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アンナの結婚

 キャロラインはアンナの披露パーティーに来ている。今日のアンナは輝いていて美しい。ドレスも豪華で華やかだが、お相手と顔を見合わせて微笑む横顔は本当に綺麗で、幸せに満ちているのがわかる。

 アンナの弟フレッドは緊張してはいるが、前回ほど白い顔ではない。同じ年頃の令嬢をエスコートする姿は頼もしくさえ見えた。エリアーヌと同じようにフレッドも成長しているようで、キャロラインは嬉しくなる。

 そして、やはりユリウスの姿もあった。ユリウスは年配の男性に囲まれているが、実に落ち着き払っており、大人びて見える。切れ者と評判だが、才走るところがなく物腰は柔軟だ。父が娘の婚約者にと選んだ理由がわかった気がする。

 ふと、何度も疑問に思った考えが、再び頭をもたげてくる。何故、自分の相手はジェラルドなのだろう。歳が近い、家柄も申し分ない、財力がある…と何度も自分を納得させてきた。しかし、婚約してもう一年が過ぎているというのに、ジェラルドとの間には具体的な進展がないままだ。

 キャロラインは、はあ、とため息をついて頭から追い払った。


 ユリウスが退出するからと挨拶にやって来た。キャロラインも潮時だと思い、ユリウスと一緒に退出した。招待を受けた身とはいえ、顔見知りも少なく、馴染みのない土地でのパーティーである。部屋まで送るというユリウスと二人っきりになってようやく、肩の力が抜けた。

「まあ、ずいぶんお早いのね」

 明日出発するというユリウスにキャロラインは驚いた。

「領地に戻る途中に立ち寄る形になりましたから。それに職場の人間がいては、彼も落ち着かないでしょう」

 ユリウスは少し自嘲気味に微笑む。

「キャロライン嬢はしばらくここに?」

「私も長居はしませんわ。新婚のお邪魔はしたくありませんもの」

 キャロラインも微笑んだ。ユリウスは口許に笑みを浮かべ、同意を示すように頷く。

「それにしても、ユリウス様はお忙しいのね」

「領地には兄がいますので、私の出番はないでしょう。ようやく手紙も書けそうです」

 誰へとは言わなかったが手紙の相手はエリアーヌだろう、とキャロラインは思った。エリアーヌはまだ結婚できる年齢ではない。二人には時間がある。それが少し羨ましいと思った。

「そうね。私も手紙を書こうかしら」


 馬車に揺られながらユリウスは、昨日のキャロラインの言葉を思い出していた。誰へとは言わなかったが手紙の相手はジェラルドだろう。そう言った時のキャロラインの顔は少し寂しそうだった。

 ジェラルドとまともに対面したのはヴォンドル家のパーティーであったが、ユリウスは抜け目のない男だと思った。あのヴォンドル侯爵が選んだだけある。ジェラルドは人を見る目があり、人を使い利益にする事ができる。領主の器である。そして大局を見逃さず、ものにする力がある。政でも上手くのし上がるだろう。確かに欲しいと思わせる人物だ。ただ、そのような力は必ずしも人を幸せにできるとは限らない。政の側に身を置くユリウスにはそう思えてしまうのだ。

 ユリウスはため息をついて、馬車の窓から外の景色をぼんやり眺めた。領地に着いたら少しのんびりしたいと思ってはいるが、自分の性格上、難しいだろう。ユリウスは瞼を閉じた。

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