魔法学園ルミナスアカデミー魔法部は、今日も恋の予習中 ―after story―
こちらの話は、リリィとアレンの後日譚です。
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―恋の本番、そして新しい日々へ―
春の風が通り抜けていく。
魔法学園ルミナスアカデミーを卒業してから半年。
私は今、魔法理論研究局の新人魔法師として働いている。
「リリィ、資料整理は終わったのか?」
静かな声が背後から聞こえる。
振り向けば、白衣姿のアレン君。
相変わらず無表情――だけど、昔よりずっと柔らかい目をしている。
「もちろん。というかアレン君、また徹夜したでしょ」
「新しい魔力伝導式を組み替えていたら朝になっていた。些細なことだ」
「些細じゃないよ!」
私は机を軽く叩く。
そういうところ、学生の頃から変わらないんだから。
「リリィが叱られるようになったのは最近だな」
「だって、放っておいたらあなた、寝るのも食べるのも忘れるじゃない」
アレン君は少しだけ口の端を上げた。
かつて“笑えない天才魔法師”だった彼の笑顔は、もう珍しくない。
昼休み。研究所の庭園のベンチに並んで座る。
春の光が柔らかく、魔法の塔の尖端がきらめいている。
「ねえ、アレン君」
「なんだ?」
「私たち、あの魔法部で“恋の予習”してた頃より、ちょっとは上手くなったかな」
「さあな」
彼は紅茶を口にしながら、考えるように目を細める。
「ただ、ひとつだけ言える。今でもリリィの笑顔は俺に効く」
「……ずるい」
「何が?」
「そうやって、さらっと恥ずかしいこと言うの!」
私が頬を膨らませると、アレン君はわざとらしく肩をすくめた。
「恋の“本番”は予習よりも難しいんだろう?」
「……うん。でも楽しい」
アレン君の表情は穏やかで、どこか誇らしげだった。
昔、無表情だった彼がこんな顔をするなんて。
その日の帰り道。
魔法研究塔の下で、夕暮れの風が吹く。
街灯の魔晶石が淡く光りはじめ、空には薄い月がかかっていた。
「リリィ」
「なに?」
「魔法部を作ってよかったと思う」
彼が言葉を探すように続ける。
「あの部がなければ、俺は笑えないままだった。そして……君に恋もしなかった」
胸がじんとする。
私は答える代わりに、そっと彼の手を取った。
「じゃあ、二人でまた新しい魔法を作ろうよ!」
「新しい魔法を?」
「そう! 次は“ずっと幸せにいられる魔法”!」
アレン君は少し考えて、静かに頷いた。
「なかなか面白そうなテーマだな。論文にまとめるのは大変そうだが」
「だから違う! そういう意味じゃないよ!」
私は笑いながら肩を軽く叩く。
彼も苦笑するように小さく息を漏らした。
「君の笑顔は、魔法そのものだな」
夜空に無数の光の花が咲く。
魔力灯の輝きと、星々のきらめきが溶け合って世界が静かに瞬く。
あの頃の『恋の予習』はもう終わった。
でも、恋の“本番”はずっと続いていく。
『魔法学園ルミナスアカデミー魔法部は、今日も恋の予習中 ―after story―』
〜 完 〜
リリィとアレンの二人の話はこれにて完結です。
ただし同じ学園を舞台としたラブコメを鋭意制作中ですので、興味がある方は是非ブックマークと、↓【★★★★★】の評価で応援していただけると嬉しいです。
それではまた〜♪( ´▽`)




