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子爵令嬢から王子妃になりました!でも王族を抜ける予定です!多分?  作者: 朱井笑美


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「逃亡のススメ」byユキチと書いてある。

 作者名は同じだが題名が違う。王妃様がお持ちだった冊子は「脱走のススメ」だった。


「中を拝見しても?」と聞くと彼は頷く。

 ページをめくると内容は似ている。だけど何だか行き先が違う…これ東への逃亡書だ!

 まさか!と思って顔を上げるとマックス殿下は「逃亡先は西だげでねんだ」と仰った。


 リリベルが驚いていると

「圧倒的に西さ近ぇはんで、西にしか逃げでねぇように思われるんだども、東さも逃げだ者がいるんだよ。おいはそれ確かめでゃ。もし青のルートで行ってけるなら、東までわも同行するじゃ」


「マックス殿下、これと似た冊子で“脱走のススメ”というのを私は見ました。同じユキチという方が書いてらっしゃるようですが」

「それは西への脱走方法が?西は簡単だはんで無ぇのだど思ってあったよ」

「ユキチに心当たりは?」

「似だような名前だばユーキチウスとユーキチノフは兄弟だ」


「それぞれが西と東に行った?」

「ん〜かもしれねな」

「もし青いルートで行ったら東にはどれぐらいで着きますか?」

「‥‥3日」

「貿易ルートをスネイプニルなら?」

「‥‥4いや5日くらいか」


「青のルートはタナカでも可能なんですか?」

「‥‥‥もう一頭オススメの馬がいる。マラサダだ」

 何だよマラサダって…。

 やっぱり危険で険しいルートなんじゃん!それにタナカが基準って分からん…。


「赤さルートはマジでヤベェじゃ」

 それは知ってる。それに、そもそもルートでもない。

 ただの直線だ。


 とりあえずマックス殿下と別れて王城の庭に出ると、リズベット王女がベンチに座って何かを見ていた。近付いてみると先日訪れた劇のパンフレットをご覧になっていた。

「こんにちは、リズベット王女様」と声を掛けると「リリちゃん、今日は一人なのね?」と仰った。


「アイザック殿下は王妃様方のお茶会に呼ばれたんです」

「お母様方の?赤ぇ王子、気に入ってらねぇ」

「王女殿下は先日の劇がお気に召したのですか?」

「うん。王子と結婚した王女がうらやましぇの。あだも王子と結婚でぎでえがったわね」

 その事はさて置き…


「王女殿下は王子様と結婚されたいのですか?」

「この国ではでぎねわ。皆、兄妹だもの」

「国外でも宜しければ」「本当?」

 今のところ東の第一王子殿下しか浮かばないけど…。

 でも年齢的にもバッチリじゃない?


「この後、東の国に行きますので陛下の許可が降りれば、お話しときます」

「本当?!ありがとう!リリちゃん。お父様に話して来る」

 王女殿下は駆け出して行かれた。

 リリベルはその姿に王妃様の姿が重なって少し笑みがこぼれた。



「は〜っ」と溜息を吐いてザック殿下がドサリとソファに腰掛けたので、リリベルは「お疲れ様でした」と声を掛ける。

「あぁ。オモチャにされるんだろうと、かなり警戒して行ったんだけど意外とまともな話が出来て有意義だったよ」


「王妃様方とですか?」

「ああ。それに彼らの2親等内の親族もいた。君を呼ばなかったのは、配慮だ」

「王族だけの集いだからですか?」

「違うよ。君がリリちゃん人形のモデルだからだよ。最初、彼らには君の事ばかり聞かれたよ」

 確かに、その場にいたならオモチャは自分の方だったのかもしれない。だとしたら本当に有難い。


「君の方はどうだった?旅に役立つ情報は得られたかい?」

 リリベルはザック殿下に北の脱走マニュアルについて話す。


 2種類ある事と、一つは西に逃げる物であること。

 そしてもう一つは東に逃げる物だが、マックス殿下が勧める“青のルート”がそれで、そっちを行くならマックス殿下も一緒に来てくれるらしい事を説明した。更に貿易ルートより少し移動日数が短縮になる事も付け加えた。


「う〜ん、移動日数の短縮はそこまで魅力的ではないかな〜。普通の馬車よりも遥かに短い訳だし。それに大きな街道や街を移動するのは安心だ。道中、観光もできるだろ?でもマックス殿下のアテンドが付くのは心強い気もする」


「そうなんですよねぇ。ただ青のルートはタナカでは厳しいルートだそうですよ」

「そうか!どれだけ山の中なんだ?子爵領の5千メートル級は大丈夫なのに、東はそんなに難易度が上がるのか?」

 と仰るので一応忠告しておく。


「殿下、子爵領の山も舐めてはダメです。どんなにスネイプニルの脚力が凄くても馬の扱いと魔法に長けた彼らだから出来るんです。彼らの属性を忘れましたか?しかも彼らは女神の血を引く王族です。王妃様ですら私達と雪山での耐性が違うと感じました」


「そうか。ならやはり俺達は貿易ルートを行こう。その方が兄上達も安心するだろう」

「そうしましょう!」良かった。私もそれが良いと思ってた。

 彼らは少し凡人に対する理解が足りないと思う。

 北の学者らにも意見を聞いておいて本当に良かった。

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