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ザック殿下とリリベルは3日後に北の王都を出て東に向け移動する予定だ。その為こちらで計画してきたルートを北の専門家に安全な行程なのか確認を依頼していた。
北の国の王都は西寄りにあり、北と西の国境に近い。理由は南と一緒で西寄りは気候が良いからだ。
北の王都から東の国に行くには一般的には王都から北の国内を東の方に移動し、北と東の国境の峠を越えるのが一番早いルートだと思われた。
その日の午前中、専門家や国王陛下、王太子殿下にスネイプニル専門家のマックス殿下が加わって、我々が持ってきた地図とルートを見てもらっていた。
「これは北と東の貿易や輸送ルートと同じだな」
「そうだな。つまらね」
陛下と王太子殿下が仰るが、面白い必要は全くないのだ。安全第一で行きたいし。
ザック殿下もそう思ったのか「じゃあこのルートで行こうと思います」と仰ったのだが「スネイプニルで行ぐべ?このルートでは全く活がされねぞ?」とマックス殿下まで仰る。
一番まともそうな人だったのに?!
北の専門家達をソッと横目で見ると、二人の有識者は無表情だったが「こっちを見んな!」と目が言っていた。
「では、どのルートが良いのですか?」一応聞いておくのだろう。ザック殿下が仰った。
「そうだな〜」
陛下は楽しそうに赤ペンを持って「こうだ!」と線を引いた。
まあ大体予想通りだ。
きっと彼なら北の王都と東の王都を直線で結ぶだろうと思っていた。サオリの感覚と同じだ。主人に似ているのか?陛下がサオリと似てるのか分からんが。
「酷いなぁ。私はサオリと一緒かい?」スルーだ。
「確がに…これはタナカじゃ厳しぇな。マスオでギリだべ」
そういう問題ではないぞ!王太子殿下。
「初心者さも難しぇべ。んだでごうだ」
マックス殿下が青ペンでキュキュッと線を引き直す。
だが、やはりどう見ても登山ルートだ。
私達は北の最高峰登頂を目指したい訳ではない。
リリベルは壁になりたがっているこの国の地形学者に緑色のペンを持って、正しい道を聞こうと思ったが彼は首を横に振る。
それを見ていたザック殿下が「では聞き方を変える。南の冒険家はどのルートで北から東に向かったんだ?」と尋ねると、隣の地理学者が恐る恐る緑のペンを握ってキュキュッと地図上に線を引いた。
南の冒険家“タナカ タツヤスは”かなりマメな人物だった。
彼の冒険記は彼が寄った場所がこまめに書かれており、その内容は彼の足取りがそっくり辿れると言われる程だった。
だが北の地名ではなく村や小さな町の名前が多くて地元の人でないと地図上のどの辺りか分からないのだ。
「おぉ!マスオの跡を辿るのか?それは面白いなぁ。だが彼は冒険家だぞ?緑のルートはお勧めしないなぁ。それにこの辺りの村は数十年前に崖崩れと大規模な雪崩れで多分今は無いぞ」
「んだな。だったら貿易ルートがマシだ。マスオの時代には無かった道だからな。今ならマスオもこっちを選ぶぞきっと」
振り出しに戻った。でもだったら貿易ルート一択だ!
「貿易ルートを選びます」
とザック殿下が仰ると二人の学者も大きく頷いている。
「そうか〜やっぱりかぁ」
だが、なぜ3人ともそこでガッカリするのか?
無視だ無視!北の王族は無茶、無鉄砲の集まりか?!
リリベルは学者の先生達を見送りながら聞いてみる。
貿易ルートは普通の馬車で北の国境まで約7日、国境から東の王都まで5日くらいらしい。
ちなみに陛下とマックス殿下のお勧め山越えルートは、普通の人なら「シェルパを雇ってベースキャンプで数日身体を慣らして頂上を越えます」と仰った。
しかも「夏場までお待ち下さい」とまで言われた。
東の山脈は子爵領にまたがる山と違って6千メートルを超す。
常識って大事だね!と思った瞬間だった。
リリベルはしっかりお礼を言って、二人に道中のお勧めの街と宿まで聞いておいた。
午後は王妃様達のお茶会に誘われた。
だが誘われたのはリリベルではなくザック殿下だ。
「何で?」って殿下は言っていたが、どう考えても殿下の赤い髪が目当てだろう。
リリベルも、ついでのように参加しても良いと言われたがザック殿下を「ガンバレ〜」と送り出し、自分は東への準備を万端にする。
これからは全く知らない土地を行くのだ。しかも二人だけで。
だからリリベルはマックス殿下にサオリが爆走した時の為にザック殿下と待ち合わせに使える場所なども聞き出す事にした。
上の二人の偉い人は役に立たないだろうからな。
だがマックス殿下はやっぱり青色ルートを勧めてくるのだ。
「何で?」て一応、理由を聞いてみると、彼は躊躇しながら一冊の古い手作り感満載の冊子を持って来て見せてくれた。
これ…どこかで見た事あるんだけど…。
※マスオ(北でのセノビックの名前。又は南の冒険家タナカタツヤスのあだ名)




