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フリージア

 エリアーヌには個人的な“大事なお付き合い”はまだない。母や姉達に付いて行けば事足りる。そして大概の大事なお付き合いには、多くの友人達も参加するので、仲の良い友人とのお茶会に出席する予定でいる。

 家族の中では一番のんびり過ごせるのだが、エリアーヌは勉強に勤しんでいる。ユリウスの課題に取り組む為だ。家庭教師をつけてもらい、一つ一つ解決してゆくのだが、正直、ユリウスに会うまでに終わりそうにもない。それでもユリウスに恥をかかせたくなくて必死だ。

 家庭教師が帰った後も復習を繰り返していると、使用人が呼びに来た。どうやら街へ出掛けていたフリージアが帰って来たようだ。

 フリージアは毎日のように出掛けている。お茶会だったり、夜会だったり、観劇だったり、街の散策だったり。自由奔放、気ままな様子は猫のようだと思う。

 居間に入るとすでに色とりどりのお菓子がテーブルに並んでいる。フリージアは街へ出掛けると、必ずお菓子を買ってきてくれる。そんなところもエリアーヌは大好きだ。


「近頃ずいぶん熱心ね」

 お茶でほっと一息ついたフリージアが話しかけてきた。

「それは…ユリウス様に恥をかかせたくないもの…」

 さすがにダメ出しされたとは恥ずかしくて言えない。エリアーヌは思わず言葉を濁す。

「恥?」

 突然フリージアの顔つきが険しくなる。

「私はエリアーヌを恥だと思わないわ」

 挑むように言われてエリアーヌは慌てて否定する。

「ち、違うの!私が勝手に思っているだけよ!」

「ああ、そうなの?まあ、勉強するのはいいことよね」

 そう言ったフリージアの表情はいつも通りに戻っている。私が貶されたと思ったのかしら?エリアーヌは思案しつつ、少し落ち着こうとお茶を口にする。

 フリージアは強い感情を突然見せる時がある。エリアーヌはそういうところも猫っぽいと思っている。

「そういえば姉様とユリウス様は同い年?」

「ええ、そうよ」

「話しているところ見たことないわ」

「接点なかったからね」

「今はあるけど見たことないわ」

「まあ、話題もないし」

 うん、とエリアーヌは納得した。フリージアはユリウスに全く関心がないようだ。同い年ならユリウスについて何か情報を得られるかと思い聞いてみたが、やはり期待外れだった。フリージアは好みがはっきりしているので、ある意味、想定内ともいえよう。

「役に立たなくて、ごめんなさいね」

 何かを察したのか、フリージアが申し訳なさそうに謝ってくる。エリアーヌも首と両手の平を横に振って謝った。

「姉様、気にしないで!私もクリストフ様のこと、何も知らないもの。役に立たないわ」

 するとフリージアは「私の方はいいのよ」と手で制した。そしていきなり「楽しかったわ」とそそくさと立ち去った。

 残されたエリアーヌはあれ?と違和感を覚える。

 友人達はみな、フリージアとクリストフをお似合いのカップルと言ってはしゃいでいた。エリアーヌもてっきり二人はうまくいっていると思っていたのだが…。そういえば、今まで二人の仲を聞いてみたことなかったわ、と思い至った。

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