― カレン、真なる姿
閃光。
シンの鉄槌と、サラの羞恥解放の光刃が、
カレンの赤い魔剣を真正面から打ち砕いた。
「――ッ……くぅ……!」
火花と共に、魔剣は砕け散り、カレンの背後に赤黒い光が渦巻く。
シンは肩で息をしながら叫ぶ。
「……終わりだ、カレン!
これ以上、サラを――!」
「――まだ、終わらないわ♡」
カレンの微笑みが、ひどく甘く、恐ろしい。
割れた魔剣の破片が宙で逆流し、
彼女の身体の周囲を渦巻いていく。
「さすが……如月サラに、その男。
私をここまで高めるなんて……誇りなさい。」
光の破片がカレンの肌に吸い込まれるたび、
彼女のコートがゆっくりと崩れ落ちる。
代わりに――彼女の素肌を包むのは、
血のように紅い光の鱗と、黒い刺青のような紋様。
「見せてあげる……私の 《煩悩武装・第二形態――ブラッドスカーレット》 を……」
肌を覆っていた布が、逆に全て無くなった。
だが――赤黒い光の鎧が形を成し、
あらわな曲線美と、紋様で飾られた肢体が月明かりに映える。
人間離れした魔性の気配。
羞恥心さえ武器に変えたカレンの本当の姿。
「シン……気をつけて……!
これが、カレンの本気……!」
「おほほほっ……っふふ……ッ!
全てを剥き出しにした女が、一番強いのよ♡
サラ……そして煩悩の少年……まとめて屈服させてあげる……!」
カレンの赤黒い鱗鎧がきしむ。
背後に、巨大な血翼が羽ばたき、路地裏を赤の嵐が吹き抜けた。
「来なさい……羞恥と煩悩の果てへ……!」
次の瞬間――
カレンの爪が光り、サラとシンに同時に襲いかかるッ!
「ふふ……動きが鈍いわよ? 如月サラ♡」
カレンの爪が風を切り、
羞恥解放で輝くサラの光刃を弾き飛ばす。
衝撃でサラは後方の塀に叩きつけられた。
腕から光がはじけ飛び、全身を隠していた薄衣の帯がほとんど消滅する。
「ひぁ……ッ……いや……見ないで、シン……!」
ほとんど素肌をさらし、両腕で胸と腰を必死に隠すサラ。
しかしカレンは優雅に舞い、彼女を踏みつけるように見下ろした。
「可愛い声……♡
羞恥にまみれた煩悩……もっと、もっと引き出してあげるわ!」
カレンは指先で空を裂き、
赤黒い触手のような煩悩の鞭を幾重にも生み出す。
「さあ――これが私の《羞恥牢獄》……!」
無数の鞭がサラの両手両足に巻きつき、
無理やり立たせるように吊り上げた。
「やっ……やめてっ!
こんなの……だめ、シンにだけは、見られたくないのに――ッ!!」
羞恥が限界を超え、サラの頬は火のように赤い。
涙が溢れ、震える身体が光の鎧を生成しかけるが――
「ふふ……駄目よ?
今の貴女は、その羞恥を光に変える前に……私の鞭で搾り取られる……♡」
バチン――!!
鞭がサラの素肌を打つたび、快楽にも似た煩悩の火花が弾ける。
「ひぁッ――んッ!!」
「サラァァァァァッ!!」
シンが吼え、鉄槌を振りかぶりカレンへ飛び込む。
だが――
「おやすみなさい、坊や♡」
振り返りざまのカレンの手刀が、
シンの脇腹に鋭く突き刺さる。
鉄槌ごと、シンは道路に叩きつけられた。
「ぐ……はっ……!」
血の味が口に広がる。
煩悩武装が軋み、ひび割れた。
「シン……っ、シン……やだ、やだぁ……!
お願い……お願い……もう……見ないで……!」
カレンの鞭が、さらにサラの羞恥を暴き出す。
「可愛いわ……可愛い……♡
さあ、もっと啼いて……私を、強くして――!!」
吊り上げられたサラの瞳が絶望に濡れたとき――
シンの視界が赤黒く滲む。
(……サラ……!
俺が……俺が止める……!
煩悩が……!
俺の煩悩が……ッ!!)
シンの割れた煩悩鎧が、再び異形の光を放つ。