覚悟を見せる時 1
レブランド様とお話してから数日後、アルジェールの体調がすっかり良くなったので、パン屋さんへいつものように仕事をしに行った。
でもなぜか私とレブランド様は、パン屋の一室でリイザさんの前に座って、彼女の言葉を待っている。
というのもレブランド様とちゃんと話し合い、私は彼と共に人生を歩む決断をした。
それをリイザさんにお話しなくてはと思い、声をかけたのだ。
すると店頭に立つレブランド様を連れて来て、リイザさんの前に二人で並ばされているという状況だった。
「リイザさん、パン屋の皆様には今まで感謝してもしきれないほどのご恩を感じております」
「そんな事はいいんだよ!私はカタリナの事を娘のように思っているしね」
「リイザさん……」
おかみさんは太陽のような笑顔で、サラッと嬉しい言葉をくれる。
どんな時も励ましてくれたし、優しく寄り添ってくれたし、お母様よりも断然私にとっての母で、とても大切な人だ。
お別れをしなくてはならない事に涙が止まらなくなる。
「あんたを応援してやりたい気持ちもありつつ、私が話たいのはレブランドさんになんだ」
レブランド様は私の方を見て、優しく頷いた。
そして真剣な面持ちでリイザさんの方へ向き直る。
「カタリナがこの村に来た時はね、妊娠初期の症状の悪阻でとても体調が悪くて、店の前でぶっ倒れていた」
「なっ……!」
レブランド様はリイザさんの言葉に顔を青くし、私の手をギュッと握った。
その手が少し震えている気がする。
なぜその話を……おかみさんの事だから、何か想いがあるはず。
「私が見つけて皆で運んで……その時、この子は妊娠に気付いていなかった。明らかに平民じゃなさそうなのに身寄りもなさそうだし、絶対ウチで助けなきゃと思ったものだよ」
「リイザさん……私は本当に幸運でした」
「アルもね、幸運だったね。難産でなかなか生まれてこないし、カタリナは気を失ってしまうし……一時はどうなる事かと思ったけど」
リイザさんが話すにつれ、レブランド様の顔色はどんどん悪くなっていく。
これ以上は耐えられないのでは……。
「女性のそういうのは命懸けなんだ。レブランドさんはその自覚をもたなきゃいけない。間違っても一人にしちゃいけないよ。あんたにその覚悟はあるかい?」
「もちろんだ、と言いたいが、一人にしてしまった私が口にしても説得力はないと分かっている」
「まぁ口では何とでも言えるからね」
「分かった、ではその覚悟を見せるとしよう」
そう言って立ち上がったレブランド様は、自身の剣の柄を握り締める。
「何をする気だい?!」
「レ、レブランド様!おやめください!!」
「む……やはり頭を丸めるでは覚悟が伝わらないか?」
「「え……」」
私とリイザさんは顔を見合わせ、吹き出した。
「びっくりさせないでください~~!」
「本当だよ!腹でも斬るのかと思ったじゃないか!」
「カタリナとアルジェールを守る役目があるからな。自分を傷つけている場合ではないのだ」
「そ、そうですか」
レブランド様は割と当然のように言うけれど、時々突拍子がなくて驚く時がある。
リイザさんは涙を拭いながら、まだ笑いがおさまらない様子だった。
「レブランドさんは面白いね~~。じゃあ今日一日でパンを1000個売ってもらおうか!今までは約800個が最大だったけどレブランドさんなら出来るんじゃないかい?」
「当然だ」
「あっはっはっ!清々しいほどイイ男だね!じゃあ今日一日頼んだよ!」
「じゃあ私もお手伝いを……」
「いや、カタリナは見ていてくれ」
「そうそう。これはレブランドさんが頑張る事に意味があるんだ」
二人に制止され、それ以上は言えなくなってしまう。
私はハラハラする気持ちを抑えながら、アルジェールと一緒に見守る事にしたのだった。
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