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皇太子妃

事業の引き継ぎを見ていたカタリナは王宮からの手紙を横目でみながらいつまで逃げ続ける事が出来ない事を悩んでいた。

「カタリナ、今日も皇太子様に聞かれたぞ」

ここ毎日言われている言葉だ。

父も毎日王妃と皇太子に聞かれているらしい。

カタリナは何と断ろうかと悩んでいる。相手は皇太子と王妃だ。最近では王様も時々探りを入れてくるようになっているようだ。

昨日は王妃様から手紙が届いた。

カタリナは王妃に手紙を書いた。

すると翌日、王妃から手紙が届いた。

カタリナは意を決してリディアナに手紙を書いた。

リディアナはすぐやって来た。

「カタリナ様、このお話はお受け出来ません」

「でも、リディアナ様しかいないのです。どうか、もう一度考え直してください」

「それでも私には無理です」

リディアナは無理だと言い続ける。

「リディアナ様もご存知のように私はマリベルの代わりに侯爵家を継がないといけないのです。皇太子妃にはなれません」

「ですが、ユリアナ様がいらっしゃるではありませんか?」

「ユリアナは財団を率いる事は出来ません。それに近いうちに男爵家に嫁ぐ事になりました」

「では・・・」

「そうです。侯爵家の後継者は私しかいないのです。明日、王宮に行って来ようと思っています。その時、リディアナ様を推薦します」

「そんな・・・」

リディアナはまだ、困惑している。

「何か困ったことがあれば力になります。ですから、このお話を受けていただけませんか?」

カタリナはもう一度頼む。

カタリナはすぐに王妃に返事を書いて王宮を尋ねると連絡をした。


「カタリナ様、お茶会の招待状が届いています」

イリーヌが招待状を持ってきた。

テーブルに山積みになった招待状をみてカタリナはため息が出た。

今度は何を聞きつけているのか、怖くなってくる。

カタリナは腕まくりをして、招待状に返事を書き始めた。

今回は全て断りの返事だ。面倒なので内容もみな、同じにした。

それが終わって、簡単に食事をしてから王宮に行く準備をした。

「カタリナ様、リディアナ様が来られました」

「わかったわ」

返事をして部屋を出る。

カタリナはリディアナと一緒に侯爵家の馬車に乗って王宮に行った。

周囲にカタリナがやろうとしている事を内緒にしておきたい。その為、リディアナには侯爵家に来る時は出来るだけ質素で伯爵家の馬車だと分からないように来てくれるように頼んだ。

王宮では王妃様のお茶会に呼ばれたように振る舞う。

王妃もまだ秘密にしておきたいとの思惑がある。

王妃は庭園に用意されたテーブルでカタリナ達を待っていた。

「王妃様、今日はお招きありがとうございます」

カタリナが挨拶をすると視線はリディアナに向けられた。

「座って」

王妃に言われてカタリナとリディアナはイスに座った。

「カタリナからの話は驚いたわ。それで皇太子とも話してカタリナの提案を受け入れる事にしたわ」

「王妃様、本当に良いのですか?」

リディアナは不安そうに聞く。

「貴方も侯爵家の事情は聞いていますよね。その点、貴方には優秀な弟君がいるじゃない」

王妃は家の跡継ぎを奪う訳にはいかないと言った。

「それに、カタリナから聞いていると思うけど、すぐ婚姻する訳にはいかないのよ」

王妃は一年後くらいに結婚して欲しいと言った。

本当はすぐにでもいいのだけど、ファルマ国との問題が解決していないのと、皇太子は巻き込まれたといえ、ファルマの王女との事で正式にファルマ王と王女から謝罪がない為今すぐの婚姻はあらぬ憶測を招くおそれがある為、時期を見合わせようと王様からの指示があったそうだ。

その為、王妃はその間、自分付の侍女として王宮にきて行儀見習いとして妃教育を受けて欲しいと言われている。

「どうかしら?」

王妃に聞かれてリディアナは覚悟を決めたようだ。

「わかりました」

はっきりと答える。

「ありがとう!」

王妃は安心した表情をした。

暫くは周囲をごまかす為、カタリナも王宮に行く事になった。

その後、細々とした打ち合わせをして王宮を後にした。

カタリナは侯爵家に着いてリディアナと別れた後、マリベルの部屋を訪ねてた。

「待っていたわ」

マリベルの顔を見てカタリナは少し落ち着く。

先程までリディアナは皇太子妃の話から公爵の

子息の話まで心配が多く気が抜けなかった。

「マリベル、やはりアデルは公爵家のフレデリック様と何かしようと画策していたようよ。今日、王妃様からも言われたわ」

「そう、どんな内容か聞いた?」

「現皇太子様を廃嫡してフレデリック様を皇太子にするらしいわ」

「アデルはその見返りが何か言っていたかしら?」

マリベルは何かメモを取りながら聞いてくる。

「お父様の話だと爵位の授与だと思う」

「少し考えるわ。わかったら呼ぶわね」

マリベルは急いでメモを書き始める。

カタリナはマリベルの部屋を出て自分の部屋に行った。

「カタリナ様、また来たのですが」

イリーヌが持ってきた手紙の山を見てため息が出た。

「今度はどんな内容かしら?」

「全て、お茶会の招待状です」

「貴方が返事を書いておいて」

カタリナは部屋を出る。

「お嬢様、何処に行かれますか?」

イリーヌが追いかけてくる。

「お父様の部屋に行ってくるわ」

カタリナは父親の部屋に向かった。

「お父様、今いいかしら?」

「カタリナ、王妃様に会ってきたらしいな」

「はい。そして、皇太子妃はリディアナになってもらうことを理解していただきました」

カタリナが言うと父親は安堵した。

「しかし、王妃様から公爵家の子息の事を聞きました」

「あー、あの話か」

父親は肩を落とした。

「アデルが今、何処にいるかご存知ですか?」

カタリナが聞くと侯爵の父は表情を変えた。

「それを聞いてどうするのだ?」

「この件が解決しなければ王様から皇太子の婚姻は認められないのです。それに我が家に謀叛の疑いも持たれる可能性もあります」

カタリナが言うと侯爵はため息を漏らした。

「既にその事を聞きつけた貴族がいて抗議を言ってくる者もいる」

「では、急がないといけませんね。ですからアデルの居場所を教えてください」

カタリナは急がないといけないと改めて思う。

「家門から追い出したが、これ以上好き勝手に動かれたら困るから、地下の牢獄に入れて騎士団に監視させている」

侯爵は鍵を渡してくる。

「解決できるのか?」

侯爵は心配そうに聞いてくる。

「まだ、分かりませんがマリベルも考えてくれるのでやってみます」

カタリナは侯爵から鍵を受け取り地下の牢獄に行く。

牢獄の前には騎士が二人立っていた。

カタリナは侯爵からもらった許可証を見せると驚きながらアデルが入っている牢獄の前まで案内してくれた。

ガシャン!

アデルはカタリナを見て鉄格子を掴んで叫ぶ。

「俺をこんな所に入れて良いと思っているのか!」

カタリナは一瞬驚くがアデルの足元には拘束具がつけられているのを見て気持ちを切り替えた。

「貴方がしでかした事で侯爵家は今、謀反の疑いをかけられているわ。この責任をどうするつもり?」

「俺が新しい侯爵の爵位を受けるから大丈夫だ」

「それはどう言う意味?」

カタリナが聞くとおかしそうに言ってくる。

「そのままの意味だ。お前たちの侯爵家は爵位剥奪だな。その後、俺が侯爵の爵位を賜るから安心しろ、商団も全て俺が引き継いでやるから」

「フレデリック様からそう約束していただいたのね」

「もう、そこまでわかっているのか? だったら話は早いな。諦めろよ。カタリナ、おまえもマリベルもいつまでも威張っていられると思うなよ」

アデルは自信の満ちた表情を見せる。

「それはどう意味?」

カタリナは不気味な表情のアデルに疑問を感じた。

「後、数日だ。そしたら、俺が新侯爵だ」

カタリナは騎士達にアデルの尋問を頼み地下からマリベルの部屋に行く。

「マリベル、大変よ!」

「カタリナ、どうしたの?」

マリベルはベッドで起きていた。顔色も良く安心する。

「アデルとフレデリック様が我が家を追い落とそうとしているわ。アデルはフレデリック様から侯爵の爵位をもらうと約束されているようよ」

「それを証明出来る?」

マリベルから聞かれてカタリナは答える。

「大丈夫、水晶を持って行ったわ」

カタリナは懐から小さな水晶を出した。

マリベルに言われていた。もし、アデルと話す事があれば記録を残しておくようにと。

「ねぇ、カタリナ。爵位は王の権限よ。誰も代わりになれないの」

マリベルに言われて気付く。

「フレデリック様のお父様はルーファス公爵で王弟よ。中途半端な証拠では追いつめることは出来ないわ」

マリベルは相手が悪いと言う。

「でも、王の権限を悪用しようとしたからフレデリック様も謀反になるんじゃないの?」

「ルーファス公爵は王様が王位につく時、熾烈な闘いをしたの。それこそ王様を廃嫡するくらいのことをしていたらしいわ。それにルーファス公爵の母君は代々王妃の家門でかなり力があるわ。下手をすると我が家が潰されるわよ」

マリベルは顎を手にあてて考え出す。

カタリナは王妃がどうしていままで動かなかったのかようやくわかった。

こんかいは相手が悪い。

カタリナはどうすれば侯爵家に被害が出ないように出来るか考えた。



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