植物をたくさん集めて展示して、入場料を払えば誰もが見ることができる動植物園というものがありました」
ザック殿下が説明すると、東の王族の皆様は驚いておられた。
そう西も東にも植物園や博物館はあっても生きた動物を飼育して展示している動物園は無い。
東西は気候も良いので動物園があっても良さそうだ。
特に東は知識と技術の国なのだから絶対にできそうだが実は無い。
展示に向く珍しい動物が南北にしかいないという理由もあるだろうが、そういう発想もなかったのだろう。
「最近は南からリクガメが来ただ」
「まあ!東のジャングルにもリクガメはいるけど違うのかしら?」
そこからは東と北の珍しい動物の話になった。
残念ながら私もザック殿下も会話に加われない。西には珍しい動物は一切いないからだ。
強いて言うなら子爵領の野生馬くらいだ。
二人でうんうんと話を聞くだけだったけど、奇妙な動物の話ばかりで、たまに西にはいなくて良かったなと思える動物もいたりした。
ちなみにオオトカゲがピンク色なのは発情期だけなのだそうだ。発情期になるとピンクに発色して雌に自分はここだとアピールするらしい。普段は落ち着いた茶色がかったエンジ色だそうで、エンジ色も変だがピンクよりマシかと少し安心した。
雄は大きく成長するまでピンク色にはならないらしいので、ジャングルで目立っても天敵がいないそうだが、ここに食べている人間がいるからね!




