四歳の誕生日会 2
「レ、レブランド様……後ろに……!」
「ああ、そうだったな。門の前で鉢合わせたのだ」
「そんな…………っ」
さっきまでの一連のやり取りを見られていたなんて!
穴があったら入りたい……私は旦那様から下りて、後ろに立つご友人たちに挨拶をしていった。
でも、気まずくて堪らないわ。
向こうも顔を赤らめていて、もう、本当に消えてしまいたいくらい恥ずかしい。
「いや、でもご夫婦の仲が良いところを見られて、ホッとしました」「こんなに笑うレブランドを見られたのもな」「初めて見たよ」
ご友人の方々にからかわれている旦那様は、少し恥ずかしそうに見える。
ここにいらっしゃる方々は、結婚式の日に控えの間にいらっしゃった方達ね。
きっと色々と事情を知っているのでしょうから、レブランド様を心配していたのかもしれない。
よく見たらご家族で来てくださった方もいて、アルジェールより少し幼い女の子を連れた奥様もいらっしゃっていた。
「アルジェール、一緒にご挨拶をしましょう」
「はい!」
私は小さな女の子を連れてきているご夫人に声をかけた。
「初めまして、レブランド様の妻のカタリナと申します。こちらは息子のアルジェールですわ」
「アルジェールです!よろしくおねがいします」
アルジェールが、ちゃんと話せているわ!
いつも“よろしくお願いしましゅ”だったのに……子供の成長の早さを実感し、感動していると、女の子がアルジェールに向かって挨拶をしてくれる。
「フェミーナでしゅ……よろちくおねがいしましゅ」
「申し訳ございません!娘はまだ言葉が未熟で……私はアイリーン・テイラーと申します」
「まだお小さいのですから、お気になさることはありませんわ。アイリーン様、夫ともども仲良くしていただけると嬉しいです」
「こちらこそ……!あの閣下のお心を射止めた奥様とお会いしてみたかったのです!」
テイラー子爵夫人のアイリーン様は目を輝かせながら、興味深々といった表情だった。
歓迎されている、と思っていいのよね?
「ホールに移動しましょうか。あちらで色々とお話ししましょう」
「はい、ぜひ!」
「かぁさま、フェミーといっしょに、おへやであそんでくる!」
「ええ、分かったわ。オーリン、お願い」
「はい!坊ちゃま~~お嬢様~~こちらです!」
アルジェールはさっそくフェミーナ嬢と遊びたいのね。
念のためオーリンを付け、大人は皆歓談する為にホールへと移動する事にした。
「皆、今日は息子の誕生日を祝う為に訪れてくれて感謝する。存分に楽しんでいってほしい」
レブランド様の音頭で乾杯し、ホールに用意されたご馳走に舌鼓しながら話に華が咲いていく。
「カタリナ様、今まで療養なさっていたという事ですが、お体はもう大事ないのですか?」
「ええ、もうすっかりこの通りですわ」
私がいなかった間の事は、レブランド様が上手く皆に話してくれているようだった。
親しいご友人には本当の事を話しているのでしょうけど、ご家族には話さないでいてくれているみたい。
公には産後の肥立ちが良くなくて、別荘で療養しながら子育てをしていたという事になっている。
「閣下のあのような嬉しそうなお顔を見られるなんて。とても貴重なものを見られた気分です」
うっとりしながらそう話すのは、テイラー子爵夫人ではなく、もう一人のご友人であるクレバイン伯爵夫人のオーロラ様だ。
「夫はそんなに表情が動かない方なのでしょうか?」
「「………………」」
私の言葉にオーロラ様もアイリーン様も固まってしまう。
何か変な事を言ってしまったかしら……?
「何をおっしゃいますの、カタリナ様!閣下が笑ったところなど見た事があるのは王太子殿下くらいではなくて?」
「そうですわ!泣く子も黙る鬼神と呼ばれるパッカニーニ公爵を笑わせる事が出来る方がいらっしゃるなんて……私感動しておりますの」
「そ、そんなに……レブランド様は出会った時からよく微笑んでくださいましたし、とても表情豊かで、時々可愛らしい時もあって……」
私が説明すればするほど、周りから黄色い声が上がる。
これはあまり発言しない方がいいかも?
私には友人と呼べる人がいないので、女性同士で色々な事を話すのはとても新鮮だった。
夫人たちの子育て話や噂話など、普通の貴族女性としての会話が出来る事が嬉しかった。
自国では親兄姉妹たちのせいもあったけれど、王女だったので友人作りが出来る立場ではなかったものね。
初めての経験に終始笑い声が溢れ、とても幸せな時間となっていったのだった。
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