カタリナの決意
カタリナはマリベルの部屋を尋ねた。
「マリベル、今いい?」
「どうぞ」
マリベルはベッドで起きていた。
顔色は良さそうだ。声もしっかり出ている。
それを確認してからカタリナは話し始めた。
「マリベル、あの資料というか小説読んだわ。それで思ったんだけど、小説ではカタリナは公爵家の長女になっていたけど、どうして私につけたの?」
カタリナが聞くとマリベルは少し考えて話し始めた。
「カタリナがくる前に気付いたの。私が書いた小説と違うことを。それでカタリナがそばにいてその活躍をみられたら楽しいだろうなと思ってカタリナとつけたの」
「そうなんだ」
カタリナは意外な答えに戸惑う。
もっと違う答えが返ってくると思っていたが違っていた。
その為、マリベルに聞こうと思っていた事が聞きづらくなった。
カタリナは別の質問をした。
「マリベルが以前言っていた別の誰かがマリベルの小説に手を加えているって言っていた事で、誰が手を加えているの?」
「多分、妹よ」
「妹?」
カタリナはまたしても疑問に思う。
「あの子は私を恨んでいるから」
マリベルの言葉にカタリナは驚く。
「恨むってどう言う事?」
「自分が選んだ人生なのに、自分に降りかかる災難は私のせいだと思っているのよ」
「おかしいわよ。マリベルには関係ないじゃない!」
カタリナが怒るとマリベルはあの子はそんな事通じる人ではないと言い出す。
納得出来ないカタリナだが、今起こっている事はマリベルに怨みを持つ者が書いたと言われれば納得出来た。
マリベルの妹は小説の中でマリベルを亡き者にしようとしているのだ。カタリナは決してそんな事させないと心に誓う。
翌日、商団から新しい薬草が届いた。
カタリナは中を確認すると今回は正しい薬草が届けられた。
カタリナは早速マリベルの薬を作り始めた。
薬が完成間近になって商団から緊急の連絡が入った。
内容はペインが狙われたと言うものだった。
カタリナはすぐに商団に連絡した。
ペインは商団のギルドが匿っていると連絡が入って安心した。ギルドはペインを狙った者を捕まえていたのでカタリナはペインを狙った人物の背後に誰がいるのか調べるように伝えた。
騎士団からの連絡でカタリナは驚く。
アデルを狙っていたのはルーファス公爵だった。
アデルとフレデリックの繋がりがわかると都合が悪いと判断されたのだろう。
カタリナはアデルがフレデリック様か、ルーファス公爵の弱点を知っているのではないかと考えた。
そのため、騎士団にアデルから聞き出すよう伝えた。
カタリナは出来た薬を持ってマリベルの部屋に行く。
「マリベル、元気?」
「カタリナ」
侍女に手伝ってもらいながら起き出すマリベルは辛そうだった。
「マリベル!大丈夫?」
顔色が良くない。額に手を当てると熱があった。
「誰か!」
カタリナが声をあげると急いできた侍女に必要な物を持って来てもらう。
「マリベル、私が作った薬なんだけど、飲んでみる?」
カタリナが聞くとマリベルは小さく頷いた。
侍女が持ってきたお水でカタリナが作った薬を飲んで休んでもらう。
カタリナは心配でマリベルのそばを離れられなかった。
マリベルの熱はかなりあったが、薬の中に解熱剤も入れていたのでそれが効いてくるのをまった。
カタリナはマリベルの側で騎士団と商団からの連絡を待った。
次々と来る連絡からルーファス公爵が関わっている事がわかってきた。
カタリナは騎士団と商団にルーファス公爵がやった事の証拠を集めるよう指示を出した。
深夜になってマリベルの熱が下がってきた。
カタリナはマリベルの脈を取った。安定してきたのがわかり安心する。
翌朝、騎士団からの報告にカタリナは次の手を考えた。
その後、商団からの連絡でルーファス公爵とペインの繋がりが分かった。
ペインに王宮内の情報を伝えたのはルーファス公爵家の執事だった。
そして、ペインを狙ったのは公爵家の騎士だ。その騎士はギルドが捕まえている。
アデルはフレデリックがファルマの王女と密かに会っていたのを知っていた。
それは公爵にとっても都合が悪かった。その為、アデルは狙われたのだ。
ルドルフ公爵が先日の会議で糾弾した事が、証明されしまっては都合が悪い。皇太子を廃嫡しようとしていたがそれが出来なくなってきたので焦っていたのだ。
カタリナはルーファス公爵が次の手を何にするのか考えた。
ルーファス公爵はフレデリックが次期皇太子になる事を望んでいる。その為、なんとしても皇太子を廃嫡にしようと画策するだろう。
その前にルーファス公爵とフレデリックの罪を証明しないといけない。
マリベルの小説では皇太子はいずれ帝位につく事になっている。
それが変わる何かが起きるような気がしてきた。
カタリナは慎重に王妃に手紙を書いた。
王妃からすぐ返事が来た。
カタリナはその手紙を持って王宮に行った。
「王妃様、突然、申し訳ございません」
「いいのよ」
カタリナは王妃の自室に招かれた。
二人でテーブルを挟み座ると侍女がお茶を出してくれる。カタリナと王妃はその間、無言で侍女が下がるのを待った。
侍女が下がったのを見てカタリナは話す。
「王妃様、ルーファス公爵がファルマ王と繋がっていて、フレデリック様はソルマ王女と密会をしていたことが分かりました」
「それは本当なの?」
王妃は半分嬉しく、半分疑いの表情で聞いてきた。
「はい。フレデリック様とソルマ王女の密会は元、我が侯爵家の親族が証言出来ます。ルーファス公爵とファルマ王の繋がりは手紙があります」
「それなら、王様に動いてもらいましょう」
王妃は侍女に伝えるとすぐに王の侍従が、やって来た。
「カタリナ、行きますよ」
王妃に促され王妃と一緒に侍従について行く。
王様の執務室に入ると周りには先程案内してくれた侍従だけだった。
王妃が王様に説明をしている間、カタリナは王妃の側で待っていた。
王様が先程の侍従を呼び寄せ話をする。
その直後、騎士団長が呼ばれた。
王様が騎士団長に指示を出している。
はっきりとした言葉は聞こえなかったが、ルーファス公爵を必ず連れて来るようにと聞こえた。
騎士団長が部屋を出た後、王妃様とカタリナは帰された。
カタリナは王妃の部屋で待った。
夜がふけて、王妃の進めで王宮に泊まる事になった。
用意された部屋でカタリナはどうなるか気になって眠れなかった。
早朝、部屋の外が慌しくなって部屋を出る。
「カタリナ。起きていたの?」
王妃がやってきた。
「ルーファス公爵の謀叛の証拠が見つかったわ」
騎士団が昨夜、ルーファス公爵邸に行き証拠となるファルマ王の手紙を押収した。
騎士団はそのままフレデリックとソルマ王女の密会の証拠も見つけてフレデリックとルーファス公爵が連行されて来た。
その為、王宮内では騒然となっていた。
王様はその報告を受け、直ちにファルマに兵を送った。
王様はファルマ王の事が許す事が出来ずにファルマ王とその子供達全ての処刑を直ちに断行した。
更にファルマ王と手を組んで皇太子を追い詰めた罪でルーファス公爵とフレデリックの処刑もその日の内に行われた。
貴族達は王の怒りを見て静まり返っていた。
「カタリナ、ありがとう。これで皇太子の立場が守れるわ」
王妃に感謝される。
カタリナは別の意味で安堵する。
これで侯爵家を排除しようとしていた動きは止めることができたのだ。
侯爵邸に帰ってマリベルの部屋に行く。
マリベルはベッドで寝ていた。
「マリベル、大丈夫?」
カタリナが声をかけると目を開けた。
ゆっくり起き出したマリベルの顔色は良かった。
「声をかけずに出かけてごめんね。全て終わったわ」
「うん。おつかれさま、カタリナ」
マリベルの安心した顔を見てカタリナは力が抜けた。
侯爵はアデルのしたことを知ってアデルを今度こそ処罰することにした。




