ヴォンドル邸
ヴォンドル家のパーティーが開かれようとしている。最初に到着したのはユリウスだ。案内された控えの部屋では、フリージアがソファに座り本を読んでいた。
ユリウスはフリージアが苦手だ。興味無さげにしていて鋭い事を言ったり、何を考えているかわからず、調子が狂う。ユリウスの気持ちを知っているのか、挨拶が済むとフリージアはまた読書に戻る。そういう勘のよさもユリウスは苦手としている。
手持ち無沙汰になったユリウスはフリージアに断りを入れ、テーブルの本を一冊開いてみる。異国の遺跡に関する本のようだ。フリージアの好みもよくわからない。
クリストフが案内された部屋に入ると、フリージアとユリウスがソファに座り本を読んでいた。挨拶が済むとフリージアはまた読書に戻る。ユリウスも、もう少し読み進めたいと言って、やはり読書に戻った。クリストフは初めて三人が顔を揃えた、社交界デビューの披露パーティーを思い出した。フリージアはあの頃から綺麗で堂々としていたし、ユリウスは冷静に対応していた。
手持ち無沙汰のクリストフはテーブルの本を一冊開いてみる。模様を集めた本のようだ。様々な模様にクリストフは目を奪われた。
ジェラルドが案内された部屋に入ると、フリージアとユリウスとクリストフがソファに座り本を読んでいた。ジェラルドは笑ってしまった。
「ははは、君たち仲がいいね」
エリアーヌに付き添う形でキャロラインも合流し、ようやく六人が集合した。
おしゃべり好きなジェラルドが話題を提供し、キャロラインが話を回した。ユリウスは失言しないよう言葉を選び、エリアーヌは目を瞬かせたり、笑ったりした。フリージアは口数少なく耳を傾け、時々横を向いて吹いた。クリストフは短く答えながらも、へぇと声を漏らしたりした。
ジェラルドは話を振りながら、それぞれの反応を見ていた。商売人の性である。
キャロラインは皆が会話を楽しめるよう、目を配り、注意を払っていた。
ユリウスはジェラルドの話術と、キャロラインの手腕と采配に感銘を受けていた。
エリアーヌは繰り広げられる会話が大人の世界に見えた。そして楽しいとも思った。
フリージアはジェラルドとキャロラインに任せていた。特にキャロラインがいれば心配ない。
クリストフは評判通りだと思った。ジェラルドはやり手で、キャロラインは賢女で、ユリウスは切れ者で、エリアーヌはとても愛くるしい。フリージアの笑いのツボはわからなかった。
やがて入場の時を知らされ、六人はそれぞれのパートナーと並んだ。