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東の神様はサオリに何やら話掛けている。
その間にリリベルは「東の国に入りました。今日は東の王家の別荘に世話になります」と伝令鳥を王太子に送っておいた。
「ちょっとコレ持ってて」
神様はリリちゃん人形をリリベルに渡すと「ヨイショ」っとリリベルの後ろに乗って来た。
「じゃあ行くよ。君はコレを大事に持っててね」
そう言って神様はサオリを走らせる。
2頭もそれに続いて走る。
街道から少し外れてしばらく行くと大きな屋敷が見えてきた。
あれが王家の別荘だろうか?さすが王家の所有する建物だ。屋敷というより神殿の建物に近く、樹々に囲まれ神秘的な雰囲気を醸し出している。
門を通り抜けて屋敷の入口付近まで行くと屋敷の使用人達が出迎えてくれた。
サオリが止まると「じゃあ私は先に中に戻っているから。あ、コレ返して」と神様はリリちゃん人形を抱えて、さっさと中に入って行ってしまった。
我々が唖然としていると「ようこそ、西の第三王子殿下、妃殿下。そして北の王子殿下」と屋敷の執事らしき方が仰る。
神様の事は一切、存在が無かったかのような口ぶりだ。
使用人達のスルー機能が素晴らしく恐ろしい。
リリベル達は白馬を案内された厩舎に入れてから屋内に入る。
「今日はお疲れでしょうから直ぐにお部屋にご案内致します。お風呂の準備はできております。軽食やお茶をご希望でしたらいつでもお呼び下さい」と
執事らしき方は部屋に案内した後、そう言って直ぐに下がって行った。
さすが王家の別荘の使用人だ。隙もないし無駄もないがスマートだ。それに知的な雰囲気の漂う紳士だ。
お風呂から上がるとザック殿下が「軽食はいいのか?」って聞いてくれていたような気がするが、リリベルは恐らく返事もできずに寝落ちしたのだろう。
だから翌朝は少し早めに目覚めた。
リリベルはまだ眠る夫を残してベッドを出ると伸びをする。
「たっぷり寝た。すごく快調だ」
昨日はサオリ達にけっこう無理をさせた。それなのに十分な世話をできずに寝てしまったから早く彼らを見に行かないと!と着替えをサッと済ませて厩舎に向かう。
「あれっ神様?おはようございます」
厩舎に着くと神様がサオリと話をしていた。
「やあ、おはよう。馬達は皆、元気だよ」
「神様が診て下さったのですか?」
「うん。それもあるけど彼らから色々話を聞いていたんだ」
もしかして北の姉神様の事だろうか?
「彼女がね、探してくれたんだ」
ん?何をだろう?リリベルが疑問に思っていると「私の娘の痕跡だよ。娘はやはり西の山に降り立ったんだ」
私の娘…ペガサスの事か?!リリベルは目を見開いた。
「神様、確かに子爵領で助けた白馬がペガサスだといいと願っておりました。ですが後で思ったんです。怪我をしたペガサスがそんな遠くまで飛べる事ができたのか?って」
「君はスネイプニルの脚力が普通ではない事を知っているだろう?ペガサスだって飛べるだけではない。私の娘は恐らくドラゴンに恐怖して必死に逃げたんだ。彼女の翼は一つの羽ばたきで万里を駆ける」
「えっ」
「もちろん本気で飛べばだよ」本気で逃げて来たんだ!
「君らの森の白馬はちゃんと私の娘の子孫だよ」
「ほぼ…スネイプニルに寄っているのに?」
「それは仕方がない。北の王子が度々、スネイプニルで逃げて来たんだろう?」
そういう事か。
「私の娘は本当に臆病な子だったんだよ。少し考えればドラゴンが襲ってくるなんて有り得ないと分かるはずだ。でもきっと怖くて、しばらく東に戻れなかったんだ」
戻る前にスネイプニルに出会っちゃったって事?
「だけど娘を不幸な形で失ってなくて良かったよ。本当にドジな娘だなぁ」
神様は口の端に笑みを浮かべ、サオリにバナナをあげて屋内に戻って行かれた。
神様が健康には問題ないと仰ったので、リリベルは厩舎の掃除をした後、サオリのブラッシングをしているとザック殿下とマックス殿下も出てらっしゃった。
「おはよう早いな」
「おはようございます。昨晩はぐっすり眠れましたから」と言うと「それは良がったべな」とマックス殿下が意味深にザック殿下を見る。
その視線に気付いたザック殿下が「俺が毎日寝かせてないみたいに言うなよ」と返すと「リリちゃんは毎日YESだべが?そったらYES、NO枕要らねぇはずだべな」と言いながらマラサダの方へ向かって行かれた。
…朝からする話かっ!!




