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魔法学園ルミナスアカデミー魔法部は、今日も恋の予習中 ―after story―

作者: 上下サユウ

こちらの話は、リリィとアレンの後日譚です。

まだ本作を読んでいない方は、↓ へ。

https://ncode.syosetu.com/n0637lh/

 ―恋の本番、そして新しい日々へ―


 春の風が通り抜けていく。

 魔法学園ルミナスアカデミーを卒業してから半年。

 私は今、魔法理論研究局の新人魔法師として働いている。


「リリィ、資料整理は終わったのか?」


 静かな声が背後から聞こえる。

 振り向けば、白衣姿のアレン君。

 相変わらず無表情――だけど、昔よりずっと柔らかい目をしている。


「もちろん。というかアレン君、また徹夜したでしょ」

「新しい魔力伝導式を組み替えていたら朝になっていた。些細なことだ」

「些細じゃないよ!」


 私は机を軽く叩く。

 そういうところ、学生の頃から変わらないんだから。


「リリィが叱られるようになったのは最近だな」

「だって、放っておいたらあなた、寝るのも食べるのも忘れるじゃない」


 アレン君は少しだけ口の端を上げた。

 かつて“笑えない天才魔法師”だった彼の笑顔は、もう珍しくない。


 昼休み。研究所の庭園のベンチに並んで座る。

 春の光が柔らかく、魔法の塔の尖端がきらめいている。


「ねえ、アレン君」

「なんだ?」

「私たち、あの魔法部で“恋の予習”してた頃より、ちょっとは上手くなったかな」

「さあな」


 彼は紅茶を口にしながら、考えるように目を細める。


「ただ、ひとつだけ言える。今でもリリィの笑顔は俺に効く」

「……ずるい」

「何が?」

「そうやって、さらっと恥ずかしいこと言うの!」


 私が頬を膨らませると、アレン君はわざとらしく肩をすくめた。


「恋の“本番”は予習よりも難しいんだろう?」

「……うん。でも楽しい」


 アレン君の表情は穏やかで、どこか誇らしげだった。

 昔、無表情だった彼がこんな顔をするなんて。


 その日の帰り道。

 魔法研究塔の下で、夕暮れの風が吹く。

 街灯の魔晶石が淡く光りはじめ、空には薄い月がかかっていた。


「リリィ」

「なに?」

「魔法部を作ってよかったと思う」


 彼が言葉を探すように続ける。


「あの部がなければ、俺は笑えないままだった。そして……君に恋もしなかった」


 胸がじんとする。

 私は答える代わりに、そっと彼の手を取った。


「じゃあ、二人でまた新しい魔法を作ろうよ!」

「新しい魔法を?」

「そう! 次は“ずっと幸せにいられる魔法”!」


 アレン君は少し考えて、静かに頷いた。


「なかなか面白そうなテーマだな。論文にまとめるのは大変そうだが」

「だから違う! そういう意味じゃないよ!」


 私は笑いながら肩を軽く叩く。

 彼も苦笑するように小さく息を漏らした。


「君の笑顔は、魔法そのものだな」


 夜空に無数の光の花が咲く。

 魔力灯の輝きと、星々のきらめきが溶け合って世界が静かに瞬く。


 あの頃の『恋の予習』はもう終わった。


 でも、恋の“本番”はずっと続いていく。



『魔法学園ルミナスアカデミー魔法部は、今日も恋の予習中 ―after story―』 


 〜 完 〜

リリィとアレンの二人の話はこれにて完結です。

ただし同じ学園を舞台としたラブコメを鋭意制作中ですので、興味がある方は是非ブックマークと、↓【★★★★★】の評価で応援していただけると嬉しいです。

それではまた〜♪( ´▽`)

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