表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
煩悩108の異世界で、踏襲少女は紅茶とともに世界を救う  作者: ふりっぷ
第三章 リアステ帝国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/60

《第59灯:欺瞞》断章ボス:カリオン・メロイ 前編

《欺瞞の王》が佐和子の前に姿を現す。

解析は進む――それでも、真実に辿り着いたとは限らない。

断章ボス戦、開幕です。

 《欺瞞の王》の笑いがやむと、

 大回廊は嘘のように静まり返った。


 割れた白磁の床。

 壁に歪んで映る十字架の影。

 やがて、乾いた拍手の音が響く。


 ――ぱち。ぱち。


 霧が、裂けた。


 まるで舞台の緞帳が引き上げられるように、

白い靄が左右へ割れ、その奥から玉座が現れる。


 鏡面で形作られた王座。

 そこに、殻を纏った存在が座していた。


 金属のような光沢を放つ外殻。

 頭部には王冠、そして顔を覆う左右非対称の仮面。


 片方は笑い、片方は泣いている。


「ようこそ、《欺瞞》へ」

 声は男とも女ともつかず、耳に届くたび微妙に調子を変えた。


「君たちは、真実を望むか?」


 仮面の王が、ゆっくりと首を傾げる。


「それとも……都合のいい幻想を?」


 佐和子は、息を吸った。


「来るよ」


 その一言で、全員が身構えた。


 次の瞬間。


 王の背後に、もう一体の王が現れた。


「――っ!?」


 セリアが跳躍する。

 振り下ろされた斬撃を紙一重でかわす。


 だが安堵は一瞬だった。

 遅れて、まったく同じ軌道の衝撃が背中を打つ。


「幻影……!? いや、当たったぞ!」


 セリアの肩が弾けた。

 骨まで届く衝撃に、視界が白く跳ねる。


 見た目は幻影。

 だが、衝突した瞬間――確かな重さがあった。


「幻じゃない!」ミュリアが叫ぶ。

「質量がある!」


分身は本体の動きをわずかに遅れてなぞっている。

避けたはずの攻撃が、時間差で襲いかかってくる。


回避の感覚が狂わされる。


 佐和子が踏み込み、黒槍で分身を薙いだ。


手応えは確かにある。


分身は砕け散った

――だが次の瞬間、破片が慣性を保ったまま弾丸のように飛散した。


「本体の仮面が割れてる!」

 佐和子が叫ぶ。


微笑の仮面に、悲壮の仮面が並び立つ。


「正解だ。欺瞞とは、心だけのものではない」

 微笑の仮面が楽しげに手を打つ。


 王冠が、淡く光った。

 次の瞬間、周囲の重さが変わった。


 セリアの冥斧が、急に軽くなる。


「また、重さが――っ!?」


 空振り。


 体勢が崩れたところへ、分身の衝突。


「くっ……!」


 マーレが踏み込み、将の誓剣を振るう。

 分身が再び砕けるが、今度は破片の軌道を読んで弾いた。


 王冠が再び光った。


 途端に、黒槍が軽くなる。

 振り抜きすぎ、体勢が崩れる。


「マス・スライムと似た能力!」


 槍は次の瞬間には逆に重くなる。

 足が沈み、斬撃の角度が狂う。

 

 王の周囲の空間そのものが、質量を偽っている。


「軽くなる時が危ないですわ」マーレが叫ぶ。

「空振りに気を付けて!」


「「「了解」」」三人の返事が重なる。


「私の将の誓剣は影響を受けにくいようです。

 最悪、二体同時に倒すことも考えなければなりません」


「及第点かな」

微笑の仮面の周囲が再び歪む。


 ミュリアが即座に叫ぶ。

「質量が偽装されているのは王の周囲のみ!」


「私を軸に攻撃を重ねて!」


魔鎧開放まがいかいほう、本気で行くぜ」


 佐和子とセリアが呼吸を合わせる。

重さの狂いを計算に入れ、踏み込みを微調整する。


 セリアの冥斧が、悲壮の仮面の殻にヒビを入れた。

 その隙を縫うように、足元から王の一撃が放たれる。


 斬ったはずの軌跡が、空中に残る。


「……消えない?」


――そして一拍遅れて、赤黒いノイズを纏った斬撃の軌跡が、

 逆に上段から振り下ろされる。


「二段目!!」

 マーレの結界が間一髪で受け止める。

 結界が軋み、ひび割れた。


「攻撃の……残りが、殴り返してくる……」

 マーレが息を呑む。


「白蜘蛛が残像の赤黒い光を探知!」ミュリアが叫ぶ。

「シロガネ、共有して!」


 微笑の仮面は、玉座に座ったまま。


「虚像は質量を持つ。王冠は重さを偽る。

 そして――斬撃は、遅れて帰ってくる」


 まるで講義をするかのように、淡々と告げる。


「結果は、必ずしも即座に訪れるとは限らない」


 その時だった。

 白蜘蛛シロガネが、微かに震えた。


「虚実反響は……分身のみが使う」

 ミュリアが目を見開く。


「重力の基準は……本体の王冠!」


「素晴らしい分析だ」


 次の瞬間、微笑みの仮面が同時に襲いかかってくる。


 セリアが吹き飛ばされ、側頭部を打つ。


 マーレの結界が貫通され、ミュリアに攻撃が届く。

 背中の触手が削がれた。


 二本の触手がぼとりと落ち、血が噴き出る。


「シロガネ、糸で王冠を狙って!」

「ここだよ」


 いつの間にか背後に立った微笑の仮面が

 ミュリアに高質量の一撃を振り下ろす。


「「ミュリア!!」」

悲壮の仮面に押されていたセリアとマーレが叫ぶ。


「やらせない」

王の一撃を神力を解放した佐和子が

――かろうじて弾く。


「もっと追い込んでから使いたかったけど」

佐和子の周囲に光輪が舞い始めた。


マーレの腕が軋み、セリアの肩口から滴った血が腕を染める。


 微笑の仮面が、静かに肩を鳴らす。


「――さて」


 王冠が、鈍く輝く。


「次の一撃で、誰か死ぬかね?」


 解析はできた。

 だが――


「……まだ第一形態だね」


 佐和子の呟きに、仮面が同時に笑った。


「正解だ」


欺瞞は、深みを増していく。


アントニオの大盾が欲しいところです。。

王の余裕は崩れません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ