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煩悩108の異世界で、踏襲少女は紅茶とともに世界を救う  作者: ふりっぷ
第三章 リアステ帝国編

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《第41灯:誇り》《将軍ルア・ラヴェルド》後半

 レアは魔導銃を構え、炎の奔流を牽制し続けていた。

 だが、四方へと分断された陣形では限界があった。


 荒れ狂う火勢が一気に押し寄せる。

 整った金髪が焼け、喉に吸い込んだ空気さえ灼けるようだった。


 反射的に目を閉じ、地面を転がる。

 ――その瞬間、痛みが途切れた。


 自分が、球状の水に包まれていることに気づく。


「帝国将に怪我をさせないよう、命じられております」


 水精ユリハが、熱に身を縮めながら水結界を張っていた。


 その姿を横目に、佐和子が一歩、前へ出る。

 幻視の炎が、彼女の影を大きく揺らした。


「誇りを掲げるのはいい。

でもね――」


 静かな声だった。


「それを“立ち止まる理由”にしちゃいけないんだよ」


 黒槍を掲げた瞬間、

 灯が脈動する。


 音はない。

 だが、空気そのものが震え、

 幻視空間の色彩が一段、明るく揺らぐ。



 花弁のような灯が宙を舞い、

 幻影兵たちの輪郭が、

 「敵」ではなく「記憶」としてほどけていく。


「消すんじゃないよ」


 佐和子の声は、

 不思議なほど遠くまで届いた。


「“もう過去のままじゃない”ってことを、

 あなた自身に思い出してもらうだけ」


 光に包まれ、

 ルア・ラヴェルドの黒鎧が、

 剣先から静かに色を失っていく。


「四陣構造に直接干渉してくるとは…」


 義眼の光が、佐和子を射抜いた――


「貴方はこのまま消滅を選ぶこともできる」


「……そうか」


 将軍は、初めて肩の力を抜いた。


「私が……求めるべきは……

 勝利ではなく……

 償いか」


ルア・ラヴェルドが剣を下ろそうとした


―その時。


「貴方は許されてはなりません」


敵意を失ったルア・ラヴェルドにマーレが斬撃を当てる。


「《執撃残響(しつげきざんしょう)》」


一度目の斬撃で首に赤い花弁が散り、同時の斬撃で

首が転がる。


「ははっ、私は救われてはならん…その者の言うとおりだ」


 将軍ルア・ラヴェルドは、

 落ちた首で喋りながら、器用に右手で拾い上げ、脇に抱えた。


 そして、残った左手で剣を地面に突き刺す。


剣の柄が銀の燭台へと変貌する。


「せめて…散っていった部下の為に祈ってやってくれぬか」


佐和子は小さく頷く。


「第41灯――」


 地面に刻まれた戦痕が、

 一本、また一本と淡く発光し始めた。


「祈灯式、執行」


 光が咲いた。


 爆ぜるような派手さではない。

 それでも確かに、

 ”戦場全体が“息を吸った”ように感じられた。


『世界寿命90日延長』

燭台に灯が戻ると同時に佐和子の体を包む様に小さな翼が舞う。


________________________________________


《ボスドロップ》

・将軍ルアの義眼

装飾品幻視耐性+15%、

誇り属性の魔法被ダメ減少。


・将の誓剣セイグリッド【レア武器】

“誇り”の断章を鎮めた証。

幻影斬撃効果付き片手剣。

________________________________________


 残骸の中で、地上へと帰還しレアが息を吐く。


「……終わったのですね」


「うん。

 将軍は再びダンジョンに戻っていった。

 浸食が広がることはもうないと思う」

 佐和子は空を見上げる。


「ドロップ品は当然頂きますわ」

マーレが義眼と剣をさっと確保する。


「ダンジョン浸食を防いだ上、世界寿命延長も成し遂げた。

 私から上に掛け合っておこう」

 ユリハに救われた形のレアも納得していた。


休息地点:リアステ帝国軍陣地・仮設野営地にて


 帝国の聖女ミネルファが歩み寄り、

 柔らかく肩に手を置いた。


「お帰りなさいませ。

 B級上位の断章ボスを無傷で下すとは

 次はA級ダンジョンにご案内しましょう」


「……慌ただしいね」


 佐和子は小さく笑った。

 銀髪の少年。ノクスの警告が頭をよぎった。


「冒険者ギルドに寄らせてくれないかな。

 探し人がいるから」


「エラフ公国の王でしょう。こちらで把握しております。

 後ほどご案内しましょうか?」


ミネルファは先回りすると、花のように微笑んだ。


今回の断章は“倒す”よりも“鎮める”戦いでした。

灯が咲いたその先で、佐和子たちはまた次の問いへ進みます。

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