胎後血戦篇《祓装師ユグドラの咆哮》
胎渇病の村
惑星残骸に造られた小さな居住区《フラギス村》。
胎の瘴気を取り込み、
異形と化す《胎渇病患者》たちが増え続けていた。
彼らは理性を失い、
欲望のままに血肉を喰らい合う――
人々は祈るしかなかった。
『ユウの血を継ぐ者が来る』と。
胎祓装師ユグドラ・クロイツ
フラギス村の上空に、一つの影が落ちる。
「……全部、まだ終わっちゃいねぇってことだな……」
白髪に血糸の紋を纏った少年――
ユグドラ・クロイツ。
胎祓装師の最年少、
かつての祓装核ユウの直系の血族。
背には、胎祓装の象徴――
《血鎖刀》が光る。
胎渇獣との血戦
呻き声が森を揺らす。
「グオオォォオオオ……!!!」
胎渇病患者が完全に理性を失い、
巨獣化して村を襲う。
村人の絶望を切り裂き、
ユグドラの声が響く。
「お前の血――
俺が全部、祓ってやるッ!!」
血鎖刀が閃く。
獣の背を斬り裂くと同時に、血が渦を巻いて吸収される。
それは殺しではない。
穢れた胎残響を祓い、血肉を浄化する一太刀。
だが、斬っても斬っても、
次の胎渇獣が吼える――!
胎の残響の囁き
「……ユグドラ……
あなたも、私の胎に還りなさい……」
血鎖刀の奥で、あの声が嗤う。
《サラ》――滅んだはずの胎核の意識が、
血の中で蠢く。
ユグドラは呻きながら血を握り直す。
「……お前が誰だろうと、
俺の血は祓うためだけに流れるッ!!」
再び、血鎖刀が唸りをあげ、
胎渇獣の頭を祓い裂く。
胎後血戦、開幕宣言
村を救ったユグドラは、空を見上げる。
胎後の宇宙には、まだ無数の胎渇の残響が潜む。
《胎祓装師》の血が絶えるか、
胎の残響が銀河を再び孕むか――
どちらかが尽きるまで、戦いは終わらない。
「……誰も泣かせねぇ。
俺が全部、血の奥から祓ってやる……!」
銀河に血の誓いを刻み――
胎後血戦が、今、開幕するッ!!
胎渇連邦
胎後世界。
難民と胎渇病患者が流れ着く巨大コロニー群――
そこに秩序を築いたのが、
胎渇病患者を兵と化す組織《胎渇連邦》だった。
理性を失いかけた者を管理し、
欲望を制御できる者だけを選抜し、
更なる力を求め胎核の復元を目論む。
その中心に座すは――
《血塊王》
全ての胎残響を統べるべく胎渇を吸い上げ、
自らが新たな核になると宣言する男。
その名は――ヴェルツ・グラオ。
「胎は死んだが、胎は終わらぬ……
我が胎渇連邦こそ、新たな胎核の揺籃ッ!!」
胎祓装師ユグドラ、潜入
ユグドラは一人、血の道を辿って胎渇連邦のコロニー群に潜入していた。
血鎖刀を隠し、胎渇病患者を装って歩を進める。
「……こいつら全員、喰われてるのに……
欲望を制御? ふざけんな……」
連邦の街は秩序に見えて、
裏では欲望の強い者が弱者を胎渇獣化させ喰らい、
力を取り込む生存競争の渦だった。
その中心で、ヴェルツが狂笑を上げる。
「この血の渦が――
我を、胎核へと進化させる!!」
⚔️ 胎祓装師 vs 胎渇連邦兵
ユグドラの潜入が露見した。
胎渇連邦の兵士たちが、
胎渇獣化しながら襲いかかる。
「祓装師が何匹来ようと、俺たちの欲望は無限だァッ!!」
「……なら、無限だろうと全部祓うだけだッ!!」
血鎖刀が吼える。
胎渇連邦兵の血管を逆流させ、煩悩を断ち切る。
だが倒しても、次の兵が――
次の欲望が――牙を剥く!
血塊王、胎核顕現
戦場の中央で、
ヴェルツの体が脈動を始める。
無数の胎渇獣を吸収し、
膨れ上がる血肉の塊――
人型を捨て、胎核の原型へと変貌していく。
「見よッ!!
これが――新たなる胎核の胎動だァァァッ!!」
血の大海がコロニーを覆い尽くす。
ユグドラは血飛沫の中で血鎖刀を構え、
口元を拭った。
「……じゃあ、もう一度祓うだけだ……
お前ごと、その血塊を全部ッ!!」
胎核化する血塊王
胎渇連邦の中心に咲く血肉の巨塊――
その奥でヴェルツの理性が崩壊しつつあった。
「アア……アアアア……
胎核……俺が……俺こそが……ッ!!」
数万の胎渇獣を取り込み、
自我を失いかけながらも胎核として再構築されていく。
その体表からは血の触手が噴出し、
街を覆い尽くす血海と化した。
生きとし生ける者は全て、
この血海に飲まれれば胎渇病へと堕ち、
王の胎動を支える栄養となる。
⚔️ ユグドラの血鎖刀、渦中へ
ユグドラは血海に腰まで浸かりながら、
血鎖刀を両手で握る。
「……来いよ、ヴェルツ。
全部、俺が祓い尽くす――
これが俺の血だッ!!」
胎塊の肉壁が呻き声を上げて迫る。
血管のような触手が幾重にも絡みつき、
ユグドラを引き裂こうとする。
「ウオオオオオォォォッッッ!!」
血鎖刀が一閃。
触手を斬り払い、血の奥に潜む胎核本体へ突進する。
血の中の胎残響
肉塊の奥、心臓のように鼓動する核から
かつての胎の声が滲む。
『……ユグドラ……
祓っても無駄……
胎は血の奥で生まれ続ける……』
ユグドラは笑った。
「だから何だ……!
俺の血が生きてる限り――
何度だって祓ってやるッ!!」
胎核本体への斬撃
ユグドラは血鎖刀を核へ突き立てる。
肉の塊が絶叫をあげ、
コロニー中が赤い津波と化す。
しかし――血核は逆にユグドラの血を喰らい始める!
「――がッ……!?」
胎核の意志が、祓装師の血を苗床に進化を試みる。
脳裏に、胎の残響が囁く。
『お前の血は清浄――
ゆえに、私を最も美しくする……』
祓装師の血、逆流
血鎖刀が軋み、ユグドラの血管が破裂する。
皮膚の下で血が逆流し、
ユグドラ自身が胎核に取り込まれかける――
「まだ……俺は……
祓えてねぇ……!!」
目の奥で、ユウの幻影が微かに笑う。
『――血に溺れるな。
お前は祓装師だ。血に抗え。』
ユグドラは絶叫した。
「――祓えッ!!
全部、俺の血で祓えェェェッッ!!!」
血塊王、浄化の胎裂
血鎖刀が最後の輝きを放つ。
胎核を貫いた瞬間――
血の海が白く弾け、胎残響が渦を巻いて消えていく。
血塊王の咆哮が宇宙に木霊し、
コロニーの虚空へ溶けていった――!!
胎祓装師の誓い
倒れ込むユグドラの頬を、血混じりの風が撫でる。
「……まだ、終わっちゃいねぇ。
胎が血に生きる限り……
俺の血も、生きて祓い続ける……!」
彼の背に、血鎖刀が静かに光を宿す。




