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「そったらに短時間でお気付ぎになるなんて。さすがサオリさ懐がれでるだげあるすね」
厩番はそう仰った。
「スネイプニルに主人に選ばれる条件か〜何だろうな?」
「殿下、あちらで草を食んでいる馬は分かりますか?」
「あれはタナカだろう?ここにいるのがサオリだ。でも向こうにいる馬は分からないな。タナカやサオリは知っているからな。でもあの馬は初めて会うだろう?それ以外何か違いがあるか?」
厩番はニッコリ笑って仰った。
「あだ方はすでに馬達さ選ばぃる権利をお持ぢのようだ」
「ザック殿下、セノビックという例外はありますが。馬達は全頭真っ白です。どのように馬達をお見分けですか?」
「あ!そういう事か!」
「きっと主人に選ばれる人は馬を見分けられる。もしくは自分の馬だけは他の馬の中から見つける事ができる。そうではないですか?」
「そうです。それが出来る人と出来ない人がいる。その事に気付けても出来ない人には出来ないのです」
「だったら半年間も必要ないのではないか?」
「馬にも心があります。馬の方がその人を好きになれば主人になる事ができます。そのための時間です」
「なるほどな。リリ、俺は女神様から馬達を見分ける目を頂いたのだろうか?」
「さあ?それは分かりません。私も意識してやっている訳ではありませんし。最初は体格や雰囲気で見分けていたと思うんです。子爵領の馬達もそうやって見分けていましたから。でも今は知り合いのスネイプニルはすぐ分かる」
「そうか。きっと子爵…義父殿も見分けているよな?ラント兄上も」
「恐らく。子爵領に駐在された事のある聖騎士様が北のスネイプニルに乗れる事を考えれば、そうだと思えます」
「でも俺は治癒や回復は使えないから、やっぱり女神様に特別扱いしてもらったんだな」
「殿下も覚えてみますか?回復魔法、旅の間にやってみましょう?」
「そうだな。移動中は時間があるもんな」
私達は厩番に案内のお礼を言って城内に戻った。
お城の中庭まで戻ると陛下がカメさん達に野菜をあげていた。
「今日は陛下がご飯をあげてらっしゃるのですか?」
「やあ二人とも。リズは今、絵師を呼んでいてね。お見合い用の絵姿を描かせていて動けないんだよ」
そんなに本気なの?!軽い気持ちで請け負った事を少し後悔する。
「リリちゃん。気にする事はないよ。ダメだったら仕方ないさ。今はあの子はそれが楽しくて一生懸命なんだ」
「でも王女殿下も第一王子殿下の事をお気に召すか…」
「すごく聡明で良い子なんだろう?こっちでも彼の噂は聞くよ。だが彼は君の事が好きだったんじゃないか?だったらまだ君や赤い王子からは縁談は勧められたくないかもな」
それは…そうかもしれない。って何で知ってるの?
彼とは歳も5歳離れているのに。
「ハハハ。聞かなくても分かるさ。歳の差も関係ないよ。そうだエメラルドグリーンの瞳は我々の間では“魅惑色”とされているよ。北の王にはエメラルドグリーンの瞳の王は少ないんだ。しかも彼らの行った国政も統治の仕方も少し変わっていた。ビバリー女王のようにね。君らの一族でも思い当たる節はないかい?」
「では水色は…?」
「水色は“覇王色”だ。割と上に立つ者や単独で動く者が多いよ。まあ全てではないがね」
「北の女神様は妹神に13人ものお気に入りの男性を奪われたと仰ってました」
「ああ父神に3つの国に分けられ、それぞれ行き来が禁止されたのは派手な姉弟喧嘩が原因だ」
「もしかして我々の国の始まりの話ですか?そんな事を私達が聞いても?!」
「もう君らは薄々気付いていただろう?西の女神は美しい容貌と魅惑的なエメラルドグリーンの瞳で、彼女の意思に反して色々な人を虜にしていたんだ。我が母も妹に罪が無いことは分かっていた。だけど諍いは度々起きた。母だけじゃなく意中の人を奪われた人が何人もいて母も庇えなくなっていた。それで西の女神は部屋に閉じこもるようになったそうだ」
「だけど母の弟、東の神はそんな妹が哀れで何か出来ないかと色々、発明をしていたようだ。まあ役に立つ物が出来たのかは知らないがね」
確かに怪しいな。
「妹神が外に出なくなって随分経った。彼女の唯一の楽しみは人間の世界を時々、垣間見る事だった。彼女は真面目に日々頑張って生活する人を見て、自分の事も鼓舞していたんだ。優しい人だったそうだから時々、助けたりもしたんだろう。だがそんな中でも事件が起こったんだ。母が長年付き合った恋人が、自分は大丈夫だからと妹神に勝手に会いに行ったんだ」
「まさか、その人も?」
「ああ。あっさり母と別れて妹神に交際を申し込もうとしたんだ。母はショックを受けた。それで怒りの矛先をつい妹に向けてしまったんだ。弟神はもちろん妹を庇った。だけど色んな人を巻き込んで神々の世界を二分する程の大喧嘩に発展した」
「だから今の結末に?それでお互い会えないの?」
「まあそうだな」
西の女神様はそんなに自動で魅惑を垂れ流すような神様だったの?!
「彼女に魅了されない神もいたそうだよ。まあこう言っちゃなんだが母は男を見る目があまりなかったのかもな」
うわぁ〜!としか言いようがない。
「まあでも気にする事ないよ。これは神々の話で君まで同じではないよ。でもやっぱり子爵家に緑の瞳が多いのが不思議なんだよね。それとエメラルドグリーンの瞳は、恐らく何かに突出して秀でている事が多いよ。それは植物だったり料理だったりね。私の父は見ての通りだが、ビバリー女王は人を動かすのが上手かったんだ。人々の欲する物を瞬時に見抜いていた」
だとしたら、やはりリリベルの能力は聖女とは違うんじゃ?と思うのだけど。
まあ立場を都合良く使わせてもらったりしたけどさ。
「なあ知ってるか?クサガメとリクガメは緑の瞳だろう?この双方のカメはミズガメ、ウミガメとも番えるしイワガメ、スナガメとも番えるんだよ。ミズ、ウミとスナ、イワは絶対、番わないのにね。まあクサガメやリクガメは生息域がどちらのカメとも被るというのも理由だが、カメ界でも緑は人気だな」
ハハハハ〜と陛下は笑いながら去って行かれた。




