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新しい人生

カタリナ様、こちらのドレスはいかがですか?」

「それで良いわ」

「お茶会の招待状が届いていますが、どうされますか?」

側にいる侍女のイリーヌがテーブルに山積みになっている手紙を見る。

この国、グリーンファルの侯爵令嬢となって数ヶ月が過ぎた。情報ギルドのおかげで商団運営も順調に進んでいる。

「重要な物だけ返事をするから選んでおいて」

「かしこまりました」

「カタリナ様、侯爵様が午後のお茶を一緒にと言われていますがどうされますか?」

「お父様が?」

また、何か問題を抱えているのだろうか?カタリナは仕方なく答える。

「わかりましたと伝えて」

カタリナは身支度を整えてテーブルに乗っているお茶会の招待状に手を伸ばした。

社交界の花と言われているカタリナはお茶会が苦手だ。優雅にお茶を飲みながら腹の探り合いをする。カタリナが持っている商団が次はどんな商売を初めるのか興味津々で探ってくる。夜会では貴族の子息たちが婚姻相手になりたがり近付いてくるのをかわしながら会話をしなければいけない。お父様とマリベルから託された商団の運営だけで一杯なのに他の事にかまっていられない。

「カタリナ様、ユリアナ様が来られていますが」

「入ってもらって」

ユリアナは侯爵の実子でマリベルとカタリナの妹になる。本来なら侯爵が保有している商団の運営を任されるはずだったが病弱のマリベルの代わりをカタリナが勤めている為ユリアナは跡を継ぐ事はない。

「お姉様、今度のパーティに青色のドレスを着られるそうですが私も青色のドレスを着ても良いかしら?」

王宮のパーティは高位貴族とその後継者だけが招待されているものだ、後継者でないユリアナは招待されていないのにどこからその情報を入手したのか気になった。

「でも貴方は招待されていないでしょう?」

カタリナが伝えると涙目になるユリアナ。

カタリナの代わりに出ようとでも考えていたのか魂胆が見え見えでイラつく。まるでカタリナが王宮のパーティに連れて行かないようにしているように取り繕う。いつもそうだ。裏で巧妙に策を講じて悲劇のヒロインを演じるのだ。それに騙されてユリアナを助けようとカタリナを排除しようとする輩も今まで何人もいた。その都度、カタリナはその者達に制裁を仕掛けきた。その為、周囲の侍女たちもそれがわかっているので、ユリアナは侍女たちに連れられて部屋を出て行く。ユリアナの部屋付の侍女達の間ではカタリナが悪者になっているのだろう。近いうちになんとかしないといけないと思った。

カタリナがテーブルの招待状に手を伸ばして1通を取る。

イリーヌがすかさずお茶を出してきた。

カタリナはお茶を飲んで心を落ち着かせる。

「ユリアナに王宮のパーティの事を話した人物を調べてくれる?」

「かしこまりました」

イリーヌが部屋を出て行く。

「また、何か企んでいるようだな」

入れ違いで部屋に入って来たのは従兄弟のアデルだ。


「何も企んでいないわ。そういうアデルは呼んでもいないのにどうしたのよ」

「王宮のパーティに出るそうだな」

アデルがいやらしい笑みを浮かべながら言う。

「侯爵家の後継者ですから当然でしょう」

カタリナはアデルの意図を組んでわざと後継者を強調して言ってみた。

「強気でいられるのも今のうちだ。近いうちに俺がその地位を手にするからな」

高笑いでアデルが部屋から出て行く。

「カタリナ様、大丈夫ですか?」

イリーヌが心配そうに聞いてくる。

「大丈夫よ。それより、マリベルは元気かしら?」

「最近は体調も落ち着いているようで商団からの報告書に目を通しているようです」

「そう、マリベルに会いに行くわ」

マリベルは侯爵の実子で長患いで外に出ることはあまりない。医者の話ではこの国の医学では治せない病だと言われている。

カタリナは侍女を連れてマリベルの部屋に行く。

マリベルはベッドでクッションを背中に当てて起きていて、情報ギルドからの報告書を見ていた。

今宮中で話題になっているのは隣国、ファルマで流行の兆しがでている風土病がこの国にもくるかもしれないと不安が出ている。その報告書が情報ギルドから届いていた。

「マリベル、元気?」

「カタリナ! 商団とギルドからの報告書を見ていたけど順調そうね」

マリベルは嬉しそうに言う。

私が管理している商団で取引した履歴を調べて大量に薬草を仕入てきたアデルがこの風土病に効くと疑っていないようだ。

以前、アデルに、商団の情報を流していた従業員を使ってアデルに嘘の情報を流していたのだ。

確かにそう仕向けたのはマリベルとカタリナだがこうも簡単に騙せるとは思っていなかった。

アデルがいつその事に気づくのか楽しくなってくる。

「ユリアナが王宮のパーティーに行こうとしているみたい」

「カタリナ、ユリアナの事はほおっておけば良いわ。そのうち何とかするから」

マリベルが呑気に言う。カタリナは何をするのかと気になったが教えてもらえなかった。

その後、マリベルと今後の打ち合わせをしてから部屋に戻った。

マリベルの予想だとファルマの王女が問題を起こすらしい。その対策を今から準備しておかないといけない。カタリナは手紙を一通書いた。マリベルからは詳しくは教えられていないが、ファルマの王女は国を巻き込んでの問題を起こすらしい。

カタリナに絶対止めるか我が国に被害が及ばないようにして欲しいと言われた。

カタリナは自分だけでは止める事は出来ないと言うと協力者が必要ねと言っていた。わその為、伯爵家のリディアナに協力を頼んだ。

午後のお茶の時間になる前に部屋を出てお父様の部屋に行こうとしたらお父様から部屋に訪ねてきた。

「お父様、どうされましたか?」

「急を要する事があってな」

「部屋にお入り下さい」

父親の異変を感じて告げる。

イリーヌが二人分のお茶を用意して下がったのを確認して聞いた。

「何があったのですか?」

「隣国の風土病が我が国に入ってきたと報告があった」

予想より早くに入ってきたのか、それなら準備して来た計画を早めるだけだ。カタリナは父親に伝える。

「それでしたら、風土病に効く薬草が我が商団で保有していますのでそれをお使いください」

「そんな薬草があるのか?」

父が驚いて聞いた。

「隣国で風土病が流行する前に確かめていますので効果はあるはずです」

「本当か!それならわが国は安心だな」

聞くところによると隣国では風土病が大流行して死者が大勢出ているようだ。

その風土病が我が国に入ってきたらどれだけの被害があるか分からない。私は幾つかの薬草の使い方を書いて父親に渡した。

数日後、隣国ファルマとの国境付近で風土病が流行し始めた。カタリナから伝えられていた父の侯爵は王命で風土病の対策の人道指揮を取ることになった。


二日後、ユリアナ付の侍女の一人がユリアナに王宮のパーティの事を話したことがわかった。

カタリナはマリベルの部屋を尋ねて確認する。

「ユリアナに王宮のパーティの事を話した人物がわかったけど、その侍女を辞めさせていい?」

カタリナが聞くとマリベルは執事も辞めさせてねと言ってきた。

カタリナは部屋に戻る途中、執事室に行き、執事の解雇を告げた。そして、侍女長を部屋に呼び出しユリアナの侍女の解雇を指示した。

カタリナはどうして執事も解雇しなければいけなかったのかわからなかったが侍女長があの侍女は執事の親戚で縁故採用だと言っていて納得した。






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