噂話
ホールのすぐ近くにあるサロンに行くと、かなりの人がいるものの空いてる席があったので皆でそこへ座る事にした。
すると、すぐにひそひそ話が聞こえてくる。
「あの方がカタリナ様?」「ずっと療養していたと言うじゃない」「今さら戻ってきてどういうおつもりかしら」
やはりあまり歓迎されていない声が多く、少し視線が落ちてしまう。
それほどレブランド様が人気があるという事なのでしょうね。
その妻がこれほど社交界に顔を出さず、貴族との交流も蔑ろにしていたのですもの。
言われても仕方ないわ。
レブランド様にも沢山迷惑をかけてしまっていたに違いない。
「カタリナ様、気になさる事はありませんわ!」
「そうですわ。仕方ない理由がおありだったのですもの、あーだこーだ仰る方が無粋というもの。ここには下品なお方が多いのかしら」
少し俯いている私を心配した2人が、言葉をかけてくれる。
友人ってとても心強いものなのね……自国にいた時は庇ってくれる人などいなかったから。
こういう時に味方になってくれる人がいる有難さに、胸が温かくなる。
「お2人とも、ありがとう。友達って素晴らしいですわね……私は幸せ者ですわ」
「私もですわ!」
「私もです!フェミーナもご子息の事が大好きで、また会いたいと毎日話しているのです」
「まぁ!アルジェールもなんです!二人は相性が良いのかもしれませんわね」
私たちが子供の話で盛り上がっていると、どこからともなく息子の陰口が聞こえてくる。
「本当に閣下のお子なのかしら」「出産に立ち会っていないという噂もある」「不義のお子だったとしたら大変な醜聞ですわね」
咄嗟に立ち上がり、扇を広げて噂話をしている方達の方へ視線を移した。
私自身の事なら何を言われてもいい。
でも息子の事となると話は別だわ。
しかも不義の子だなんて……到底許せるものではない。
あの子を見ればすぐにレブランド様の子だと疑う方はいないでしょうけれど、そうでなくともこのような事を言われる筋合いなどないわ。
「やはりここには下品な方が多いようですわね」
私の言葉に奥の方にいる貴族女性たちが、声を大にして反論してくる。
「なによ、閣下をお支え出来ない妻なんて必要ないのではなくて?」
「ほんと、いてもいなくても変わらないなら早く身を引いて差し上げればいいのに……図々しい!」
何も知らないのをいい事に言いたい放題。
こんな茶番に付き合う意味はないわ。
これが相手がお姉様たちだと、ここから何をされるか恐怖でしかなかったけれど、この方達が何かをしてくるとは思えない。
貴族女性は噂話が好きだものね。
そう思って振り返ろうとした瞬間、ヴェローナ様が立っていた。
「どうなさいましたの?カタリナ様、お顔の色が悪いように思いますが」
「ヴェローナ様……」
全く気配に気付かなかった……!
彼女は私の両肩に手を置き、顔を覗き込んでいる。
その目がまるで笑っていないので、背筋が粟立っていく。
「皆様、カタリナ様は療養から帰られたばかりなのですから、気遣って差し上げないと」
「お心遣いに感謝しますわ、ヴェローナ様。でももう体は大丈夫ですので」
「いいえ!甘く見てはいけません!ここで悪化してはレブランドが心配するでしょうし」
彼女の言葉や態度に呑まれてはいけない。
レブランド様の名前まで……どういう風の吹き回しかと思っていたら、彼女の手が私の手を握ってくる。
「さぁ、カタリナ様。こんなところにいてはいけませんわ。ゆっくり休める場所に移動しましょう?」
だめ、このまま一緒に行動してはだめよ。
そう思うのにどう言葉を返せがいいかが浮かんでこない。
無下にもできない状況で固まっていると、力強い腕が私を引き寄せ、大好きな人の匂いに包まれる。
「カタリナ、待ちくたびれたので来てしまった」
「レブランド様!」
「「閣下!」」
「レブランド!!」
ヴェローナ様も皆も、レブランド様の登場に面を食らっている。
サロンに来るような人ではないもの……私自身も驚いて動揺してしまう。
「レブランド様、お待たせしてしまいましたか?」
「ああ、待ちくたびれた。君がいないと昼も夜も明けられないからな、私は」
「レ、レブランド様……」
旦那様はロッジェから戻ってから、愛情表現を率直に表すので時々恥ずかしくてどう返していいか分からない時がある。
でも今はそれがとても嬉しい。
もしかしたらヴェローナ様の声が聞こえて来てくれたのかもしれない……彼の心遣いに先ほどまでの怒りと恐怖が落ち着いてくる。
「レブランド様、ありがとうございます。私は大丈夫です」
「君が大丈夫ならいいが……そろそろ私の妻を皆に見せたい。ダンスを踊りにいこう」
「はい!」
私たちのあとに、オーロラ様とアイリーン様も続いてくる。
「待って、レブランド!」
「……ヴェローナ、カタリナの事は感謝する。君も舞踏会を楽しむがいい」
レブランド様は私の腰を引き寄せ、優しく微笑みながら寄り添ってくれた。
そんな彼の存在に、私の心は安心感に包まれたのだった。
「ふふっ」
「どうした?」
「私は本当に幸せ者だなと思ったのです」
「そうか。それは私の方だと思うが」
「レブランド様がそう仰ってくださる事が幸せなのです」
「では幸せ者同士、踊ろうか」
「はい!」
私は彼の肩に手を置き、手を取り合って音楽に合わせてステップを踏んでいった。
私たちに対しては色々な見方があると思うので、深く考えないようにしよう。
噂したい人にはさせておけばいい。
私はこの時、レブランド様がいてくれる安心感から、様々な人の思惑が動いているとは、全く気付いていなかった。
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