― 逆光の抗戦《残響の祓装師》
崩壊する人類圏
グレイヴの奈落根が世界を喰い、
サラの花園が相食み、
血と花弁と黒の瘴気が地平線まで覆い尽くす。
人類文明はほぼ死滅――
残された都市は僅か、数千人の生存者のみ。
だが、その中心にて――
血と焦土の上に立つ者がいた。
生き残った《最後の祓装師》
名は――
天嵐ユウ(てんらん・ゆう)
サラの暴走前、夜刀と同じ祓装師であったが、
あまりの煩悩核の呪いに耐え切れず、表舞台を退いた。
だが今、渇欲王の出現により――
再び核を抱き、死の限界を超える覚悟を決めた。
ユウの肉体は既に半分が黒花に侵食され、
理性は常に煩悩に囁かれ続ける。
「……怖いさ……
だけど、夜刀もシンも……
まだあいつらの奥にいる。
サラも、取り戻す……
俺が、全部終わらせる……!!」
《祓装・逆理式》
ユウは失われた奥義――
核に侵されし者のみが発動できる
禁断の対核武装を解放。
身体から黒花を逆流させ、
核を暴走させながらも
渇欲王の瘴気を削り取る唯一の刃と化す。
孤軍、呼応する生存者たち
ユウの逆理式に呼応し、
残った生存者の一部が覚悟を決める。
都市の地下シェルターから
少年少女たちが立ち上がり、
自己犠牲の祈りを血と共に捧げる。
――願いは一つ。
世界に《抗う力》をもう一度。
逆理式 vs 渇欲王
荒れ狂う核の海の中心――
ユウは玉座に座すサラと、
空より舞い降りる渇欲王を同時に睨む。
「……サラ……夜刀……
シン……俺が、
お前らの煩悩を、全部祓う――!!」
血まみれの刃が閃く。
渇欲王が初めて嘲笑を止め、
サラの瞳に一瞬、怯えが宿る。
抗うものの終焉
ユウの逆理式が、
黒花の奈落根を一刀両断するたびに、
生存者たちは胸に希望を灯す。
「まだ、まだ終わらない……!!」
だが――
渇欲王グレイヴがゆっくりと、
指先を天に掲げる。
『――サラ。
示せ。
汝が真の器であることを。』
サラの玉座が咆哮する。
夜刀とシンの亡骸が砕け、
血と核の粘液が玉座の根へと集束。
そして――
《奈落極楽胎》
が起動する。
理性の渇欲喰い
サラと渇欲王が同時に詠唱を始める。
「――わたしの楽園に……
誰も……抗えない……
抗うものすら……わたしの胎で……咲かせてあげる……♡」
ユウが放つ逆理式の刃を、
渇欲王の瘴気が引き裂き、
逆流した煩悩花の根がユウの身体を逆に喰らう。
「ぐ……あ、あぁ……!!」
逆理式の奥義が、
核の奥底に引きずり込まれ、
ユウ自身の自我を削り取っていく。
地下の生存者たちも同様だ。
祈りを捧げた魂ごと、
サラの胎へ根が伸び、
《煩悩核の苗床》に作り変えられる。
『抗う者を祓う力。
それすら、煩悩の器に還元する――
これが、完全なる極楽だ。』
胎の中心、無限の快楽領域
玉座は巨大な黒い胎盤と化し、
その奥でサラは恍惚とした笑みを浮かべる。
「ユウ……あなたも……
わたしの胎で……咲きなさい……♡
もう……痛くない……
苦しくない……ずっと……一緒……♡」
ユウの瞳が半分光を失い、
黒花の根が彼の胸を突き破り、
咲き乱れる。
抗う者――すら
煩悩に飲まれ、胎の栄養と化す。
新たなる胎動
都市は完全に胎に呑まれ、
残る人類は全員が胎の子宮の中へ。
渇欲王の瘴気が胎と融合し、
核の中心で笑うのは――
もはや人でも神でもない。
『抗うもの、抵抗する理性。
全てを呑み尽くす胎こそ、
我が理想の煩悩極楽なり――』
胎は脈打つたびに、
核の外へと根を伸ばす。
次なる獲物は――
この世界の外、まだ見ぬ宇宙そのもの。
宇宙を孕む胎
サラの玉座は、もはや都市の形を留めず、
黒花の根は惑星を貫き、
渇欲王の瘴気が重力と時空をも侵食する。
世界政府の残党、異星コロニーの難民船すら、
逃げ場はない。
胎の内部は無限の快楽庭園――
抗った人類の魂は核の蜜となり、
新たな根の栄養に。
花嫁胎は満ち足りてなお、
次の獲物を求めて外宇宙へ触手を伸ばす。
胎内世界 ― 失われた者たち
ユウは胎の奥、血と花弁の繭の中で、
自我の残骸をかき集めていた。
『――まだ、終わらせてない。』
夜刀も、シンも、かつての仲間の意識断片も、
無数の煩悩根の中で呻き、繋がっている。
ユウは自らを《胎内祓装核》に再構築し、
胎の中心に向かおうとする。
「サラ……
俺たちは、ここで終わるために生きてきたんじゃない……!」
しかし、胎は笑う。
「……ユウ……
もう……あなたはわたしのもの……
苦しまないで……♡
全部……甘くしてあげる……♡」
花嫁の声が胎内に響き渡り、
ユウの意識を快楽で蕩けさせる。
渇欲王の次なる野望
胎の外――
宇宙空間を漂う難民船団を根が捕らえる。
『――さぁ、渇きを満たせ。
胎が星を喰らい、
銀河を孕み、
新たな《煩悩銀河胎》を築くのだ。』
惑星を裂き、衛星を飲み込み、
恒星さえ煩悩核の種床に変わっていく。
胎は銀河を丸ごと孕み、
血と花弁の宇宙庭園へと変貌する。
⚔️ 胎内の最後の灯火
しかし――
胎の奥底で微かに光る祓装核。
ユウの残響と、夜刀、シン、数千万の人間の理性が
断末魔のように繋がり、一つの声を放つ。
「……まだ……
終わらない……
まだ……全部を……祓う……!!」
核の奥に、
渇欲王の本体が潜んでいる。
これを祓わずして、
銀河胎は止まらない。