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同年代

 家のパーティーから二日目。キャロラインはエリアーヌに誘われて、テラスでお茶を飲んでいる。日差しを受けた庭の草木がキラキラと輝き、頬を撫でる爽やかな風が心地良い。

 エリアーヌは沢山の話をしてくれた。落ち着いて会話ができたこと、少しずつだが理解ができたこと、ユリウスが気遣ってくれたことを。

「それでね、ユリウス様に、多分、褒められたと思うの」

 エリアーヌは恥ずかしそうに頬を隠し、嬉しそうに微笑む。

「まあ!よかったわね。エリアーヌは頑張っていたもの」

「お姉様のようにはいかないけど」

 エリアーヌは微笑んだが、キャロラインはゆっくり顔を横に振った。

「エリアーヌにはいいところが沢山あるわ。それを忘れないで欲しい」

 キャロラインの言葉にエリアーヌは真っ直ぐ見つめ返した。

「はい。お姉様」

 その様子にキャロラインは胸が熱くなった。

 婚約して直ぐに大人の世界に入れられてしまったが、エリアーヌは成長している。そしてユリウスが、エリアーヌを見守ってくれたことを嬉しく感じた。あまり態度に出さないが誠実な人なのだろう、とキャロラインは思った。


 廊下の角を曲がった所でクリストフに出くわした。ユリウスはクリストフが抱えている書類を見て、騎士団の演習会の報告書だろうと見当をつけた。直ぐに立ち去ろうとすると、クリストフに呼び止められる。ユリウスは仕方なく足を止めたが、クリストフは何か言いにくそうだ。

「フリージアのことで…何か知っているか?」

「何故俺に聞く?」

 ユリウスは思わずムッとしたが、フリージアが苦手で避けているとは言いたくない。

「…俺はあまり知らないからな…」

 意外な言葉にユリウスは少し驚いた。昔から周りにお似合いと言われ、相性も良いと思っていたからだ。

 そこへ白衣を着た男が通り掛かる。腕にはやはり書類を抱えていて、ユリウスは研究所の定期報告書だろうと見当をつけた。男はクリストフに気づき、一瞬驚いた顔をした。見逃さなかったユリウスが声を掛ける。

「クリストフ卿に何か?」

「あ、いえ、フリージア嬢と行き違ったのかと思いまして…こちらの勘違いです」

 男は通り過ぎようとしてクリストフに止められる。

「フリージアがどうかしましたか?」

「先程まで研究所に居られまして、」

「は?」

 ユリウスとクリストフの声が重なった。今度はユリウスが口を挟む。

「何故フリージア嬢が研究所に?」

「め、珍しい苗を手に入れたとのことで、我が師に質問に来られました。では急いでいますので」

 男は余計な事を言ったと思ったのか、足早に遠ざかって行く。

 少しの沈黙の後、クリストフが呟く。

「学者にも知り合いがいるのか……」

「……これから知ればいいのでは?」

「……そうか…」

 ユリウスはなんだか無性に居た堪れなくなった。

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