再会したら宝物が2人 ~レブランドSide~
殿下がゴルヴェニア王国に話をしてくださったおかげで、第一騎士団の中の50名ほどを選りすぐり、彼らを引き連れてゴルヴェニアへと向かう事となった。
途中野宿や宿を取りながら馬で陸路を進み、10日ほどで到着。
無事入国を果たす。
遠方の国から来た騎士団という事で、どこに行っても注目の的だ。
まるでパレードでもしているような気持ちになる……早く王城へと向かいたい。
港に近い辺境の村ロッジェへと着くと、滅多に見られない騎士という事で、村人の歓声が物凄い事になっていた。
人々の視線にさらされるというのはなかなか恥ずかしいものだな……これならば戦場を駆けていた方が良いと言うもの。
「団長!早めにこの村を抜け、今日中には王城へ着くように急ぎましょう」
「そうだな。長居は無用だ」
「はっ!」
第一騎士団隊長のバイロンが私に声をかけ、前の方へ戻って行った。
カタリナが私のもとを去ってから、戦場に行った時も彼女を忘れた事はなかった。
今も新たな地に足を踏み入れると、彼女の姿がないかを無意識に探してしまう。
君はどこに行ってしまったんだ。
せめて無事な姿だけでも見る事が出来れば――――
そう思っていた時、前方で騎士と馬の大きな声に村人の悲鳴が聞こえてくる。
急いで駆け付けると、子供を抱き締めて蹲る母子と、怒りをあらわにしている騎士たちがいた。
「どうした?」
「申し訳ございません、閣下!子供が飛び出したようで」
「よい。そなたたち、怪我はないか?」
私は蹲ったままの母親に声をかけた。
だがしかし、母親は顔を上げる事はなく、そのままの姿勢で返事をしてきた。
「は、はい!ご無礼をいたしました!」
「…………そなた……」
髪をひっつめているが、何となくカタリナと同じ髪色のような感じがする。
土で汚れているのか服も埃まみれで、到底彼女だとは思えないのだが。
「閣下、何か?」
「いや、何もない。行くぞ」
「はっ!」
自分がカタリナに会いたいからと、村の女性にまで面影を重ねてしまい、何となくバツが悪くなって考えるのを止めた。
しかしなぜかあの女性が気になる……子供を抱きしめていたな。
その子供は黒の髪で――――漆黒の髪は珍しい色と言われ、私は自分以外であまり黒い髪の者に出会った事がなかった。
まさか……いや、そんな事あるわけがない。
微かに鼓動が早くなっていくのを抑えながら、あり得ない自分の思考を振り切ろうとした。
すると後ろから村人の歓声に交じって話し声が聞こえ、愛する人の名を呼んでいる者がいたのだ。
「カタリナ!アルジェール!大丈夫か?!」
すぐに後ろを振り返ると顔は見えないものの、先ほどの女性がパン屋に向かって歩いていくのが目に入ってきた。
あの女性はやはりカタリナだったのか?!
すぐにでも戻って問い詰めたい……!
しかしこの村人の中に戻っていけば大騒ぎになってしまう。
そこでこの村を出た後、数人の騎士を連れてまたパン屋に戻り、先ほどの女性について聞き取りをしてみる事にしたのだった。
~・~・~・~・~・~
すっかり大通りには村人もいなくなり、落ち着きを取り戻したパン屋の前に立つ。
中にあの女性は……いないようだ。
「団長、本当にここにいるのですか?」
「バイロン、確かに彼女の名を呼んでいる者がいたのだ」
「その者と一緒にこのパン屋に入っていったと?」
「そうだ」
「しかし――――」
「まぁ、聞いてみればいいのでは?カタリナと呼ばれていた女性について」
バイロンの言葉に副団長のイズマーニが機転をきかせる。
無論言われなくとも聞いてみる気だったが。
「入るぞ」
「「はっ!」」
扉を開くとカランカランとベルが鳴り、店主の女性が元気よく声をかけてきた。
「いらっしゃい!ってあなた様方は先ほどの騎士様?!」
「ああ、驚かせてすまない。少し聞きたい事があってな」
「なんです?知ってる事なら何でも聞いてくださいな」
「感謝する。少し前だがカタリナという女性がこちらに入ってくるのを見たのだが」
私の言葉に女性は一瞬顔を強張らせ、少し警戒する素振りを見せた。
優秀だな。若い男だったら騎士になってほしいところだ。
だがこれで確信した、カタリナという女性はここにいる。
「さぁね。そんな女性はここにはいませんよ」
「その女性が私の妻だとしても?」
「妻?!」
「私はずっと彼女を探しているのだ。もしここにいるのなら教えてほしい、一緒に帰りたいのだ」
「…………母さん、どうした?」
店主の女性と話していたところに、様子がおかしいと思ったのか、カタリナと名を呼んでいた男が奥から出てきた。
なるほど、この女性の息子だったのか。
「この騎士様がカタリナの夫だって言うんだ」
「え?!」
「彼女はどこにいる?」
「なんで今更……」
やはりここにいる……!まさかこの男と夫婦になったのでは……私は嫌な予感でいっぱいになり、今すぐ剣を抜いてしまいそうな衝動に駆られる。
男の様子を見ていると、チラチラと階段の上に視線を泳がせていた。
そうか、二階にいるのか。
「分かった、二階にいるのだな。イズマーニ、バイロン、ここは頼む」
「「はっ!」」
私はすぐに二階へと駆け上がっていった。
カタリナ……私はやっと君にたどり着いたのか?どうか中にいるのが本人でありますように――――
そう祈りながら扉を開くと、そこには髪型は変わったものの、あの頃のままの愛する人が立っていたのだった。
「カタリナ……」
「…………レブランド様……?」
私の名を口にするのを見て、彼女への想いが溢れてきて言葉が出てこない。
こんな辺境にいるとは、全く予想もしていなかった。
村人と同じような服装をしているのに、どうしても君の美しさは隠し切れていない。
階下からやってきた男が、私に対して何かの間違いではと言う。
「いや……私が自分の妻の顔を間違えるわけがない」
「いいえ、妻ではありません。元妻です。勘違いさせるような事はおっしゃらない方が……」
「いや、君はまだ私の妻だ。離縁書は出していない」
「なぜ…………」
カタリナは一連の会話にとても動揺していた。
離縁書などあの場で破り捨てた……私が妻にしたいと思ったのは君だけだというのに。
やはり彼女の中で私は、他に結婚したい女性がいたにも関わらず、何かの賭けの為に自分と結婚をした男という事になっているのだろう。
そして私が賭けに勝ったから、自分はもう一緒にいる必要がないと思っているに違いない。
それは違うと言ってしまえば楽にはなる。
しかし、彼女からの信頼が地に落ちている状況でそんな事を言っても意味はない。
そして何より――――
「カタリナ……この子は…………この髪と瞳の色。この子は私と君の……?」
もう分かっていたのに確認してしまう。
私がいない間に奇跡が起きていたとは。
「はい。彼は……アルジェールは私とあなたの……」
「アルジェール……」
名前を口にすると、愛おしさが胸いっぱいに溢れ、気付けば二人をこの腕におさめて強く抱きしめていた。
宝物が2人に……髪や瞳の色は私のを受け継いでいるが、形は彼女の方だな。
アルジェールは私たちが確かに結ばれた証だ。
このまま帰るわけにはいかない。
必ず二人を連れて帰る。
私は部下に「殿下に連絡してくれ。そして一カ月ほどここに留まる。その間の指揮はイズマーニに任せる」と告げた。
そしてこの村でカタリナを説得し、アルジェールに父だと認めてもらおうと考え、パン屋の二階に腰を据える事にしたのだ。
もう絶対に彼女を独りにはしない。
そばに寄り添い、二人からの信頼を勝ち取る為に。
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