レブランド様の剣術指南
公爵邸に戻ってきて10日ほど。
アルジェールは徐々に邸にも慣れてきてはいたものの、夜はやはり私とレブランド様が一緒じゃないと寝られないので、ずっと三人で眠っている。
夫婦の時間が取れない事よりも、それ以上にアルジェールがラルフやリイザさんたちと離れて寂しいのでは、という事が心配になってくる。
邸には人が沢山人いるし、昼間は寂しくはないのでしょうけど……それに部屋も広くて落ち着かないのかもしれない。
生まれた時からあの村で、あの家で育ってきたのだものね。
私たちは出来る限りアルジェールに寄り添う事を決め、レブランド様も仕事を早めに切り上げてアルジェールとの時間を大切にしてくれていた。
「とうさま、けんじゅつのれんしゅうがしたい!」
「そうか、アルジェールは剣術に興味があるのか」
「うん!つよいきしさまになりたいから……おねがいしましゅ!」
握りこぶしを作りながら、レブランド様に力説するアルジェール。
可愛すぎるわ……旦那様の表情もすっかり緩んでしまっている。微笑ましいわよね。
「よし、じゃあ教えようじゃないか。しっかり学んで強い男になるのだぞ」
「あい!」
「はい、だ。アルジェール。騎士は礼儀も重んじる」
「はい!とうさま!」
レブランド様はおもちゃの中から布で作った剣を探し出してアルジェールに渡し、自身は木刀を握っている。
「本気でかかってくるんだ。父様が全部受け止める」
「はい!」
そこから子供部屋で、レブランド様の剣術指南が始まる。
アルジェールには好きなようにさせながらも、さりげなく剣の振り方も教えていく。
レブランド様って、やっぱり凄いお方なのだわ……教えるのも上手。
アルジェールはよほど楽しかったのか、ずっと動き続けているのに飽きる事なくレブランド様に向かっていっていく。
さすがに息子の息が上がってきていたので、私がストップをかけた。
「そろそろ休憩をしましょう!」
「かぁさま!ぼくのけんじゅつ、みてた?!」
可愛い息子が満面の笑みでこちらに向かって駆けてくる。
私に飛び込んでくる彼を受け止め、沢山褒めて頭をなでた。
「もちろんよ!この調子なら凄い騎士様になれるわね!」
「ほんと?!わーい!」
「うふふっ」
「アルジェールは本当に素晴らしい資質を持っている。10歳になる頃には大人と勝負できるくらいになっているかもしれない」
「まぁ……!そんなにですか?」
「ああ。言葉にしなくとも体で覚えていくタイプだ。先が楽しみだな」
「えっへん」
私たちから褒められてすっかりその気になっているアルジェール。
でもやりたい事があるのは素晴らしい事だわ。
剣術などで体をしっかり動かせば、夜もすぐに眠れるかしら。
その日から、レブランド様の剣術指南は毎日続いていく事となった。
よほど楽しいのね。
でもやはり夜は一人では眠れないようで、一緒に眠る日々が続いていた。
今日も息子は私たちのベッドにやってきて、先に寝落ちて寝息を立てている。
「彼が自然と私達から自立したいと思うようになるまで、一緒に寝てあげよう」
「レブランド様……」
「私は嬉しいのだ。息子との時間を取り戻しているようで……もちろん君との時間もほしいが」
「そ、そうですね」
そんな事を言いながら、なぜか私は旦那様の膝に乗せられている。
一緒にベッドに腰をかけっていたはずなのに、どうして?!
「初夜のやり直しはお預けだが、これくらいは許されるだろう」
「………………」
あまりに恥ずかしくて顔を上げられない。
レブランド様は大きいので、膝に乗せられると私が子供のような体格差がある。
まるでアルジェールになったような気分……チラッとレブランド様の顔を覗き込むと、とても満足げだった。
もう……そんな顔をされたら、下ろしてって言えないわ。
「私が嫌がるとは思わないのですか?」
「嫌なのか?」
旦那様は途端に慌て始め、眉が八の字になる。
レブランド様は時々凄く可愛いのよね。
喜んだり、肩を落としたり、慌てたり……無意識なのでしょうけど感情の起伏が分かりやすくて、キュンとしてしまう。
「ふふっ。嫌なわけありませんわ。レブランド様の体温や匂いを感じて、とても心地良いです」
「そ、そうか」
「そうです」
顔を赤らめて嬉しそうにする旦那様があまりに可愛いが過ぎるので、彼の胸に顔を埋めて心臓を落ち着かせた。
その夜はしばらく膝に乗ったまま彼の温もりに包まれて過ごしたのだった。
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