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「そうか!やはり妹の息子か!」
「妹には似てないが、君の父君も見事な赤い髪をしていたな」
「ああ!よく来てくれたなぁ。妹は王妃か…王妃様は元気か?君の家族も」
「はい伯父上方、家族は全員元気です。姉は南の国の王家に嫁ぎ王太子妃となりました」
「そうかそうか〜君も結婚したんだな」
「北には新婚旅行か?あ…だが奥方は北の令嬢か?瞳がエメラルドグリーンだ」
「母と同じ色か?!そうか最近流行っているリリちゃん人形は君か!」
速攻でバレた!
「兄さん、彼女は西の国の子爵家の令嬢だ。国境にある山脈の麓の子爵家だよ」
「ああ!思い出した!」
「あれだ!ユキチのっ!」
と言って二人は目を見合わせて急に押し黙った。
気持ちは分かる。
“脱走のススメ”を思い出したんだな。
私以外は何の事か分からないようだ。でも大きな声で言える物でもない。
「二人共、急に黙ってどうしたんだ?」
「ああ…いや何でもないよ。ただ母と同じ瞳の色を見て驚いたんだ」
「ああ。そうだな…」
「そうか?でも兄さん達、彼女の伯母は西の劇団の運営者だよ。西の筆頭侯爵家だ」
「えぇ!そうなのか!?君の伯母上から俳優の斡旋を相談された時は驚いたよ」
まさか!…あの劇の俳優の事ですか…?
「可笑しな内容の劇だったから、どうしようかと思ったんだ」
「そうだな。だが西では大ヒットした小説だったんだろ?」
「そうだ東でも流行って遠征公演に行ったと聞いた」
リリベルは冷や汗をかきそうになり、知らんぷりをしたかったのだが‥‥それを陛下が許すはずがない。
「ハハハッ兄さん達!その可笑しな小説を書いたのが、そこの令嬢だよ」
いや!書いたのは別の人です!でも原案者…ですかね…。
「え!君が?」
「君があれの作者なの?一体、いくつの時にあれを書いたの?」
「あの…その…原案のモデルが近くにおりまして…」
「リリ!双方の兄をそう言ったらダメだよ。二人共、普通に結婚してまともだろう!」
ザック殿下にお叱りを頂いてしまった。それは当然だ。だけど…
「私は気持ちが分かるなぁ。侍従の彼はそれはそれは可愛いんだよ」
また陛下が余計なことを…
リズベット王女は話が分からなくてつまらなさそうだ。
リリベルはそれを理由にこの場を逃げようとするが…
「なるほどね。結局、うちの劇団で西に行ってこの劇をやってもいいという若者を募ったんだよ」
「そうそういきなり主役抜擢だったからね。案外、皆、行きたがった」
そうなの?!
「出演料も破格だったし。実際に人気が出た時のボーナスも凄かったらしいしね」
そうなんだ!
「東での公演の前に休暇をもらったみたいで、皆、一度北に帰って来たから報告をもらったんだけど、北にも西にも家が建ったそうだ」
結局、逃げられず最後まで聞いてしまった。
仕方なくザック殿下が王女殿下に付き添って劇のパンフレットやお土産がある売店に行ってしまった。
せっかくの殿下の親戚の集いをゴメンなさい…。
でもその話もここで終わって王女殿下と合流した。
王女殿下はパンフレットに先ほど公演していた劇の俳優さん達にサインをもらってご機嫌が戻り、ザック殿下も再び伯父様方とお話をする事ができてリリベルは一安心した。
しかし帰りの馬車でザック殿下は伯父様方に「北で俳優にならないか?」って誘われたって聞いて驚いた。
「赤ぇ王子はカッコいはんで人気出るじゃ」
「そうだな。北では金髪よりも赤い髪の方が珍しいしな。いいんじゃないか?」
ザック殿下はずっと無表情だった。気持ち分かる。
なんせ彼はかつて例の小説の朗読をした人だ。きっともう懲り懲りなんだろう。
その日の夕飯はまた王族の皆様と頂いた。
「西の赤ぇ髪は瞳さ全員青ぇのね?それに水属性だし」
「火山の国の直系は金の瞳だべな。それに属性は火だ」
夕飯時の話題は各国の王家の容姿や属性の話になった。
「もう赤い髪は西の王族の特徴になってしまったな。火山の国とは別物だ」
北の陛下がそう仰った。
「きっと形式だけでも火山の国さ赤ぇ髪が居ればえのよ。そんなもんよ」
「ですが兄は金髪ですし、次期王太子になるだろう王女も金髪です。我が国も赤い髪ばかりにはならないでしょう」
ザック殿下はそう仰った。
大好きなお兄様の為に自分が赤い髪だからと、それだけで王に相応しいとされたくないのだろう。
「確かに容姿に囚われると国政に影響が出るな。優秀な者が選ばれるのが国にとって一番良いだろう」
「おいだば押し付げられだ感じが凄ぇあるよ」
王太子殿下がそう仰ったが、皆、なりたくないのか「兄っちゃが一番相応しぇ」って口々に言っている。
やはり気質も子爵家と似ている。
「北の国民の皆さんの魔法属性は何が多いのですか?」
リリベルは疑問に思っていた事を聞いてみる。北は氷のイメージだから、やはり多いのは水属性なのだろうか?
「北の者は聖属性が多い。一番少ないのは火属性、土属性だ」
少ない方は想定内だが聖属性が多いのは驚きだ!ザック殿下も目を見張っている。
でも納得だ。だからスネイプニルに乗れるし世話もできる人が多いんだ!
「なるほどな。聖騎士と同じなんだな」
ザック殿下も気付いたようでそう仰った。
「途中で属性が変わる方が凄いと思うがな」
と陛下は仰る。
その辺の仕組みは私もよく分からないが、北の国の聖属性は北の女神様の子孫が散らばった影響とか、そういうのは関係ないのだろうか?
「う〜ん考えだ事ねがったばって、そうなのがもなぁ」
と陛下は仰った。だが、
「君は我々、王族に会って何か気付かないか?」
と王太子殿下に聞かれた。
「エメラルドグリーンの瞳がいない」
答えたのはザック殿下だ。確かに私も思った。
ビバリー女王もその弟殿下もエメラルドグリーンの瞳だったのに、ここにいる王族の中には一人もいない。
全員が青か水色だ。
「いつもは一人二人は居るんだが、今は直系にはいないんだ。だけど君達子爵家は多い」
「なぜなのでしょうか?理由があるのですか?」
ザック殿下がお尋ねになる。
「恐らくだがエメラルドグリーンの瞳は劣勢遺伝で、しかも水色の瞳の突然変異ではないかと考えていたんだ。だが…」
そう西の女神様はエメラルドグリーンの瞳なのだ。だから突然変異とも違うのだろう。
「これはあくまで私の推測だが西の国の者達は良くも悪くも国外にあまり出ない。聖女の防御壁のお陰で不法移民もほぼいないだろう?だから他所の国から入る強い遺伝子の影響を受けやすいんじゃないかな?だから赤い髪も、エメラルドグリーンの瞳も出やすい」
そうか…だったら公爵家が随分昔に嫁いで来られた西の大陸の王女の、銀髪と紫眼を長く受け継いでいるのも分かる気がする。
「ちょっと難しい話になったな。まあ遺伝なんてものはミステリアスだからね。気にする事はない」
と陛下も王太子殿下もそう仰って夕飯は終わったが、その晩、ザック殿下は何か考え込んでいた。
一体、どうしたんだろう?




